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2015/09/28 00:00  | 中国 |  コメント(3)

ローマ法王と習近平国家主席の訪米


ローマ法王、初の訪米 大統領らが歓迎(9月23日付CNN記事)

ローマ法王フランシスコの初訪米、そして史上初の上下両院合同会議での演説は、日本ではあまり取り上げられませんが、米国では大変なビッグニュースになっています。後述する習近平国家主席の訪米が完全にかすんでしまうほどのインパクトです。

法王フランシスコは、前法王の生前退位からの就任、イタリア系アルゼンチン人というバックグラウンド、そして精力的な外交活動により大きな注目を集めてきました。今回の訪米前にはキューバに立ち寄っていますが、その背景には米・キューバの国交正常化の仲介の役割を果たしたことがあります。

ローマ法王の世界的な影響力は、キリスト教と縁遠い日本人の想像をはるかに超えるものがありますが、特に現法王フランシスコの活躍は目覚ましく、国際政治・外交上でも極めて重要な役割を担うアクターといっても過言ではありません。

米議会での演説ですが、注目されたのはやはり難民問題です。世界をゆるがすタイムリーなトピックであることはもちろん、イタリア系移民という法王のバックグラウンド、現在の米大統領選で移民政策が大きな焦点となっていることからも、意義深いアジェンダと言えます。

ところで、カトリックというと、米国では、旧世界、権威主義、最近では司祭による児童への性的虐待問題もあって、暗いイメージがありましたが(アイルランド系カトリックのジョン・F・ケネディが大統領になったのは大事件と言われた)、いまや米国のカトリック教徒は、全米の人口の約22%(7,000万人)、連邦議会議員の約35%を占めます。

議会の演説では、法王の後ろにジョセフ・バイデン副大統領とジョン・ベイナー下院議長が座っていますが、二人ともカトリック(アイルランド系)です。ベイナー下院議長が号泣していますが、これはいつものことですね。4月の安倍総理の演説の際にもハンカチで顔を覆っていたのが記憶に新しいと思います。

また、議会では、ナンシー・ペローシ下院院内総務もカトリック(イタリア系)。大統領選候補者では、リック・サントラム(イタリア系)、マルコ・ルビオ(キューバ系)がカトリックです。米国最大のマイノリティとして拡大を続けるヒスパニックの多くがカトリックである点も大きいと言えます。

ベイナー議長といえば、突然の辞任のニュースがあり、ワシントンDCに激震が走っています。

ベイナー米下院議長が辞任表明(10月30日付ウォールストリート・ジャーナル記事)

オバマ大統領をのけ者にしてネタニヤフ首相をワシントンDCに呼んだり、物議を醸す行動も目立った人ですが、これほどの大物が突然に引退するというのは米政界においてはかなりの衝撃です。後任のケビン・マッカシーは社交的な人柄から適任と言われていますが、党のまとまりが弱くなることが懸念されています。

さて、一方で習近平の訪米。

米中首脳が会談、サイバー対策で「相互理解」(9月25日付ロイター記事)

こちらはサイバー攻撃、南シナ海、人民元と懸案尽くしということで、既に多くの報道が出ていますし、私からあまり付け加えることもないのですが、一つ強調するとすれば、中国のサイバー攻撃に対する米国の嫌悪感は相当なものです。習近平は、ワシントンに先駆けてシアトルを訪問、旅客機を爆買いした後、IT会議を主催し、シリコンバレーの企業を個別に取り込むというアプローチに出ましたが、これは政府間でのサイバー攻撃の問題はさておき、ビジネス界とは良い関係をきちんと築きますよということで、米政府にとっては相当に頭にくる話でしょうね。

ところで、シアトルでの習近平のスピーチが出ていたので読んでみました。これがなかなか面白かったです。まず最初に、自分は1960年代に農村に下放され、7年間も農民として苦しい生活を送った、だから庶民の苦しみをよく知っている、今中国は庶民の生活が豊かになっている、このように中国の人々が幸せになることが「中国夢(Chinese dream)」なんだと言ってます。

太子党・紅二代のトップである習近平がこういう打ち出しをするのは意外ですし、「中国夢」の使い方も、あれそうだっけ?という感じで、意表をつかれました。なんとなくアメリカン・ドリームに合わせた感じもします。

次にシアトルといえば映画『めぐり逢えたら(Sleepless in Seattle)』だとか、自分の腐敗撲滅に向けた取組みは権力闘争ではない・・TVドラマ『ハウス・オブ・カード』とは違いますよ(笑)とか、やたらにポップなたとえが目を引きます。これもイメージ戦略なんでしょうか。

ちなみに『ハウス・オブ・カード』は私も見ています。あのデビッド・フィンチャーが制作総指揮ということで、私もまだ最初の方なのですが、これが滅茶苦茶に面白い。どんどんとんでもない展開になって、止まりません。ケビン・スペイシー演じる主人公は、ちょうど上記のベイナー下院議長に似た役回りを担っています。米国の議会政治、「ベルトウェイ」の雰囲気を知る上でも参考になるので、興味がある人にはお勧めの作品です。

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3 comments on “ローマ法王と習近平国家主席の訪米
  1. ペルドン より:
    その他に

    環境問題も・・
    大きかったですね・・

    法皇選出の際・・選んだ枢機卿たちに・・
    「ワタシを選んだのは神はお許しになられるだろう(私は許さない)」・・
    ジョークが輝いていましたね。
    カトリック史上指折りの方を観ているのかもしれない。

    習主席・・デカイがま口見せびらかせたが・・貧相に見えましたね・・

    「ハウス・オブ・カード」
    ぼくも大好きでしたが・・残念ながら・・終わりに近づけば近づく程・・急ぎ過ぎだなって・・感想。

    「ホーム・ランド」
    も中々の物・・シーズン4・・早く出ないかなぁ・・

    宿題も積み重なってる様子・・早く模範解答出ないかなぁ・・
    皆さん・・首・・伸ばしてますぜ・・

    猫・・ぐつちーとこに夜陰に乗じて・・捨ててきたら・・・(笑

  2. JFKD より:
    移民国家合衆国

    ベイナー議長泣くのはいつもの事には笑ってしまいました。米国の徳光アナか。得意技は身を助くと思っていたら、引退とは、もしかしてティーパーティーと刺し違えたんでしょうか。彼らの病巣はとんでもなく恐ろしくそのうち問題点を指摘してください。カトリックの連邦議員が35%にも驚きです。人口分布として、アイルランド系、ユダヤ系、東欧系、ヒスパニック、黒人、中国系の割合はどのくらいなんでしょう。(JDさんの好みを隠せない)ペロシ・ヒラリー・フィオリーナらのイタリア系はごく少数で、ドイツ系は同じゲルマンであまり区別されていないしドイツ系ユダヤ人の方が目立つという感じなのでしょうか。今世紀の終りにはどんな割合になっているんでしょうね。それに政教分離という建前ですが、米国のプロテスタントには例の近代国家プロジェクトから逃れてきた原始性、原理主義が感じられますがそのうち解説してください。

  3. JD より:
    JFKDさん

    最後の質問は、ちょうど反知性主義の話を書こうと思っていたので、そこで扱ってみます。

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