2017/03/01 00:00 | 米国 | コメント(5)
トランプ失墜のシナリオ②
「トランプ失墜のシナリオ①」の続きです。前回は、トランプ大統領が失墜する原因をつくるのは共和党議員の離反であり、彼らのトランプに対する信頼を揺らがせるトリガーとなるイベントが起こるかどうかが見極めのポイントである点を述べました。
●クレムリンゲート
まず、最も注目されるのはトランプとロシアとの関係です。このHPでは、トランプの異常なまでのロシアへの傾倒が、ジョン・マケインら共和党の重鎮たちにとって大きな懸念材料となっていることを何度も指摘してきました。
この懸念を大きく広げることになったのが象徴的な出来事がマイケル・フリン大統領補佐官の辞任でした。フリンの辞任の原因となったのが、大統領補佐官に就任する前に駐米ロシア大使と接触したことですが、その際に新政権の下での制裁解除を約束したのではないかという疑惑があり、そうであればここにトランプ大統領が関与していたのではないかという、さらに大きな疑惑に広がりを見せています。
仮にトランプの関与を裏付ける証拠が出てきて、フリン同様に違法行為に及んだと立証される可能性が出てくれば、十分に弾劾の理由になります。この「クレムリンゲート」スキャンダルが、現時点においてトランプ失墜につながる最大のリスク要因です。
ロシアとの関係ではロシアが握っているといわれるトランプの不名誉情報が注目を集めましたが、これ自体は弾劾の理由にはなり得ません。しかし、クレムリンゲートの疑惑は、それ自体がダイレクトに違法行為を構成すること、米国の外交が違法行為によって左右された可能性があるという事柄の重大性から、十分に弾劾の理由になるインパクトを秘めています。
ロシアによるハッキングと不名誉情報は、このスキャンダルの重大性を補完する意味をもってくるでしょう。これらの問題が合わせ技になって弾劾の合理性を高めることになる、ということです。
●政権内部での対立
ロシア問題は、政権内部での関係と密接な関連があります。第一に、政権内で反ロシアの立場をとる有力者とトランプ陣営(トランプとその側近)との間で反目が生じるおそれがあります。
ジェームズ・マティス国防長官は、政権の最大の実力者の一人ですが、反ロシアについては強い信念をもっています。さらに、フリンの後継の大統領補佐官に指名されたヒューバート・レイモンド・マクマスター陸軍中将も、マティスと同様にロシアに厳しい認識をもっています。
他にも、ニッキー・ヘイリー国連大使が、ロシアのウクライナへの介入を厳しく非難するなど、制裁解除を示唆するトランプとは相反する言動をみせています。こうした政権内での対立は、政権の有力者の辞任という政権の瓦解につながりかねない事態に発展する危険を示唆しています。
政権の瓦解については、最近では、トランプが側近に対しても不満をもっているといわれています。具体的には、ラインス・プリーバス首席補佐官、ショーン・スパイサー報道官、ゲーリー・コーンNEC委員長が標的とされています。スパイサー報道官は、メディア締め出しのようにますます過激な動きを見せていますが、そこにはトランプの信頼を取り戻そうとする焦りもあるのでしょう。
第二に、ロシア問題のみならず、移民排除、メディア批判、一部の身内で独占する統治スタイルなどに反発する官僚たちの抵抗が、リークや情報操作につながる危険があります。情報機関、国務省をはじめとする官僚たちのトランプへの不信感は相当深刻であり、入国制限に対する国務省官僚の異論など、すでに様々な形で顕在化しています。
たとえば豪州との電話会談のように、内部からの情報漏洩が大きな問題になっています。度重なる情報漏洩には、トランプも、ツイッターで何度も怒りをあらわにしています。
この点で、特に懸念されるのが情報機関との関係悪化です。米国の情報機関は、その中立性に対して強い自負と歴代政権の信頼があり、党派を超えて権威を維持してきました。それが、トランプによって破壊されようとしています。
