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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/11/04 00:00  | 今週の動き |  コメント(2)

今週の動き(11/3~9)


ラグビー・ワールドカップの決勝、イングランドと南アという王者同士の一戦でしたが、日本を破ったスプリングボクスが勝利。私も柄にもなくパブリック・ビューイングで楽しみました。

こちらはイングランド代表からのお礼のメッセージ。試合後にエディー・ジョーンズHCのインタビューがありましたが、前日本代表HC、日本人とのクオーターという縁もありましたね。色々な意味でラグビーが身近なスポーツに感じられた1か月半でした。

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先週の動き
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10/27(日)
・トランプ大統領が「イスラム国」の最高指導者バグダディの殺害に米軍が成功したと発表
・シリア北部のクルド人民兵部隊「YPG」を中心とする「シリア民主軍(SDF)」がトルコとロシアの合意に沿ってトルコとの国境から30キロ以上シリア側に離れた地点まで撤退すると発表(シリアのアサド政権は歓迎の意を表明)
・アルゼンチン大統領選挙(アルベルト・フェルナンデス元首相が勝利)
・ウルグアイ大統領選挙(与党のダニエル・マルティネスが1位、最大野党のルイス・ラカジェ・ポウが2位、11月24日に決選投票)
・ドイツ・チューリンゲン州議会選挙(左派党が第1党、ドイツのための選択肢(AfD)が第2党)
・スペインのバルセロナでカタルーニャ州の独立に反対する大規模デモ
・香港で政府に対する抗議デモ

10/28(月)
・トランプ大統領が米軍は「イスラム国」の最高指導者バグダディの後継者と目されていた人物を殺害したと発表
・中国共産党中央委員会第4回全体会合(4中全会)(北京、~31日)
・EUがBREXITの延期期間を20年1月末までに決定
・英下院がジョンソン首相の12月12日の総選挙実施提案の動議を否決

10/29(火)
・米下院がアルメニア人大虐殺決議案とトルコ制裁法案を可決
・米下院の情報・外交・監視の3委員会でNSCのウクライナ政策担当官のビンドマン陸軍中佐がウクライナ疑惑に関する非公開の証言(トランプ大統領がウクライナにバイデン前副大統領の調査を促すため軍事支援凍結を利用したとの見解を示したとの報道)
・FOMC(~30日)
・英下院がジョンソン首相の12月12日の総選挙実施提案の法案を可決
・香港区議会議員選挙(11月24日予定)の選挙管理委員会が「雨傘運動」の学生リーダーだった黄之鋒(ジョシュア・ウォン)の立候補を認めない決定
・レバノンのハリーリ首相が辞意を表明
・サウジ経済投資フォーラム「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ」(砂漠のダボス会議)(リヤド、~31日)

10/30(水)
・チリのピニェラ大統領が11月のAPEC首脳会議と12月のCOP25のサンティアゴでの開催中止を表明(米国は当初の予定通り11月中旬での第1段階の合意の署名を目指すとの声明を発表)
・米下院の情報・外交・監視の3委員会で国務省のウクライナ専門家(キャサリン・クロフトとクリストファー・アンダーソン)がウクライナ疑惑に関する非公開の証言
・FOMC最終日(FF金利の誘導目標を0.25ポイント引き下げ(1.5~1.75%)、7月・9月に続く3会合連続の利下げ)
・ツイッターが政治広告を11月22日から禁止すると発表

10/31(木)
・トランプ大統領がビーガン北朝鮮担当特別代表を国務副長官に指名するとホワイトハウスが発表
・トランプ大統領が定住地をNYのトランプタワーから自身の別荘「マール・ア・ラーゴ」があるフロリダ州パームビーチに移すと表明
・米下院がトランプ大統領の弾劾調査の手続きに関する決議案を可決
・米下院の情報・外交・監視の3委員会でNSCのロシア・ヨーロッパ担当官のティム・モリソンがウクライナ疑惑に関する非公開の証言
・「イスラム国」が指導者のバグダディの死亡を認め、アブイブラヒム・ハシミを指導者に指名したと発表
・ユンケル欧州理事会議長とドラギECB総裁の任期満了
・インドのジャンムー・カシミール州が「ジャンムー・カシミール」と「ラダック」の2つの連邦直轄地に再編
・北朝鮮が平安南道・順川付近から日本海に向け飛翔体を2発発射(国防科学院が「超大型多連装ロケット砲」の連射実験を実施したと国営の朝鮮中央通信が報道)
・香港で政府に対する抗議デモ(ハロウィンの仮装で抗議)
・ASEAN首脳会議・関連会議(バンコク、~11/4)

11/1(金)
・米中閣僚級電話協議
・対米外国投資委員会(CFIUS)が「TikTok」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の米国での過去の買収について調査を始めたとの報道
・米民主党のベト・オルーク前下院議員が20年大統領選挙から撤退
・WTOが中国の米国に対する年36億ドルの報復関税を承認
・国連気候変動枠組条約事務局がCOP25をマドリードで開催すると発表
・香港で政府に対する抗議デモ
・自民党の二階幹事長が日中与党交流協議会出席のため訪中(~5日)

