2018/07/16 00:00 | 今週の動き | コメント(2)
今週の動き(7/16~22)
ワールドカップの決勝、いよいよこれからキックオフですね。
フランス対クロアチア・・大会前には予想できなかった組み合わせですが、これまでの両チームの試合を見ていると、どちらも優勝するにふさわしい実力と格調の高さを備えているようです。
あのベルギーを破ったこともあり、何となくフランスに分があるような気がしますが、クロアチアもこれまでの戦いぶりが素晴らしかったので、どちらが勝っても不思議はないですね。東欧の小国が初めて世界のトップに立つのも劇的です。
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先週の動き
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7/7(土)
・トランプ大統領が昨年1月の就任直後、世界各国の指導者に個人的な携帯電話の番号を教え、ホワイトハウスの高官さえ知らずに1対1の電話会談を続ける事態が生まれていたとワシントン・ポストが報道
・「16+1」(中国と中東欧16か国)首脳会議(ソフィア)
7/8(日)
・日米韓外相会談(東京)
・ポンペオ国務長官がベトナム、UAE、ベルギーを訪問(~12日)
・英国のデービスEU離脱担当相が辞任
・韓国の文在寅大統領がインド訪問(〜11日)
7/9(月)
・トランプ大統領がケネディ連邦最高裁判事の後任としてワシントンDC連邦控訴裁判所のブレット・カバノー判事を指名
・ポンペオ国務長官がアフガンを電撃訪問
・中独首脳会談(李克強首相)(ベルリン)
・トルコの大統領にエルドアンが就任
・英国のジョンソン外相が辞任
・英国のメイ首相がEU離脱担当相にドミニク・ラーブ住宅担当閣外相、外相にジェレミー・ハント厚生相を任命
・EU・ウクライナ首脳会談(ブリュッセル)
・安倍首相が7/11から予定していた欧州・中東訪問を中止
7/10(火)
・トランプ政権が中国の知的財産権侵害を理由に中国製品6031品目(2000億ドル相当額)に10%の関税を課すと発表
・ポンペオ国務長官が各国がイラン産原油の調達を継続した場合に科す経済制裁に関して適用除外を検討する考えを表明
・中国が民主活動家の劉暁波氏の妻である劉霞氏のドイツ渡航を認める
・西バルカンサミット(ロンドン)
7/11(水)
・NATO首脳会議(ブリュッセル、~12日)
・米国務省がロシアとドイツの間で建設が計画されている天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」へ投資する西側企業に対し制裁対象となる可能性があると警告
・米商務省がZTE制裁見直しで最終合意したと発表
・韓国の文在寅大統領がシンガポール訪問(〜13日)
・ミャンマー政府と少数民族武装勢力の和平会議(21世紀パンロン会議)(ネピドー、〜16日)
7/12(木)
・トランプ大統領が訪英
・ストルテンベルグNATO事務総長がNATO加盟国は防衛費のGDP比を2%とする目標の達成を確約したと表明
・ムニューシン財務長官が「中国が真剣に構造改革を進めるならいつでも話し合う用意がある」と発言
・英政府がBREXITの方針の詳細をまとめた「白書」を公表
7/13(金)
・米英首脳会談(ロンドン)
・トランプ大統領がエリザベス女王と面会(同)
・米商務省がZTEに科した米国企業との取引禁止の制裁を解除したと発表
・ポンペオ国務長官がメキシコ訪問、ロペスオブラドール次期大統領と会談
・モラー特別検察官が16年の大統領選に介入したとしてロシア軍当局者12人を起訴
・習近平国家主席が台湾の国民党の連戦元主席と会談(北京)
・パキスタンのシャリフ元首相が英国から帰国、身柄を拘束される(ラホール)
●米中の「貿易戦争」の激化?
