2017/07/31 00:00 | 今週の動き | コメント(5)
今週の動き(7/31~8/6)
先週1週間は、米国での現地情報の整理、留守中のキャッチアップ、メルマガの準備等に追われました。おかげさまでしっかり体制を整えることができたので、今週からは全開で行きたいと思います。
(先週の動き)
7/24(月)
・中国共産党が孫政才・前重慶市党委員会書記の調査開始を発表
・クシュナー上級顧問が上院情報特別委員会で非公開で証言
7/25(火)
・米下院が対ロ制裁強化法案を可決
・米上院がオバマケア改廃法案の審議入りを可決
・トランプ大統領がセッションズ司法長官に失望と発言
・クシュナー上級顧問が下院情報特別委員会で非公開で証言
・FOMC(~26日)
7/26(水)
・トランプ大統領がトランスジェンダーの軍入隊禁止を発表
7/27(木)
・米政府と議会指導部が「法人税の国境調整」の導入を見送ることで合意
・米上院が対ロ制裁強化法案を可決
・スカラムーチ広報部長がプリーバス首席補佐官を批判していたことが明らかになる
7/28(金)
・北朝鮮がICBM発射
・米上院がオバマケア改廃法案を否決
・トランプ大統領がプリーバス首席補佐官を解任、ケリー国土安全保障長官を後任に起用
・パキスタン最高裁がシャリフ首相の公民権を剥奪決定
・稲田防衛大臣が辞任
7/29(土)
・米下院が夏季休会(~9/4)
●ロシアゲート捜査
ジャレッド・クシュナー上級顧問のインタビューは非公開でしたが、事後に記者会見が行われました。ロシアゲートについて特に目新しい話はありませんでしたが、久しぶりに聞いたクシュナーの肉声。
クシュナーは、ほとんど表に出てこない人物です。数少ないスピーチの動画がこちら(BBC)にありますが、女性のように頼りない声色とトーンで、ネットでは嘲笑の対象になりました。
今回の記者会見では、さすがに自分がネタになっていることを認識しているのか、相当注意した様子です。ただ、質問を受け付けず、ステートメントの読み上げに終わっており、もうちょっと聞いてみたいところでした。
ロシアゲートは、クシュナーに続いて、ドナルド・トランプ・ジュニア、ポール・マナフォートの議会証言が予定されています。ただ、いずれもこれによって何かが動くことはないでしょう。結局のところ、ロバート・モラー特別検察官の捜査の結果を待つしかありません。
また、ロシアゲートをめぐっては、ジェフ・セッションズ司法長官がトランプ大統領からすさまじい攻撃を受けています。さらに、対ロ制裁法案が可決され、トランプが拒否権を行使してもオーバーライド(再可決)により成立する見通しです。この背景にあるものと今後の展望については今週取り上げます。
●トランプ政権の内部対立
ショーン・スパイサー報道官に続いてラインス・プリーバス首席補佐官が辞任。このHPで何度か書いてきたとおり、プリーバスは政権内でまったく機能しておらず、それでいてオバマケア撤廃の失敗などの責任を追及され、苦しい立場にありました。辞任は時間の問題といわれ、その意味でサプライズはありません。
ただ、後任がジョン・ケリー国土安全保障長官であることはかなり驚きでした。プリーバスを解任できないのは後任がいないことが大きな問題で、その有力候補は、最近政権入りしたアンソニー・スカラムーチ広報部長と考えられていました。
しかし、広報部長に就任したばかりのスカラムーチをいきなり後任に据えることはできない、したがってプリーバス解任はもう少し先になる、とみられていたのです。それが、今回、突然の交代に至ったのは、スカラムーチとプリーバスの対立の激しさが明るみに出て、プリーバスが耐えられなくなったことが大きかったとみられます。
後任のケリーは海兵隊の大将(4つ星将軍)で、輝かしい軍歴を誇る人物ですが、首席補佐官に必要とされる政治的な根回しについてはまったく経験がありません。プリーバスの首席補佐官就任の大きな理由は共和党との太いパイプにあったのですが、この点でケリーはプリーバスに遠く及びません。
トランプ政権の内部対立は激しさを増す一方で、それが度重なるリーク、スパイサーとプリーバスの相次ぐ辞任につながっています。ケリーには、この状況を軍隊的規律によって立て直すことが期待されているようです。
しかし、規律をもたらすことができる唯一の人物はトランプ大統領自身ですから、トランプがその意思をもって、ケリーに然るべき力を与えない限り、状況は何も変わらないでしょう。そうなれば、ケリーがプリーバス同様に苦境に陥り、また規律を維持できないことに軍隊出身者として大きなフラストレーションを感じ、やはり辞任に至る・・というシナリオも十分に考えられます。このあたりを含むトランプ政権の権力構造の最新状況については、今週あらためて解説します。
●オバマケア改廃の挫折