11/2(土)
・香港で政府に対する抗議デモ

●BREXIT延期と英国総選挙の決定

EUがBREXITの延期期間を20年1月末に決定しました。そして英国の下院ではボリス・ジョンソン首相の12月12日の総選挙実施提案の動議が否決されました。ここまでは以下の記事で述べたとおりの展開でした。

「ボリスの総選挙提案とBREXITの延期可能性」(10/28)

ところがその翌日、ボリスの12月12日の総選挙実施提案の法案が438対20で可決されました。ただ、当初のボリスの構想とは異なり、総選挙はBREXIT実施前に行われることになりました。このため、総選挙はBREXITの是非を正面から問うものになります。

急転直下の展開ですが、この結果も実は十分に予想されていました。今回の決定の意義と今後の展望について今週解説します。

●米軍による「イスラム国」のバグダディ殺害

トランプ大統領が「イスラム国」の最高指導者バグダディの殺害に成功したと発表しました。発表の半日ほど前から「何かすごいことが起こる!」とツイート。よほど嬉しかったのでしょう。実際の発表では殺害の様子を細かく説明し、「バグダディは泣き叫んでいた」「犬のように死んだ」と劇的な表現を多用しました。

今回の殺害の背景と今後に与える影響について解説します(※メルマガに限定)。

●APECの開催中止とペンスの中国政策演説の補足

チリのピニェラ大統領が11月16~17日にサンティアゴで開催を予定していたAPEC首脳会議の中止を突然に表明しました。

そうなるとトランプ大統領と習近平国家主席の会談はどうなるのか・・と誰もが思いましたが、米国は当初の予定通り11月中旬での第1段階の合意の署名を目指すとの声明を発表。通商協議の難所は交渉のサブスタンスにあって、トップ同士が会うこと自体は難しいことではないので、APEC中止が通商協議の妨げになることは想定されません。

また、10月24日のペンス副大統領の中国政策演説については以下の記事でコメントしましたが、読者の方から、米中通商協議との関係についてもっと詳しく説明して欲しいとのリクエストをいただきました。この点もあわせて解説します(※メルマガに限定)。

「ペンス副大統領の中国政策演説」(10/28)

●ウクライナゲートとトランプ弾劾の可能性

ウクライナ疑惑については、先週も下院でNSCと国務省のスタッフが非公開の証言を行いました。特にNSCでウクライナ政策を担当するビンドマン陸軍中佐は、現役のホワイトハウスの高官、それもゼレンスキー大統領との電話会談を直接聞いた人物ということで大きなインパクトがありました。

そして、米下院がトランプ大統領の弾劾調査の手続きに関する決議案を232対196で可決しました。先週の動きの意義と今後の展望について解説します(※メルマガに限定)。

●4中全会

4中全会は予定どおり10月に開催されました。政治局常務委員を増やして陳敏爾重慶市書記と胡春華副首相を昇格させるといった憶測もありましたが、そうした大きな動きはなく、静かに終わりました。

会議後に公表したコミュニケには香港への言及が目立ち、法制度の整備など高度な自治に介入する姿勢が明確に示されました。とりあえずのコメントを述べます(※メルマガに限定)。

●アルゼンチン大統領選挙

事前予想のとおり、中道左派(ペロン党急進派)のアルベルト・フェルナンデス元首相が決選投票を待たずに勝利を決めました。ポイントは以下の記事で述べたとおりです。

「アルゼンチン大統領選挙」(10/28)

フェルナンデスは12月10日に大統領に就任しますが、まずはIMFの追加融資をスムーズに引き出せるかが課題になります。

また、副大統領に就任するクリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(CFK)前大統領が汚職容疑で起訴されていますが、その免責を実現すべく法改正を検討しているといわれています。フェルナンデスはCFKの傀儡とも言われており、CFKの免責をめぐる動きが一つの試金石になります。

通貨危機、財政危機、インフレ、失業率の上昇に悩むアルゼンチンですが、左派政権の成立により改革も逆行する見通しです。厳しい状況が続きます。

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今週の動き
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11/3(日)
・中・ASEAN首脳会議(バンコク)
・香港で政府に対する抗議デモ
・サウジの国営石油会社サウジアラムコが株式の一部を国内の証券取引所タダウルで公開すると発表

11/4(月)
・米国によるパリ協定離脱の国連への通告が可能になる
・東アジアサミット(バンコク)
・米・ASEAN首脳会議(同)
・RCEP首脳会合(同)
・ASEAN+3首脳会議(同)
・日・ASEAN首脳会議(同)
・マクロン大統領の訪中(〜6日)

11/5(火)
・ミシシッピ州、ケンタッキー州、ルイジアナ州知事選、サンフランシスコ市長選等
・中国国際輸入博覧会(上海、~6日)