トランプ大統領は、以下の記事で述べたとおり、6月18日に中国の報復措置への対抗措置として2000億ドル相当額の中国製品に追加関税を課す案を作成するようUSTRに指示していましたが、この案が先週発表されました。
・「トランプ政権の『貿易戦争』の拡大」(6/25)
先週の記事でお伝えしたとおり、トランプ政権は7月6日に340億ドル相当額の中国製品に対する追加関税を発動したばかりでした。
・「米中の『貿易戦争』の始まり」(7/9)
次は残りの160億ドル・・これは7月24日に公聴会を開催し、パブリックコメント募集の締切は7月末だから、発動は8月か9月頃、2000億ドルはおそらくその出方を見てからだろう・・と思っていたところで、一週間も経たないうちに今回の発表。予想を上回るスピードに驚かされました。
こちらもUSTRが公聴会の開催(8月20日~23日予定)とパブリックコメント募集(8月30日締切)を行い、最終品目リストを発表した後、発動される見通しです。
毎週毎週、よくこんなに新しい展開があるものだ・・と感心しますが(苦笑)、今週、現時点での見通しを解説します。
●ZTE制裁の解除決定
色々あったZTE問題ですが、どうやら完全に終息に向かったようです。
以下の記事で述べたように、議会では依然としてZTE制裁緩和に反対する動きがありますが、潮目が変わってきたようです。この点も今週、解説します。
●連邦最高裁判事の指名(カバノー判事)
以下の記事で述べていた候補のうち、ワシントンDC連邦控訴裁判所の判事であるブレット・カバノーが指名されました。
・「連邦最高裁判事の指名」(7/9)
カバノーは、現職の保守派の最高裁判事と比較すると、最も保守的なタイプであるクラレンス・トーマスに近く、ニール・ゴーサッチ、サミュエル・アリト、ジョン・ロバーツの3人と比べるとかなり保守の度合いが高いといわれています。これまでキャスチング・ボートを担っていたアンソニー・ケネディに代わって就任することになれば、意見が分かれるセンシティブな問題について保守的な判断を下すことが確実に期待できるので、共和党にとっては申し分ない指名といえます。
問題は上院の承認をとれるかですが、ここは結構微妙で、現在上院は共和党51、民主党49。ガン治療中の共和党議員ジョン・マケインを外すと共和党は50。共和党から造反議員が出るとアウトになります。
ここで最大の焦点になるのは、カバノーが人工妊娠中絶に関してどのような立場をとるかです。スーザン・コリンズ、リサ・マコウスキーといった女性議員は中絶反対派の候補を承認しないとみられます。これまでのところ、カバノーは中絶を容認した「ロー対ウェイド」の最高裁判決に対する意見を表明したことはありません。
一方、上記記事で述べたとおり、ジョン・マンチン(ウェストバージニア)、ハイディ・ハイトキャンプ(ノースダコタ)、ジョー・ドネリー(インディアナ)といったトランプが大統領選で勝利した保守的な州の議員の数人は、カバノーを支持しないと中間選挙で落選する危険がある厳しい立場に置かれています。この3議員はゴーサッチの就任に対して賛成の票を投じています。これらの議員の票を得られれば、コリンズとマコウスキーが造反しても承認を得られることになります。
ここで最高裁判事の任命に成功すれば、上記記事で述べたとおり、トランプにとっては大きな追い風になります。共和党指導部は中間選挙前の承認を何とか実現しようとするでしょう。トランプの強運には恐るべきものがあります。
●NATO首脳会議とトランプの初訪英
G7シャルルボア・サミットのときのような米欧の対立が顕在化するのでは・・と懸念されたNATO首脳会議ですが、共同宣言が採択され、集団的自衛権はNATOの「最重要の責務」と確認。
国防費の増額については、GDP比4%への引き上げを求めるトランプと2%の達成を目指すとした他の加盟国の立場の相違は埋まらず、「加盟国の分担のバランス改善」で合意するにとどまりました。それでも、メルケル首相やストルテンベルグNATO事務総長はトランプの強引な圧迫を表立って批判することは控え、「NATOの切迫感を高め、強化につながった」と評価しました。
G7サミットと比べると、とりあえず表面的な対立は抑えられ、その意味で会議は「成功」に終わったといえます。
しかし、首脳会議に先立ち、トランプはストルテンベルグ事務総長との会談で、ドイツがロシアからパイプライン「ノルドストリーム2」を通じて天然ガスを大量購入する計画を批判し、「ドイツはロシアの捕虜のようなもの」と発言。この欧州のロシアへのエネルギー依存はたしかに深刻な問題で、どこかのタイミングで取り上げたいと思っていたイシューですが、それにしてもトランプはドイツの痛いところを公然とついてきた格好です。
最低限の形だけはつけて、一応は成功としながら、同盟国に恫喝にも近いプレッシャーをかけるトランプ外交は、初訪英でも見られました。
トランプはメイ首相を褒め称え、米英関係は「特別の関係」と持ち上げながら、二国間FTAを重視する考えをしめしたものの、メイ政権が進める穏健なBREXIT路線を批判し、政権から離脱したボリス・ジョンソン前外相を賞賛する発言をしています。
