2022/10/24 00:00 | 今週の動き | コメント(0)
今週の動き(10/23~29)中国共産党大会、米高官の台湾発言、ロシアのウクライナ侵攻、トラス辞任、メローニ新政権
日本シリーズが始まりました。実力と魅力を兼ね備えたチームの対決、見応えのある試合を楽しんでいます。今年はネットでも民放の無料動画で見ることができて、仕事をしながら見ることもできるので、とても便利ですね。
今週水曜は秋のオンラインセミナーです。米国の中間選挙と中国共産党大会を主なテーマとする予定ですが、ウクライナ情勢も取り上げますし、ご質問があれば、それ以外のテーマについても何でもお答えするつもりです(意見交換も自由です)。よろしければぜひ気軽にご参加下さい。
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先週の動き
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10/16(日)
・中国共産党大会(北京、~22日)
・イランがロシアにドローンや弾道ミサイルを供給することで合意したとワシントン・ポストが報道
・英国のマンチェスターの中国総領事館で民主活動家への暴行事件
10/17(月)
・ロシア国防省がウクライナ軍やエネルギー関連施設に対して精密誘導ミサイルによる大規模な攻撃を実施したと発表
・ウクライナのポドリャク大統領府顧問がイラン製のドローンがロシアの攻撃に使われているとしてイランを非難
・ウクライナのザポリージャ原子力発電所が外部電源から切り離されたとエネルゴアトムが発表
・ロシアのクラスノダール地方のエイスクでロシア軍の戦闘機が訓練中に集合住宅の敷地に墜落
・ロシアとウクライナが218人の捕虜交換を実施
・モスクワでの部分動員令にもとづく予備役の招集が終了したとソビャーニン市長が発表
・NATOの核抑止の定期演習(~30日)
・EU外相理事会(ウクライナ軍向けの大規模な訓練の提供、イランへの制裁で合意)(ルクセンブルク)
・ブリンケン国務長官が中国は台湾統一を以前よりも早い時期に実現しようとしていると発言
・英国のハント財務相が大規模減税策のほぼ全ての撤回を表明(トラス首相は誤りを認め謝罪したが辞任は否定)
・イングランド銀行が9月下旬から実施してきた国債購入策は予定通り10月14日に終了したと発表
・米保守系SNS「パーラー」をイェ(カニエ・ウエスト)が買収すると親会社のパールメント・テクノロジーズが発表
10/18(火)
・ウクライナのゼレンスキー大統領が10月10日からのロシア軍による攻撃で国内の発電所の3割が破壊されたとツイート
・ロシア軍のスロビキン司令官がウクライナのヘルソン州はウクライナ軍の反攻により非常に困難な状況にあると表明
・ウクライナのヘルソン州の親ロシア派の占領当局がドニエプル川西岸の一部住民の「退避」を決定したと発表
・IAEAのグロッシ事務局長がウクライナのザポリージャ原子力発電所でロシアに拘束された幹部の解放と外部電源の復旧を確認したと発表
・イランがロシアへのドローンの供与を否定
・米国が戦略石油備蓄を12月に1,500万バレル放出すると発表
・欧州委員会がエネルギー価格対策案(ガス価格(オランダTTF)への「動的」上限の設定、ガスの共同購入)を発表
・バージニア州アレクサンドリアの連邦裁判所の陪審がトランプ前大統領とロシアの関係について述べたスティール文書の情報提供者であるダンチェンコの虚偽供述の容疑について無罪評決
・中国が22年7-9月期の実質GDP成長率の発表を延期
・北朝鮮が黄海と日本海に向けて砲弾250発を発射したと韓国軍合同参謀本部が発表
・南太平洋国防相会合(トンガ)
・豪州がモリソン前政権による西エルサレムのイスラエル首都認定の取消しを発表
・スウェーデンでクリステション新首相が就任
・マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)会合(パリ、~21日)
10/19(水)
・ロシアのプーチン大統領がロシア全土に警戒態勢を強める大統領令とウクライナの「併合」4州に戒厳令を導入する大統領令に署名
・ロシアのペスコフ大統領府報道官がウクライナの「併合」した4州は「核の傘」に入ることを示唆
・ウクライナのゼレンスキー大統領がイラン製のドローンがロシアの攻撃に使われているとしてイランを非難
・米海軍のギルデイ作戦部長が中国による台湾侵攻は23年までに起きる可能性を排除できないと発言
・APEC財務相会合(バンコク、~21日)
