2015/10/23 00:00 | 中東 | コメント(2)
アサドのロシア電撃訪問と4か国外相会談
■シリアのアサド大統領がロシアを電撃訪問(10月21日付BBC記事)
アサド大統領のロシア訪問は2011年の内戦勃発から初めての外国訪問。しかも実際に会談が行われたのは20日で、報道発表されたのはアサドの帰国後という異例のアレンジ。まさに衝撃の電撃訪問でした。
■US, Russia, Saudi and Turkey to meet to discuss Syria(10月21日付Aljazeera記事)
さらに、米国、ロシア、サウジ、トルコの4か国の外相が23日にウィーンで会談を行い、シリアの政権移行について話し合うという流れになりました(米国務省報道官ブリーフィングも参照)。
これまで何度か述べたとおり、アサド政権の存続は、米国、サウジ、トルコにとっては絶対に受け入れがたい選択肢でした。しかし、最近になって、米国もトルコも、アサドの暫定統治を含んだ「移行期間」を検討する、ということを述べるようになっています。
ロシアの空爆以降、シリアをめぐる状況は激しく動いており、なにやら潮目が変わったというか、アサド政権の暫定統治を認める方向に流れが形成されつつある印象を受けます。もしかしたら、間もなく行われる4か国外相会談の結果次第では、アサドを支援して暫定統治を回復させるという、イラン核合意同様に、一昔前には考えられなかったシナリオが一気に現実味を帯びるのかもしれません。
このような流れを作り出した首謀者は、間違いなくロシアです。最近のロシアのシリア・イラン・イラクに対する影響力の拡大は、シリアとイラクにおいて存在感を見せることができない米国を出し抜くものであり、外交巧者ぶりを見せつけている感があります。
今回の4か国外相会談についていえば、参加する米国、ロシア、サウジ、トルコは、いずれもシリアに深く関与している重要なプレイヤーですが、この組み合わせだと、アサドの即時退陣を求める米・サウジ・トルコに対しロシアが対峙するという構図になります。このため、ロシアはイランを会談に加えることを主張しました(結果的には通りませんでした)。以前お伝えした「ロシアとイランの連携」の背景にかんがみれば、ロシアのリクエストは興味深く、実現すれば非常に面白かったと思います。
さらにキーとなるプレイヤーを加えるとすればイラクでしょう。これも「ロシアとイランの連携」でお伝えしたとおり、ロシア・イラン・イラクは情報共有に見られるように連携を深めており、イラクは、ロシアのシリア領内の空爆を評価し、自国領域内の「イスラム国」にも空爆を行って欲しいと述べており、軍事協力まで進める可能性も指摘されています。
アサドの暫定統治を含んだ政権移行は、シリアひいては中東の安定につながる可能性があり、それ以外の選択肢が見えてこない現状においては、その実現可能性が高まることは望ましいといえます(実際にそう述べる米国の識者は結構います)。しかし、これはまさにロシアの描いたビジョンのとおり物事が進むことを意味しており、ロシアとイランの中東におけるプレゼンスは圧倒的に高まることになります。
これを米国、サウジ、トルコがどう受け止め、対応するのか。今の時点ではまだ予測困難ですが、まずは4か国外相会談がその手がかりの一歩になりそうです。
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2 comments on “アサドのロシア電撃訪問と4か国外相会談”
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プーチンの目つき・・わるかったな・・
アサド・・薬・・で抑えてるんだろうな・・あれだけ・・国民を殺し・・今なお・・ドラム缶爆弾投下中・・
政治力学・・効きにくいのでは・・露西亜に亡命の可能性も・・
プーチンが軍を投入・・アサド軍崩壊寸前故との・・指摘もある・・
戦闘は何が起るか・・判らない・・ロシア軍が無傷で終わるとは思えない・・・
なんだやっぱりアサドで良かったんじゃん。
結構いい人そうに見えるし(偏見)。
一連の内乱で誰も得してないように見えるんですけど、
軍需産業とか英国とかが仕組んでいるんですかね?