トランプの厳しいプレッシャーによって欧州の国防費は増額しており、メイ首相もトランプに融和的な姿勢を示すなど、結果として米国が望む方向に欧州も動いている・・という評価も米国内では見られるようになっています。とはいえ、同盟国を無下に扱う非常識(革新的?)な外交手法には当然のことながら批判も強まっています。
米欧関係の亀裂は深まり、これまでの伝統的な国際関係の秩序は変わるかもしれません。その動きを強める大きなイベントとなり得るのが、「今週の動き」で述べる米ロ首脳会談です。
●エルドアン大統領の就任
エルドアン大統領が再任され、しかも実権大統領制がスタートしたことで、名実ともにエルドアンの権力集中が完成しました。
エルドアンは、03年の首相就任から15年にわたってトルコに君臨しています。大統領は2期続けることができるので、さらに10年という長期政権の可能性も十分にあります。
新たなるエルドアンの時代に入ったトルコについて、今週解説します。
●BREXITとメイ政権の混迷
穏健なBREXIT路線で閣内をまとめられたと思ったら、デービスEU離脱担当相とジョンソン外相が辞任。その後、BREXIT方針の詳細を説明した「白書」を公表しましたが、これがEUから見れば「いいとこ取り」も甚だしいという内容。
メイ政権の混迷は深まる一方で、今後の展望について、これまで以上に厳しい予測が飛び交うようになっています。この点を説明します(※メルマガに限定)。
●パキスタン元首相の有罪判決と身柄拘束
ナワーズ・シャリフ元首相に実刑判決が下され、英国からパキスタンに帰ってきた同元首相が拘束されました。
これ自体はある程度は予測できたことですが、パキスタンでは7月25日に下院選が予定されています。現在、シャリフ元首相がリーダーだった与党PML-Nとライバル政党のPTIの支持率は拮抗しており、今回の拘束と収監がPML-Nに打撃を与えれば、政権交代が起こる可能性があります。
選挙の結果を見た上で、パキスタン政治の現状と展望について解説します。
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今週の動き
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7/15(日)
・仏ロ首脳会談(モスクワ)
7/16(月)
・米ロ首脳会談(ヘルシンキ)
・EU・中国首脳会議(北京、〜17日)
・EU外相理事会(ブリュッセル)
7/17(火)
・パウエルFRB議長が上院銀行委員会で証言
・中間選挙の予備選(アラバマ決選)
・日EU・EPAの署名式(東京)
・日米原子力協定が30年の期限を過ぎ自動延長
7/18(水)
・パウエルFRB議長が下院金融サービス委員会で証言
7/20(金)
・EU総務理事会(ブリュッセル)
7/21(土)
・G20財務相・中銀総裁会議(ブエノスアイレス、〜22日)
●米ロ首脳会談
欧州とロシアの対立が深刻化する中で、NATO首脳会議の直後に行われる米ロ首脳会談。色々な意味で興味深い会談です。詳しくは結果を見てから解説する予定ですが、ロシアゲート捜査の進展とその影響を含め、現時点でのポイントを述べておきます(※メルマガに限定)。
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あとがき
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洪水被害のことなど、四方山話を書いていますが、メルマガのみ掲載します。
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2 comments on “今週の動き(7/16~22)”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
トランプ大統領と習主席・・
何方の勢いが強いか・?
続くか・?
最初からカオスを狙っている・・カオスこそ強い国が最も有利と看破している・・
トランプ・・
今度はエルドアンを抱き込みに入り・・エルドアンもその気・・NATOに手をかけている。プーチンはシリアから・・イランの孤立化に乗っても良いがと色目・・
メルケルはドイツ銀行の株をしっかり習近平に握られた。難民の流入に門戸を開いたメルケル・・弱り目に祟り目・・長くはない雰囲気がある。大きなスキャンダルが起きれば・・・
( ^ω^)
BREXITに絡んだメイ首相の行動・・、深堀されていて面白かったです!
現地でもかなりあきらめムードとも言われているようですが、今後どのような行動に出るのでしょうか。
そして、ロシアゲートを抱えたまま、今週の米ロ首脳会談はどうなるのか、こちらもワクワクしますね。米朝首脳会談のように、イメージとインパクトだけを残すのか、でも相手がプーチンだと、もう一味違った展開になりそうな、、、引き続き、”信頼に足るリークと分析”に基づく見解をお待ちしております!
そういえば、トランプがエリザベス女王と面会した際の振る舞いが、外交儀礼違反と批判を受けていて、「ゴルフ場をぶらぶら歩いてるわけじゃないんだから、スーツのボタンを留めてシャキっと歩け(怒)」とか「予行練習をさぼったからだ」とか。。
なかなか聞きなれない外交儀礼ですが、何か明確なルールがあるのですか?教えてJDさん!