2017/02/24 00:00 | 英語 | コメント(3)
英語のスピーキング⑦:音の省略
トランプの話ばかりで皆さんも疲れてきたかと思うので(笑)、少し趣向を変えて、久しぶりに英語の話です。
■ 安倍外交「陰の立役者」 「通訳担当官」語学のエキスパート(2月10日付日経新聞)
めずらしく外務省員をフォーカスした記事。私自身は、残念ながら総理通訳をするほどのレベルにはありませんでしたが、日米首脳会談の通訳をした人は私の後輩です。ツイッターでも映りこんでいる人ですね。
さて、「英語のスピーキング⑥」の続きです。
米国式英語では、子音が弱すぎてほとんど聞こえないときがあります。この現象は、言語学では「エリジョン(elision)」(フランス語で学ぶ「エリズィオン」と同じ)と言われます。
このことを知らずに米国人がこのように話すのを聞くと、音が飛んだように聞こえて、話についていけなくなります。ニュースの英語を聞くと、映画などの英語よりずっと聞きやすいことに気付くと思いますが、これは、音の省略をそれほど行わず、一つ一つの言葉をきっちり発しているからです。
しかし映画やドラマでは、日常会話の英語が話されるので、音の省略が頻繁に起こります。このためニュースより格段に聞き取りの難度が上がるのです。
対策としては、こういうパターンをできるだけ多く知って、普段から慣れておくことです。まず、消える子音が何かを知ることが大事です。それは、以下の子音です。
⚫︎無声音の「p」「t」「k」
⚫︎有声音の「b」「d」「g」
これらの子音が消える場合は、一瞬、音の空白が生じます(非常に軽い空白なので、ほとんどない場合もある)。
ただし、音の連結(リエゾン)が生じる場合は空白は生じません。リエゾンについては次回解説します。
具体例を見てみましょう。
⚫︎「t」が消える
「certain」→「サー・ゥン」
「wanted」→「ウォニド」
「interesiting」→「イナレスティング」
「internet」→「イナーネット」
「interaction」→「イナラクション」
「continental」→「コニヌンダル」
「into」→「イヌー」
⚫︎「k」が消える
「asked」→「アースト」(なお黒人のスラングでは「アクスト」という)
「picture」→「ピ・チャー」
⚫︎「b」が消える
「probably」→「プロ・ブリー」
⚫︎「d」が消える
「didn’t」→「ディ・ヌ」
「wonder」→「ワナー」
「tend to」→「テン・トゥー」
「what did you」→「ワダヤ」あるいは「ワヂャヤ」
(「t」と後ろの「d」の音が消えて、さらに早く話すことで「i」と「ou」の音が「ウ」か「ア」に近くなる。)
⚫︎語尾の「t」「n」「g」が消える
「ing」→「in’」
「and」→「’n」
⚫︎「h」が消える
「saw him」→「ソーゥム」
「saw her」→「ソーアー」
「kill them」→「キルム」
「find her」→「ファイナー」
「when he’ll」→「ウェヌウ」
「shut’em」→「シャ・ゥム」
(「’em」は「them」を意味し、「th」が省略。「shut」の語尾の「t」も消える。
なお、「母音のポイント」で述べたように、「him」「them」の母音「i」「e」は弱母音となる。)
「did he」→「ディー」
「give him her money」→「ギヴイマーマネー」
「what’s going on here?」→「ワッツゴーイノニア」
「should have」→「should’ve」(シュダヴ)
「would not have」→「wouldn’t've」(ウドゥンタヴ)
こういうパターンをあらかじめ理解して、耳になじませておくと、格段にリスニングのレベルが上がります。
また、こういうパターンがなじんでくると、自分でも口に出して話せるようになります。ただし、無理矢理に頑張る必要はありません。ネイティブにもはっきり聞き取ってもらいたいときには、むしろ省略を避けて、テキストのようにはっきり区切って話した方が無難です。
特にスピーチや会議ではその方が望ましいでしょう。ネイティブも、ニュースや政治家の演説ではそのように発声します。
とはいえ、友人との会話で、自然体で出せるようになれば、積極的に使ってみると良いと思います。だんだんと自分の感覚になじんできますし、ネイティブの方も、くだけて話せる人だなと思って、心理的な距離も縮まるでしょう。
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3 comments on “英語のスピーキング⑦:音の省略”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
ingのgを発音しないなど断片的に知ってたのですが、ルールがあったのですね。これは分かりやすい!
そして、私はそのルールを知らないまま、語尾や単語のつなぎを発音しないのが、”ネイティブっぽい”と思ってました。そしてオーストラリアとかに行くとまぁ通じない・・逆にインド人には通じる(と思ってるだけかも。)
英語マスターまでの道のりは長いですね。そして使う期間と使わない期間が交互に来るので上達しない。。
政治・歴史の話も楽しいですが、こういうトピックもたまにはぜひ!お願い致します!感謝です。
このシリーズ、熱望コメント入れつつ、ちゃんと読んでない。
1回目から丁寧に読んでみます。
しかし、アメリカ人、イギリス人は母国語で、ものすごいアドバンテージですよね。
日本も早く使える英語を、ですが、時代の流れで否応なしに、幸いそうなりそうですね。
前も書きましたが、米国英語の、子音落としは困るんですよね。全くもって迷惑。英語は美しい子音が命のはず、これを落としてしまってはフランス語、ロシア語、東北弁のようになってしまう。しかし歌ではこういう言語にかなわない。子音が邪魔で歌っても様にならない。
広い新天地ででかい声で母音を強調せざるを得なかったのか。その場合確かに子音が脱落しやすい。英国から見れば、見る影もなくすっかり田舎の英語になってしまったと思えるのでは。(笑
JDさんは以前の記事で、カッコつける人たちは英国式だと言ってました。そうすると田舎のトランプ支持者は母音強調英語ですね。(笑