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The Gucci Post [国際政治・経済・金融 × プロフェッショナル]

2016/11/23 00:00  | 東南アジア |  コメント(2)

チーム・ドゥテルテの陣容


「ドゥテルテ外交②」のコメント欄で、ペルドンさんから、ドゥテルテ大統領のブレーンについて解説の依頼がありました。

トランプ新政権もそうですが、どのような人材が起用されるかは政権の方向性を読む上で極めて重要です。

トランプのニュースに隠れていますが、ドゥテルテも、APECの機会に習近平プーチンに会うなど、相変わらず活発な動きを見せています。こうした動きを理解するベースとなる情報として、チーム・ドゥテルテの陣容を説明しましょう。

フィリピン閣僚リストを見ると、ドゥテルテ政権は、大きく、身内系(ダバオ人脈)、専門家系、リベラル系の三つのグループから成り立っていることが分かります。具体的には以下のとおりです。

●身内系
・エバスコ大統領府長官(高校の同級生)
・ゴー大統領首席補佐官(秘書)
・ドミンゲス財務相(高校の同級生)
・ヤサイ外相(ダバオ出身)
・アギーレ司法相(ロースクールの同級生)
・トゥガデ情報通信相(ロースクールの同級生)
・デラロサ国家警察長官(ダバオ警察署長)

●専門家系
・ペルニア国家経済開発庁(NEDA)長官(経済学者)
・ロペス貿易産業相(ビジネス)
・ロレンザーナ国防相(軍人)
・エスペロンNSC議長(軍人)

●リベラル系
・ベロ労働雇用相(左派弁護士)
・マリアノ農地改革相(左派弁護士)
・ロペス環境天然資源相(環境問題活動家)

●私的アドバイザー
・フィデル・ラモス元大統領

ただし身内系と専門家系は重複する人もいます。たとえばドミンゲス財務相はダバオ人脈ですが元々ビジネスマンで、そのプロ・ビジネスの経済政策は経済界から高く評価されています。

●外交政策

まず、最も気になるのはドゥテルテ外交を支える人たちです。この点は、結論からいえば、スタッフはそろっているものの、あまり機能していません。たとえばヤサイ外相はSEC委員長などを歴任しており、政治家としてはベテランですが、外交の経験はありません。

もっとも、外務省、NSCの官僚はプロフェッショナルであり、米国務省、日本外務省ともしっかりしたコネクションをもっています。ヤサイ外相はバランス感覚をもっており、これらスタッフとの関係は良好といわれます。私も出張中に外務次官にお会いしましたが、経験豊富で立派な方でした。

また、国防省・軍は当然のことながらプロ米国であり、ロレンザーナ国防相も親米路線を重視しています。ドミンゲス財務相、ロペス貿易産業相、ペルニアNEDA長官ら経済閣僚も、経済面から米国との関係の重要性を理解しており、ドゥテルテが過激な発言を述べると、ヤサイ外相とロレンザーナ国防相とともに火消しに回っています。

また、ドゥテルテが師と仰ぐラモス元大統領は、フィリピンを代表する軍人・指導者であり、徹底して親米路線を主張しています。

問題は、ドゥテルテがこうしたスタッフの話を聞かないことです。その背景事情は「ドゥテルテ外交②」で述べたとおりです。

特に、最近は、ヤサイ外相とロレンザーナ国防相が米国との合同哨戒活動と合同軍事訓練の中止を真剣に検討することを示唆する発言をしており、ドゥテルテ路線に適応しつつあるのが気になります。

ラモス元大統領はドゥテルテ批判の発言を表立って行うようになり、対中国特使も辞任しました。外交については、ドゥテルテが裸の王様になるリスクが懸念されます。

●麻薬戦争

「麻薬戦争」の最大のブレーンはエバスコ大統領府長官。元々は聖職者で、共産党ゲリラに加わって投獄された経験もある異色の閣僚です。

エバスコはドゥテルテにとって精神的支柱のような人物であり、麻薬戦争や共産党勢力との和平のアーキテクトといわれます。この二つの政策はドゥテルテ政権にとって最重要課題ですから、エバスコは政権において最も実力のある人物の一人とみられます。