11/6(水)
・英下院が解散(12月12日に総選挙)

11/8(金)
・EU財務相理事会(ブリュッセル)

11/9(土)
・ベルリンの壁崩壊から30年

●ASEAN首脳会議・RCEP首脳会合

米国からはトランプ大統領でもペンス副大統領でもなく、ロス商務長官とオブライエン大統領補佐官が出席。だいぶ格下げされて、寂しさはありますが、致し方なしですね。

RCEPは交渉開始から6年以上が経ちますが、「今年中の合意を目指す」と言いながら延期を繰り返す状況が続いています。今年は関税と電子商取引という困難な分野を除いてすでに合意に達しているということで、せめて「大枠合意」まで達成したいところです。

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あとがき
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ナショナルズがWS初制覇、アストロズとの激闘制す(10月31日付AFP)
NBAプレーヤー 八村塁(10月27日付NHK)

ワシントン・ナショナルズがワールドシリーズ初制覇。NBAでもワシントン・ウィザーズがホーム開幕戦で八村塁が23得点の大活躍。ワシントンDCがすっかりスポーツの町になっています。

八村選手は、たまたまNHKスペシャルの特集を見ましたが、スキルや人柄の魅力もさることながら、アイデンティティの話が面白かったですね。

あの風貌でも米国に来れば誰からも「日本人」と言われたとのこと。アフリカ系の容姿で、英語が完璧になって、チームメイトと一緒にいても、しぐさや笑顔は日本人のようでした。本人も自覚しているようです。やはりその人のアイデンティティを形作るのは環境なのでしょう。ますます応援したくなりました。私も早くDCに出張したいものです(笑)。

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2 comments on “今週の動き(11/3~9)
  1. KB より
    トランプVS大物ゲスト

    今週は、バグダディ殺害について、作戦実行までのプロセスやこのタイミングの意味について、大変興味深く伺いました。でも、今後の影響を考えると不安になります。
    一方で、ウクライナゲートに関する、共和党員の主張のシフトには笑いました。また、証言に登場するかもしれない大物ゲスト!!いつ頃放映されるのでしょうか?楽しみです!
    以前、ベネズエラ現代史でラテンアメリカの左傾化傾向についてお話を伺いましたが、アルゼンチンも再び左派政権成立では、ご指摘のように問題が先送りで、経済が停滞しそうで、こちらも気になります。

  2. china より
    世論調査と大統領

    トランプのバグダディ作戦における記者会見は何かと物議を醸していますが、オペレーションを実際に見て受けた衝撃と興奮を、飾らない自身の言葉で述べたのかなと、ツイッターのライブ配信を見ながら何となく思いました。しかしながら一国のリーダーなので、飾らなさ過ぎるのも問題だとは思いますけれど。

    ウクライナ疑惑における下院の弾劾決議案は、共和党の一糸乱れぬ結束ぶりを見たような気がします。また今後弾劾気運が高まれば高まるほど、「大統領を守る」という錦の御旗のもと、共和党がより結束を固める事になるのかなと思います。
    でも本当にこのあたりは両党共さばき方が難しいところなのではないかなと感じます。民主党は進まなければ身内から突き上げられるし、やり過ぎると世論を敵にしてしまう。共和党は守るにしても、とれる手段が限られている。お互い世論を見極めながらギリギリの攻防を繰り返しているようなイメージです。政治って大変ですね。

    世論調査と言えば最新のFox News Poll(10/27-30)の1対1に、ヒラリー・クリントンが登場していて面白かったです(一応、ヒラリー:43%・トランプ:41%でヒラリーに軍配。)。先日さらっと彼女の出馬観測が流れたので、話題に便乗したのでしょうか。
    あと面白かったのは、11/3ホワイトハウスの記者会見でトランプが記者から弾劾を望む数の方が多い事について問われた際、「あなたは間違った世論調査を読んでいる」と一刀両断していたこと。さすがトランプだなと思いました。都合の悪い事実は常にフェイクニュースで、己の口から紡ぎ出される言葉は常に真実なのですね、きっと。

    ペンスの中国演説はきちんと計算されていたのですね。なるほど。演説の中で「中国は別の米国大統領を望んでいる」と発言した所にはウケましたが、後に続く「これがトランプ大統領のリーダーシップが機能しているという究極の証拠だ」というのはある意味真実だなと思いました。色々と興味深い演説でした。

    香港の移住はやはりそうなのですね。投資ビザでの移住を検討している人が増えているとの報道は目にしていましたが、ほんとのところどうなのかな・・と思っていました。現状の治安悪化もそうですが、先々の事を考えても移住はやはり現実的な選択肢なのですね。

    ASEANと言えば、米国のアジア軽視に対してASEAN側が対抗措置として米国との首脳会議を首脳3人+外相7人の「格下げ」メンバー構成としたようですね。この流れは互い(米国、アジア)にとって好ましい事ではない気がするのですが、これも米国アジア外交のトレンドとして致し方のない事象なのでしょうか。

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