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2016/08/10 00:00  | 米国 |  コメント(6)

米国大統領選:トランプの自滅


共和党全国党大会の直後のCNN/ORCの世論調査では、ドナルド・トランプ支持が48%、ヒラリー・クリントン45%とトランプがリード。

しかし、民主党全国党大会の直後の世論調査では、ヒラリー52%、トランプ43%とヒラリーが9ポイント差で大きくリード。

CBSやNBCの世論調査でも、同様にヒラリーがトランプに大差をつけてリードしている結果が出ています。

「今週の動き(8/1~7)」で述べたとおり、共和党大会は「分裂」、民主党大会は「結束」がプレイアップされるという対照的な結果になりましたが、これらの世論調査の結果は、この党大会のイメージがそのまま投影された感があります。

さらに、党大会を終えた後、トランプの失態がとどまることをしらない状況になっています。

米兵遺族への中傷、FOXの女性キャスターに対する女性蔑視発言。

NFLの試合日と重なることを理由にテレビ討論会の日程変更を要求(しかもNFLはトランプに試合への招待状を送った事実はないと発表)。

外交についても、ウィキリークスの問題を受けて、「ロシアにヒラリーのEメールのハッキングをもっとやってもらったらよい」、「クリミアの人々はロシアと一緒にいることを望んでいる」というトンデモ発言。

こうした常軌を逸した言動に対して共和党指導部からも批判が続出。

これを受けて、トランプは、ポール・ライアン下院議長の選挙を支持しないと述べるなど、これまたあり得ない発言。

さらには大統領選は自分が負けるように仕組まれている(「rigged」)という、米国民主制の根幹を否定する発言。

過去の大統領選でこんなことを言った候補者はいません。

アル・ゴアも、ミット・ロムニーも、選挙に負ければ、新大統領の下で米国は一致団結すると述べて、さわやかに去っていきました。これが選挙であり、民主制であると、米国人は信仰をもっています。ゆえに米国人は「sore loser」(みっともない敗者)になることを嫌います。

直近では、ジョン・ネグロポンテ元国家情報長官、マイケル・チャートフ元国土安全保障長官、マイケル・ヘイデン元CIA長官、ロバート・ゼーリック元USTR代表、マイケル・グリーン元NSC上級部長ら共和党の外交・安全保障専門家50人がトランプ拒否の声明を発表。

共和党から「You’re fired.」と言われる状態に陥りつつあります。

ペルドンさんの指摘のように、ロイター・イプソスの世論調査では3%の僅差となっていますが(ロイター記事)、数ある世論調査の中で異なる結果が出ることはめずらしいことではありません。

他の各種の世論調査をみると、ヒラリーとトランプの差はますます広がり、10ポイント以上引き離す結果も出てきています。

「米国大統領選の注目点④:選挙戦略」で述べたとおり、トランプは主要な激戦州(フロリダ、オハイオ、ペンシルバニア、ミシガン、バージニア)のほぼすべてにおいて勝利しなければならず、そもそもの出発点において極めて厳しい状況にあります。

ところが、州ごとの世論調査をみると、トランプは、フロリダ、ペンシルバニア、ミシガンにおいて、30%台の低い支持率にとどまっています。

正直なところ、世論調査は当てになりません。しかし、トランプ凋落のトレンドはクリアーであり、しかも今回は世論調査の結果にも一致するという点で、今までとは違う、真の意味でのトランプの苦境が明らかになっている状況です。

米兵遺族への中傷、外交、民主制の根幹。これらについてのトランプの言動は、失言というよりは彼の人格を体現したものです。それは、米国人の本質に関わる部分であり、これを傷つけられることだけは受け入れられません。だからこそ、これはついていけないということで、いよいよ世論調査にも現れてきたのでしょう。

この状況では、本選挙を待たずしてトランプが勝手に倒れるというシナリオの可能性もゼロではないかもしれません。

まあ、メディアとしては、選挙を盛り上げるためにトランプに頑張ってもらわないと困るので、何とか見せ場をつくるよう試みるでしょう。

とりあえず山場となるのは、9月26日の第1回テレビ討論会。トランプとしては、ここに至るまでに何とか勝負の格好がつく状態にもっていきたいところです。

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6 comments on “米国大統領選:トランプの自滅
  1. ペルドン より
    アウトサイダーの戦い

    トランプは・・共和党・エリート層の支持を・・最初から求めていません。

    共和党の外交・安全保障専門家50人がトランプ拒否の声明も・・
    誰が・・自分の・・又自分を支援する層の敵か・・明確に浮き上がらせた効果がありました。
    彼等が共和党を堕落させてきた・・その一言でうっちゃり効果は出るのです。肉を切らせて骨を断つ・・戦法です。
    それが・・
    根強い共和党反エリート層の・・熱狂的な支持を受ける由縁でしょう。
    彼はスマートな戦いを求めていません・・ストリート・ファイトを求めている。

    ヒラリーを中心として・・民主・共和両党のエリート層・エスタブリッシュメント連合対トランプ・・
    この図式を構築・・国民に認識させ・・本選挙に望む戦略でしょう。