上院でオバマケア改廃法案の採決が行われましたが、49対51票で否決されました。共和党のスーザン・コリンズ、リサ・マコウスキー、そして脳腫瘍を患っているにも関わらず出席したジョン・マケイン議員が反対票を投じています。僅差でしたが、以下の記事で予想したとおり、オバマケア改廃の試みは失敗に終わりました。
・「オバマケア廃止をめぐる闘争(代替法案の採決延期)」(6/29)
さらに税制改革も順調に進んでいません。また、北朝鮮のICBM発射も、トランプ政権の強硬路線が機能していない厳しい現実を示すものとなりました。
トランプ政権の発足から6か月が経過しました。政権の政策面での成果について、権力構造の分析とからめ、別途解説します。
●稲田防衛大臣の辞任
その辞任の経緯と内政面での意義は、このHPの対象外なので取り上げませんが、日米関係にとってはそれなりの意味があります。読者の方のご関心と余裕があれば取り上げたいと思います。
●パキスタン首相の罷免
パナマゲートに端を発したシャリフ首相の汚職問題をめぐり、最高裁の判断が待たれていたところで今回の決定。これ自体は予想されていました。
パキスタンは、近年経済が好調を続けており、外交企業からビジネスチャンスの拡大が期待され、私もこの観点からは相談を受けることが多くなっていました。その流れ自体に水を差すことはないとみられます。ただ、地政学的な観点からみると、パキスタンに対しては、近年、中国の影響力の増大が顕著になっています。
これに対して、インド、米国、日本が連携して対抗するという構図が形成されています。特に、インドの積極的な戦略外交には目を見張るものがあります。非常に興味深い動きなので、近く、パキスタンの現状をふまえながら解説したいと思っています。
(今週の動き)
8/1(火)
・中国人民解放軍の建軍90周年記念日
8/4(金)
・ASEAN外相関連会合(マニラ、〜8日)
●ASEAN会合
恒例のASEAN外相会議があり、関連会合として、東アジアサミット外相会合、ASEAN+3外相会議、ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合、さらにバイの外相会談が開催されます。主要議題は、北朝鮮、南シナ海、地域の貿易・投資・・とこれも恒例ですが、やはり今は北朝鮮が気になるところでしょう。ARFには北朝鮮の代表団も参加するので、その意味ではかなり貴重な場といえます。
トランプ大統領が東南アジアに対するコミットメントをほどんど示していない中で、ティラーソン国務長官がどこまでプレゼンスを示すことができるのか、という点も注目されます。特にティラーソン自身についていえば、国務省内での孤立が深刻な問題となっています。これについても近く解説します。
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5 comments on “今週の動き(7/31~8/6)”
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エンジン全開の振り返り、ありがとうございます!
稲田防衛大臣の辞任、について、日米関係における意義なども、JDさんに余裕がありましたら是非お願いします。
日本の内政問題について、外からどう見られているのか?アメリカは何に注目しているのか?是非、この辺りご教示いただけるとありがたいです。
ヨダレを流して・・
楽しみに待ってます・( ^ω^)・・・(笑
—JDさんの6/29付の書込み—
ということで、オバマケア廃止をめぐる闘争は、オバマケア存続・・・つまり共和党の敗北という結果に終わる可能性が高まりつつあります。
—
それから一ヶ月間、マコーネル共和党院内幹事は、力技、寝技、裏技を駆使して、上下両院協議会の場に審議を移す議決に後一票というところまで漕ぎ着けました。
しかし、最後の最後に長老マケイン議員が反対に回り、敗北が確定しました。
反対票に息をのむ議場と「刀折れ矢尽きた」感じで俯くマコーネル院内幹事に背を向け、飄々と去って行くマケイン上院議員の対照が印象的でした。
『ハウス・オブ・カード』は、確かによく出来たドラマで、楽しめます。でも、実況中継という筋書のないドラマの方が私は好きです。
因みに、トランプ氏は「これで諦める事は、許さん」という趣旨のツイートをしていますが、もう誰も見てないでしょう。
マケイン上院議員は、脳腫瘍と診断され治療に専念するでしょうから、51票しかありません。
そして、敗北を認める演説をマコーネル院内幹事は、”Mr. President, we have to move on.”と締めくくったのですから。
稲田防衛大臣の辞任と日米関係、是非お願いします。
稲田大臣は辞任して当然の状態だと思っていたので、
ご見解を是非とも伺いたいです。
マフィアのヒットマンみたいな奴だと、就任直後に評したコメンテーターが居ました。
2名を大統領府から追い出して、役割を終えたという事でしょうか?
筋書き出鱈目なドラマみたいですが、登場人物のキャラが立っているので楽しめてしまいます。