2017/01/17 00:00 | 米国 | コメント(1)
トランプ政権人事:マティス国防長官候補の動き
1月20日のトランプ大統領就任が間近に迫ってきました。現在最も注目されているのは、上院による閣僚承認プロセス。
マイク・ポンペオ(CIA長官)、ジェフ・セッションズ(司法長官)、レックス・ティラーソン(国務長官)、ジェームズ・マティス(国防長官)といった重要ポストについて上院の公聴会が行われています。TPP、ロシア、環境、テロリストの拷問などについて、トランプとは異なる立場が示されていることが注目されます。
もちろん、これは上院の承認を得るためのポーズという面が強いことは明らかです。承認がとれなければ元も子もないわけですから、まずはトランプよりは議会にとって都合の良い発言を行う、というのが合理的な行動となります。
とはいえ、以下の点については、今後の動きをうらなう上で注目に値します。
●ティラーソン(国務長官)のTPPに対する立場
ティラーソンは、TPPに対して「反対しない」という発言をしました。これは議会との関係であえていう必要はありません。
TPP反対を唱えることで上院の承認が得られなくなる、ということはおそらくあり得ないからです。にもかかわらず、あえてトランプの立場と異なる発言をする真意は何か。
一つには国務長官という立場があるのかもしれません。TPPはUSTRの所管であり、国務省は主管官庁ではありませんが、対アジア戦略という観点から、国務省としてはTPP支持を基本方針とするのが合理的です。
ただ、ティラーソンは外交経験がまったくない人ですから、こういう政治的な判断がどこまであるのかという疑問はあります。
もう一つ考えられるのは、ビジネスマンとしてのティラーソン本人の思想哲学です。これはこれで納得のいく説明ですが、トランプの意向にさからってまであえて公にすることについては今一つ納得いきません。
そうであれば、もう一つ推測されるのは、トランプが考え方を変えつつあるのかもしれない、という点です。
ただ、トランプがNTC事務局長に指名したピーター・ナヴァロ(「トランプ政権人事(国務長官、国家通商会議)」参照)は強固なTPP反対論者です。この人事をみると、その可能性は低いように見えます。
ここで注目すべきは、もう一人のTPP反対論者で、商務長官に指名されたウィルバー・ロス。TPP反対の立場を明らかにしていますが、一流のビジネスマンであり、日本との関わりも深い人物です。
彼がTPPに対して歩み寄りの立場を見せれば、トランプのチームの方向転換の観測が出てきます。その意味で、上院公聴会の発言は注目に値します。
とはいえ、国内の雇用を何よりも重要なアジェンダと位置付けるトランプですから、あまり期待をかけることは得策とはいえません。また、いずれにしても、ティラーソンはトランプと一心同体の関係にある人物です。
TPPに対する方針がどうなるのか、という点では興味深いですが、ティラーソンの発言が政権の不安定要因になることはありません。
●マティス(国防長官)のロシアに対する立場
政権の不安定要因という意味で、むしろ重要視されるのはマティスの発言です。「トランプ政権人事(国防長官)」で述べたとおり、マティスはプロ中のプロであり、トランプの言うなりになる人物ではありません。
マティスの「米国にとって最大の脅威はロシア」という発言が、議会向けのポーズなどではなく、己の信条に従ったものであることは間違いないでしょう。マティスのように、豊富な経験と独立心をもったプロフェッショナルの起用は、トランプにとっては両刃の剣となります。
党派を超えてエスタブリッシュメントの支持を得られる反面、自身の政策と真っ向からぶつかるリスクを抱えることになるからです。しかも、トランプは大統領補佐官(国家安全保障担当)にマイケル・フリンを起用していますが、このフリンは、親ロシア、偏向したナショナリズムといった点において、トランプと一心同体といっていいほど思想と利害をともにする人物。
このような人物がホワイトハウス(NSC)で安全保障の実権を握ることは、当然のことながら、NSCと国防省との間の組織的な対立が予想されます。最悪の事態は、マティスが自らが国防政策の主導権をとれないことを理由に退任してしまうことです。
マティスのような政権の屋台骨を背負う人物を失うことは、エスタブリッシュメントからの支持を大きく損なうことになります。
「ロシア情報」で述べたとおり、トランプは、ロシアがもっているといわれる「不名誉情報」という爆弾を抱えています。これが明らかになり、しかもマティスを失うことになれば、共和党の支持を一気に失いかねません。
そうなれば、トランプ政権はあっという間に瓦解、ということになるでしょう。その意味で、今後、マティスの動向はきめ細かくウォッチする必要があります。
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EU離脱で強めの発言ありましたが
ISIL 掃討本格化ということ?
5年くらい前に市街戦支援用のARシステムを
BAEシステムズ社が受注開発中とのニュース記事を見かけた記憶があります。。
ファインダーを覗くとガーベジカンに吹き出しが付いて
爆弾注意と出るようなモノらしかったです。