また、ダバオ時代からの腹心であるデラロサ国家警察長官がオペレーションの指揮をとっており、麻薬戦争の前面に立つ男としてフィリピンでは注目を集めています。

●経済政策

ドゥテルテは格差是正に強いこだわりをもっており、それは、労働者保護、農民保護、鉱山開発という三つの重要分野の閣僚にリベラル系を配置したことに現れています。これらの3閣僚は、労働者の正規雇用、農地の転用規制、鉱山開発規制において積極的なイニシアチブを発揮しています。

しかし、これらの分野を除くと、ドゥテルテは、ペルニアNEDA長官を中心とする専門家に経済政策を一任しています。また、ダバオ時代の経験を生かし、汚職の撲滅と行政の効率化を積極的に進めています。

結果的に、ドゥテルテ政権の経済政策は、アキノ前政権の路線を継承しながら、より自由主義的で、事業環境の改善を重視したプロ・ビジネスなものとなっており、実行力の高さを伴って、ビジネス界からは高く評価されています。

このように、ドゥテルテのチームは、身内、専門家、リベラルの混成軍ではありますが、少なくとも経済政策においてはバランスが良く、今のところうまくかみ合っていると評価できます。

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2 comments on “チーム・ドゥテルテの陣容
  1. ペルドン より:
    陣立て

    中々手強い・・
    軍関係・・少し薄いかな・?

    フィリッピンでは・・軍の把握・人事・・
    真っ先に・・人間関係も諳んじておかねば・・
    ラモスの離反・・痛い・・原因は・?
    ラモスも歳だから・・
    と言っても・・・(笑

    情報有難う・・時代劇考えているので・・副主人公に抜擢するよ・・・!!

  2. 下北のねこ より:
    理想主義的資質

    検事出身のドゥテルテさんは、間違いなく正義に対する揺るぎなき信念があります。ラモスさんは、アメリカの民主主義の最良の部分の恩恵を教育を通して受けてきて、その正しさが、アメリカに対する支持の根底にあるんじゃないかと思います。

    国費留学や、出世しながら国内の大学に入り直して、必要専門分野の学位を取り直すなんて、軍人というより、西側のエリート官僚そのものです。
    そのころはアメリカも「世界の警察官」として、輝いてました。
    ラモスさんご自身はアキノ政権下、国内では共産ゲリラと対決するのではなく、合法化を目指していたように記憶しています。スービック海軍基地・クラーク空軍基地の返還を目指していたのも、ナショナリズムによる国内の融和を考えてのことでしょう。
    ラモスさんご自身は一流の軍人でありますが、交渉による平和の志向は、理想主義的です。
    関係ないけど、今日、ビートルズの曲をジャジーに歌った後に、マイクを横取りして、「ロックンロールミュージック」をカッコよくキメた空気を読まないフィリピンの子(多分、絶対私の英語バカにしてる)はラモスさんのことを「ともかくGentleman」と評価してました。

    ドゥテルテさんにしても、ラモスさんにしてもフィリピン人のトップエリートには、発展途上の理想追求的な感じがありますね。

    ものすごく、話は関係なくなりますが、軍と言えば、隣の韓国、変な政情不安になってきて、軍が動き出すなんてこと、なければいいですね。
    今の時代、さすがにないとは思うけど。

    「ほしのこえ」は私も見たことあります。ホームメイド?ホームメイク?アニメの傑作ですね。技術的な稚拙さに目を瞑れば、宇宙と地球の時間の流れの違いを巧く使った。なかなか味がある作品だと思います。メディアミックスとしても、この映画を見た後に佐原ミズさんのコミックを読めばもっといい感じになります。

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