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2015/06/09 00:00  | 東南アジア |  コメント(0)

インドネシア・ジョコ政権の200日②


「インドネシア・ジョコ政権の200日①」の続きです。

前回の記事で述べたとおり、ジョコ大統領は、国政の経験がなく、国民の支持を自らの拠りどころとして就任しています。このため、国政の運営において様々な不安要因を抱えています。

●少数与党

まず、国会については、与党連合の議席保有率が44%にとどまっており、劣勢にあります。このため、国会運営に不安を感じさせましたが、政権発足から最初の100日においては、そこまで深刻な問題が顕在化することはありませんでした。また、続く100日においては、野党勢力との連携について様々な可能性が取り沙汰されるようになりました。

具体的には、最大野党のゴルカルは、内紛が勃発し、アブリザル・バクリアグン・ラクソノという2人の党首が別個に選出され、それぞれの派閥に分裂した状態にあるのですが、このうちアグンは、ユスフ・カラ副大統領とかねてより親しい関係にあることから、与党連合に加わる可能性があると言われています。一方、バクリは、ジョコに大統領選に敗れたプラボウォの副大統領候補だったため、与党連合とは遠い関係にあると思われていましたが、アグンの出方次第では、こちらも与党側(しかもカラよりもジョコ側)に加わる可能性があるとみられています。また、大統領選の敵対候補だったプラボウォは、現在グリンドラ党の党首を務めていますが、こちらも与党連合との協調の道を探っていると言われています。

以上の事情から、与党陣営の劣勢は、それほど深刻な障害にはなっていません。むしろ、問題は、次に述べるように、ジョコの身内との関係にあります。

●党内政治

ジョコの所属する闘争民主党においては、メガワティ総裁が最大の影響力をもっています。もともとメガワティは、自らが闘争民主党を代表して大統領選に出馬することを望んでいたのですが、ジョコの圧倒的な人気を見て、党としての勝利を優先して彼を大統領候補にしたという経緯があります。

なお、メガワティは、過去に出馬した大統領選においては、いずれもワヒド、ユドヨノに敗れており、一度も選挙に勝っていません。大統領に就任したのは、ワヒド大統領が弾劾によって辞任し、副大統領の地位にあっため、昇格したことによるものです。

このような経緯から、ジョコはメガワティの傀儡であるとの指摘は就任前からされていました。そのことが露呈したと言われるのが次期警察庁長官指名をめぐる混乱です。ジョコが次期警察庁長官に指名したブディ・グナワンに対してKPK(汚職撲滅委員会)が汚職容疑を認定したのですが、ジョコは指名を撤回せず、延期するという措置をとりました。

その背景には、ブディとメガワティの親しい関係があると言われています。このため、ジョコがメガワティの強い影響下にあり、また、汚職の撲滅に不安を感じさせる点がクローズアップされ、大統領の支持率を低下させる原因となりました。

最終的にジョコはブディの指名を撤回しますが、ブディは、自らの無罪を裁判所に訴えて汚職容疑認定を無効にすることに成功し、その上、警察副長官に就任してしまいます。さらに、警察は、KPK委員長ら主要幹部の汚職容疑を認定するというあからさまな報復を行い、KPK幹部は総入れ替えを余儀なくされるという事態に発展します。ひとまず両者の戦いは鎮静化したと言われますが、KPKはかつてあった勢いを失い、ジョコ政権も深い傷を負いました。

●KPKと警察

KPKと警察の汚職をめぐる戦いは、実は根が深いものです。KPKは、汚職の撲滅を任務とする独立機関として2003年に設置された組織です。インドネシアの「文化」とまで言われた汚職問題に対して、KPKは驚くほど大胆に切り込み、権力者を次々に摘発して、国民の人気者になりました。

しかし、KPKの攻撃対象となった警察・検察は反撃を開始します。まず2009年、KPK委員長が殺人の容疑で警察に逮捕され、有罪判決を受けました。その後、KPK副委員長も収賄の容疑で逮捕されますが、冤罪であったことが判明します。

2012年にはKPKが警察交通局長の汚職容疑を認定するも、警察が独自に捜査を開始し、捜査権限をめぐって両者が対立、最終的にはユドヨノ大統領が調停するという事態になりました。そして2015年、今回の事件が3回目の激突ということになります。

このような両者の長年にわたる確執は、巨大な警察に立ち向かう先鋭的なKPKというイメージからか、「ヤモリ」(KPK)と「ワニ」(国家警察)の戦いと言われています。

さらに、メガワティら闘争民主党の主流派は、ジョコの側近であるアンディ・ウィジャヤント内閣官房長官、ルフット・パンジャイタン大統領首席補佐官、リニ・スマルノ国営企業大臣を批判し、パフォーマンスの悪い閣僚の更迭を求めるなどの介入的発言を繰り返しています。このため、近いうちに内閣改造が行われることが予想されています。これが現在のインドネシア政局の大きな注目点となっています。

思ったより長くなってしまいました・・・続き(「外交」と「民主国家の発展」)は次回に回します。

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