昔ならいざ知らず、現代の米国の情報機関が私憤から大統領を追い詰めるようなことをするとは思えませんが、このまま状況が悪化し、情報機関のインプットが完全に排除されるような事態に発展すれば、果たしてどんな対応に出るのか・・・予断を許しません。
●国民の支持率の低下
テロや経済の混乱といった、よほど不測の事態が発生して、国民の支持率が急落すれば、共和党議員は、これでは2年後の中間選挙で勝てない・・・と考えて離反する可能性もあります。とはいえ、こういう理由で弾劾に至ることはおよそ想定しがたいです。
米国の政治機構において、民意を問うのはあくまでも選挙であって、弾劾は、そうした民主主義のプロセスではなく、大統領といえど違法行為は許されないという自由主義のプロセスに位置付けられるからです。しかも、入国規制に対する支持率の高さをみても分かるとおり、トランプの政策はまったく不人気というものではありません。
これからも、トランプは、大統領選の最大の勝因となったラスト・ベルトの有権者を念頭において、彼らの支持を得るための政策を追求するでしょう。トランプはタフで、簡単に辞める人物ではありません。
おそらく、弾劾が間違いないという見通しが立つような異例の事態に至らない限り、自ら退任というシナリオにはならないでしょう。したがって、国民の支持率の低下がトランプ失墜のトリガーとないと考えられます。
以上より、トランプ失墜のシナリオは、現時点では、ロシアとの関係、それを契機とする政権内の対立の激化、官僚の反逆の合わせ技が考えられますが、現時点では、その実現可能性は低いといえます。少なくとも、18年の中間選挙までは待たざるを得ない・・・というのが現時点での合理的な見通しです。
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5 comments on “トランプ失墜のシナリオ② ”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
時間がかかるのでしょう・・
何しろ・・
総て初体験だから・・
上手くなるのに・・
腰を使えるようになるには・・
最低でも・・一年はかかるのでは・・
支持率は高いのでは・・
北への攻撃・・高くなりましたね・・
最近シリーズ「ハウス・オブ・カード」によると・・
このコースらしいですよ・・( ^ω^)・・・(笑
なんだかこの記事を読んでいると、
部下たちの反ロシア姿勢で圧力かけつつ、
トランプ本人はいつでも手のひら返しするぞっていう
対ロシア布陣になっているようにも思えてきました。
竹中正治氏のブログで、北朝鮮は米中露の信託統治では、との引用記事。米ソで半島を分割し、ソ連を中国が引き継いだのだからさもありなん。しかも長期的には半島から米軍撤退とか。
そこまでいくと日米安保条約とは、日本が自分で中国と戦争する条約という事がわかるのでは。つまり借地契約だったのでは。笑 米中が直接戦闘するわけにいかないから援助だけだろう。尖閣に上陸されたら施政化にないということで終わりか。日本国民は遅ればせながら、グアムなどのような信託統治をと言い出すかもしれない。米国にはその気はない。
トランプ大統領も黒幕に振り付けられて動いてるだけなら、簡単には倒れませんね。
元々バカじゃないんだし…(笑)。
ここまで確定している事実は、ロシア政府がトランプ側に有利となるように大統領選挙に不法に介入した事。
対露制裁のきっかけとなった民主党本部サーバのハッキングは、こうした不法介入の一環だった。
問題は、トランプ陣営がどこまで知っていたのか?あるいは、関わっていたのか?
こういう状況で、セッションズ司法長官=大統領顧問弁護士が、大統領選挙期間中、ロシア駐米大使と二回会っていたと司法省が発表した。
会った時点では、セッションズ氏は司法長官ではなかったが、上院議員であり、上院軍事委員会のメンバー。先に辞任に追い込まれたフリン氏は、退役軍人という私人の立場だったのとは重みが違うのではないか?
しかも、司法長官に任用される際の上院聴問会において、宣誓下で、ロシア政府関係者と会った事が無い、と証言してしまっている。
偽証罪ではないか?