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2016/01/22 01:23  | 中東 |  コメント(4)

イラン制裁解除


イラン核合意発効 制裁解除(1月17日付ウォールストリートジャーナル記事)

いよいよイランの制裁解除がスタートしました。包括的行動計画(JCPOA)に基づく「Implementation Day(ID)」は1月16日ということになりました。

以前お伝えしたとおり、もともとIDは1月中となる見通しでしたから、これまでのところプロセスは順調に進んでいます。

特筆すべきは、制裁解除と同日に、イランと米国それぞれで拘束されていた米国人4人とイラン人7人の釈放が発表されたことです。事実上の「人質交換」になります。

米国とイラン双方の国民の拘束は大きな問題となっていましたが、核合意とはまったく関係のない話です。

それを核合意のIDと同日にもってきたのは大きなサプライズでした。

米・イラン関係が核合意を超えて進展するかについて、「米・イラン関係の今後」で詳しく述べましたが、まさに核合意が他の外交問題に波及することを内外に明示したといえます。

核合意の交渉を通じて、ケリー国務長官とザリーフ外相の信頼関係が築かれたことが今回のサプライズを可能にしたといえるでしょう。

一方で、米国は、IDの翌日、弾道ミサイル問題に関する制裁の追加を行いました。

米、イランに追加制裁 弾道ミサイル開発で(1月18日付BBC記事)

ミサイル制裁の強化はいずれ行わざるを得ないものでしたから、米国としてはタイミングをはかっていたのでしょう。それをIDの直後にもってきて、制裁強化とその影響を抑え込もうとするあたり、非常によく考えていることを窺わせます。

いずれにしても、制裁解除はロウハニ政権つまり改革派には追い風となります。次の注目イベントは2月に予定されている国会選挙です。

制裁解除が市場に与える影響ですが、ビジネスチャンスの拡大はあるものの、何といってもまず気になるのは原油安です。イランは制裁解除直後に日量50万バレル、1年以内に日量100万バレル増産すると述べていますから、底の見えない状況がますます続きそうです。

ついでに、イラン・サウジの国交断絶に関しては、昨日、イランのアラグチ外務次官(法律・国際問題担当)が国交断絶以来初めての政府高官としてサウジに訪問したとのこと。

アラグチ次官は2007年から2011年まで駐日大使を務め、その前と今回の核交渉においても首席担当官を務めた人物。イランきってのタフ・ネゴシエイターとして知られています。

前回の記事で事態はエスカレーションしないという見通しをお伝えしましたが、イラン側の関係改善に向けた動きの積極性が目立ちます。制裁解除が無事に進展した状況を安定させたい狙いもあるのでしょう。

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4 comments on “イラン制裁解除
  1. ペルドン より
    イラン制裁解除

    イランとしては・・
    最後のカードを切ったのだから・・後戻り出来ない・・
    と同時に・・
    >>イスラム革命防衛隊は、米空母から約1,4キロ離れた場所で、ミサイルの発射演習を開始した。
    米側は「今回の射撃演習を「極めて挑発的であり、危険が無いとは言えない行為だ」と反発・・

    イランの政権は・・関東軍的存在・・アンタッチャブル的存在・・イスラム革命防衛隊を・・抑えきれるか・・危惧が残っている。

  2. 療養者 より
    長くなって申し訳ありません

    いつも楽しみに参照させて頂いております。
    有難うございます。

    イランが制裁解除された事により、イランが北朝鮮へ資金提供する事による
    中性子爆弾の北朝鮮との共同開発を以前よりも深化&加速化させる可能性
    についてどのようにお考えになっていますでしょうか。
    中東地域のさらなるカオス化、日本にとっては、安全保障上の脅威の高まりと
    拉致問題解決の遅延が考えられませんでしょうか。

    あとJDさんは、”従軍慰安婦”という用語をどのように捉えていらっしゃるのか
    をお伺いしたいです。
    私は、”従軍慰安婦”という用語を使用する事は、一部の意図のある日本人から
    発信され、偏向した扇動を行う日本のマスコミが増幅させたデマに乗せ
    られている事になると考えておりますがいかがでしょうか。

    外務省の作った英用語?の”comfort woman”からは、
    英語圏のネイティブスピーカーが、事の実態をイメージできず、
    韓国の主張するところの、「日本軍が主体となって、20万人の処女を軍施設
    に強制連行して、”Sex slave”とした。」というイメージを想起されかねない
    と思われますが、”Comfort woman”というネイティブスピーカーにとっては、
    曖昧な和製英用語を使う危うさについてどのようにお考えになっています
    でしょうか。これも韓国と同意に繋げるための双方が解釈しようのある
    曖昧な表現として使用されているのでしょうか。官僚的な感覚では、
    今まで先輩が使ってきて通っているのだから俺も使うんだよ。
    という感じでしょうか。

    結局の所、”the involvement of military authority”がどこまでの軍の関与を
    指すのかを曖昧にして日韓合意は行われて(曖昧にしないと話が進められ
    なかったため)、日本とそれ以外の国では、その言葉が指す意味が異なる
    異なるというところに、我々日本人の祖先の名誉および子孫の誇りと
    安全を傷つける可能性が新たに生まれたという事だと認識しております。

    韓国は少ない予算の中から、米国歴史教科書に(いわゆる)従軍慰安婦の記述を
    盛り込ませようと以前にも増してそれこそ必死になって工作を続けていると
    聞きます。外務省は、これらの動きに関してどのように対処なされる
    のでしょうか。

    やってない事をやったと思わせるような発言をしてはいけない。
    ましてや、やっていない事に関して、いくらであっても、やったと
    思わせるような行動(金を出すなど)をしてはいけない。
    というのは、人でも国家でも基本中の基本であると思います。

    従属国家であり軍事やエネルギーや食糧などに関して独立できていない
    国家である日本にとって、日韓合意の結果現在取り得るギリギリの選択肢
    であったという説明が、JDさんの記述もあったように思いますけれど、
    警戒感を抱かせないように愚かな振る舞いをして、
    徳川幕府による改易を免れたような大名もいたように、
    とにかくお家存続のため、忍耐をして、TPPなどの媚びを振りまくるという事
    なのでしょうかね。

    最後まで読んでいただきまして有難う御座いました。

  3. JD より
    ペルドンさん

    すみません、いつも深遠なコメントをいただきながら、お返事できず・・多忙のため、夜中に帰ってきて、記事をアップデートするので精一杯となっていました。

    2月の選挙、改革派の議員の9割が選管により失格とされたようです・・安心できません・・笑

  4. JD より
    療養者さん

    ありがとうございます。
    せっかくのご意見、すぐにでも回答したいのですが、現状なかなか余裕がなく、少し検討させて下さい。

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