    オバマが頻繁に顔を表すのは・・大いに歓迎でしょう。
    オバマの非支持率は45%を越えます。支持率も俄仕立てに過ぎない。そろそろ国民は・・嫌気が表れ始める・・
    今・・大統領らしくないのは・・オバマなのです。

    戦略的には・・ヒラリーが最初に計画した・・オバマとの距離が正しい・・と思います。だが・・オバマはヒラリーを庇護・・抱え込んでしまった・・
    勝たねばならない戦術州・・
    その他の州・・それが何だ・・とトランプは嘯くでしょう。

    古代オリンピック選手のように・・トランプは真っ裸で戦っている。
    それ以外・・勝てる手立てはない・・捨て身の戦法なのです・・
    副では手痛い失策をしましたが・・

    ヒラリーは・・勿論・・素っ裸にはなっていません・・なれません・・
    もっとも・・ヒラリーも副で失敗した・・
    副大統領候補ではなく・・
    イエズス会聴聞僧を雇った・・
    ホワイトハウスを・・ホワイトハウス・チャーチに換えたい・・
    毎日・・朝食前に懺悔できますから・・・(笑

  2. JFKD より
    エルドアンのロシア接近

    クーデターの後処理は暴走とも思え、プーチンとの接近は似た者同士の接近ということで嫌な予感がします。前回の記事の通リ、もうEU加盟は望まないわけですから、エルドアンはより自由度を得た感じですね。さすがにNATO離脱はないと思いますが、ISをめぐる解けないもたれ合いに影響を与えるのでしょうか。オバマが不介入を決め込み、イラン、サウジも介入して全く展望が見込めませんね。ヒラリーが国務長官だったころと、その後スーザンライス・ヌーランドがやってきた状況とだいぶ変わってしまい、ヒラリーも対応できないのでは。このあたりもぺルドンさんが恐れる悪夢の予感がします。オバマよりひどくなるんだろうな。

  3. JFKD より
    米国はどういう過渡期なんですかね

    ぐっちーが例える西郷隆盛が勝っても負けても、大久保利通がいないんですよね。オバマは徳川慶喜としか思えない(笑)。西郷が早く出てき過ぎて、時差があってうまくつながらないんですよ。それに西郷は人格者で、プロレス関係者やストリートファイターではなかったから、一緒に死んでくれと頼んだ武士もなんとか鎮魂された。ピューリタンはトランプでは鎮魂されそうもないが、まだ死ぬ気はないようだ。ブレグジットは英国のためになるが、トランプが勝ってもプロレスと同じストレス解消剤にしかならず、エリートに利用されるだけに思えます。トランプが勝つくらいなら、やはりサンダース(自由民権運動・笑)が勝つべきだった。
    政治的には何だかの終りの始まりであることは確かだと思うので、ヒラリーはいったい何に喩えられんでしょうね。経済的には内向きになっただけで米国はそれほど困らないでしょうが、世界は、特に日本が大政奉還されては一番困るわけです。

  4. 空の財布 より
    選挙&マスメディア

    都知事選挙の某老人候補者の扱いを見ても、まともに客観的に伝えてるとは到底思えませんよね。
    森進一氏と一緒に本人はわずか数十秒、それも森氏の紹介っていう映像を見ると、お笑い、正確には嘲笑の世界が眼前に広がっております…。
    トランプ氏も、人間性が隠しようがなくなってくると、肝心の支持者に失意が広がり、煽てられたブタは木に登るべからずということをご本人が身に染みて感じてることでしょう。
    で。
    どうやって豚が木から降りるか、ですが、知ってる人はいるのでしょうか???
    最後は頓死、ですかね、でも辞書の意味は違うかな?
    安楽死でもなく、、、
    広くは自爆死でも、字面からは突然っぽく感じるし。
    自己陶酔周辺状況見誤り頑張り過ぎその挙句本性見られ追い詰められ死、ですか、これで落選すれば、ですが…。
    日本がオリンピックで頑張っているのに、暗いコメントになりました…(苦笑)

  5. きたろう より
    これも戦略?

    ぐっちーさんが実際にお会いした際のトランプ評なども合わせて考えると、トランプはアメリカ大統領選挙というある意味現代最高の政治ショーで、如何に遊ぶかということにしか興味が無いような印象も受けます。

    既成の政治家をことごとく打破したという点において、共和党候補になった時点で彼の望みの大半は成就したのではないでしょうか。下手に大統領になるよりもこの辺で巧みに撤退して、彼の本業である実業へのPR効果へと巧く変換していくというのは、見方としてひねくれ過ぎ若しくは浅すぎでしょうか。

  6. ペルドン より
    やはり・・財団が

    ヒラリー国務長官時代の・・
    クリントン財団の寄付・・
    便宜を図った礼金濃厚・・

    やはり・・
    Eメールで・・

    ヒラリーの支持率にも影響か・・
    ホント・・二人は不支持率でも・・競い合っている・・
    どちらが勝つのでしょうねぇ・・・(笑

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