・香港の李家超(ジョン・リー)行政長官が施政方針演説(香港)
・北朝鮮が黄海と日本海に向けて砲弾100発を発射したと韓国軍合同参謀本部が発表
・英国のブレーバーマン内相が職務上の技術的なミスを理由に辞任を表明
・ミャンマーのインセイン刑務所で爆発
10/20(木)
・ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアはヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムの爆破を計画しているとして非難
・米NSCのカービー戦略広報調整官がイラン軍はクリミア半島に駐留しロシア軍のドローンによるウクライナ攻撃を支援していると発言
・ウクライナのクレバ外相とイスラエルのラピド首相が電話会談
・EU首脳会議(イランのロシアへのドローンの供与への関与を理由に3個人と1団体に制裁を課すことで合意)(ブリュッセル、~21日)
・フランス・スペイン・ポルトガル首脳会談(バルセロナとマルセイユを結ぶ海底パイプラインの新設等で合意)(同)
・英国のトラス首相が辞意を表明
・トルコ中銀が政策金利を引き下げ(12→10.5%)
・日米韓参謀総長級会談(ワシントンDC)
10/21(金)
・米ロ国防相電話会談
・ロシア国防省がロシア空軍によるウクライナのヘルソン州の武器庫の破壊を発表(ゼレンスキー大統領が主張するダム爆破計画は否定)
・ベラルーシのルカシェンコ大統領がロシアのウクライナ侵攻に参戦しない意向を表明
・ウクライナのゼレンスキー大統領が穀物輸出に対するロシアの妨害を非難
・EU首脳会議最終日(エネルギー価格対策(ガス価格(オランダTTF)への「動的」上限の設定、ガスの共同購入)、ウクライナへの180億ユーロの支援で合意、中国への経済依存に懸念)(ブリュッセル)
・ドイツのショルツ首相が11月上旬に中国を訪問すると表明
・イタリアのマッタレッラ大統領が第1党「イタリアの同胞」(FDI)のメローニ党首を次期首相候補に指名
・米連邦議会襲撃事件の下院特別調査委員会がトランプ前大統領に証言を求める召喚状を発出したと発表
・米FBIによるマール・ア・ラーゴの押収物にイランや中国に関する機密性の高い情報が含まれていたとワシントン・ポストが報道
・ワシントンDCの連邦地裁がバノン元首席戦略官に議会侮辱罪の禁錮4月と罰金6,500ドルの量刑判決
・マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)会合最終日(ミャンマーをブラックリストに指定)(パリ)
10/22(土)
・中国共産党大会閉幕(北京)
・バチカン(ローマ教皇庁)が中国との司教任命権に関する暫定合意の2年延長を発表
・ロシア軍がウクライナ各地のインフラにミサイルとドローンによる攻撃
・ウクライナのヘルソン州の親ロシア派勢力の占領当局がドニエプル川西岸の一部住民の「退避」を呼びかけ
・韓国検察が20年9月に北朝鮮軍が黄海で韓国の公務員男性を射殺した事件の証拠を隠したとして徐旭前国防相らを職権乱用等の容疑で逮捕
・イタリアでメローニ新首相が就任
・日豪首脳会談(パース)
●中国共産党大会
中国共産党の第20回全国代表大会が開幕し、初日に習近平総書記が党中央委員会を代表して報告を行いました。習近平は報告書の簡略版を読み上げ、前回の17年大会(3時間超)と比べると、約1時間45分というはるかに短い時間で終了しました。
党大会は、最終日に党規約の改正方針を決議、7日間の日程を終えて閉幕。その後、党中央委員205人の名簿が発表されました。「七上八下」の不文律を破り、李克強と汪洋が67歳にもかかわらず引退、王毅は69歳、張又侠は72歳にもかかわらず再任されるという大きなサプライズがありました(楊潔チ(72)、劉鶴(70)は退任)。
また閉幕式において、胡錦濤前国家主席が途中退出するというハプニングがありました。嫌がる胡錦濤を係員が強引に連れ出そうとしたように見えないこともなく、極めて不可解で異様な光景でした。
党から公式な説明はなく、国内のネットでは胡錦濤に関する投稿や検索が制限された一方、ツイッターでは新華社が「体調不良で退出」と投稿し、これをテンプレにした投稿が数多く見られました。ツイッターは国内では見られないので、おそらく国内では沈黙を貫きながら、国外では不都合な憶測の打ち消しを図ったのでしょう。
新たに選出された中央委員たちは、昨日、第1回全体会合(1中全会)を開催し、政治局委員(24人)、政治局常務委員(7人)、総書記、中央軍事委員を選出しました。常務委員は以下のとおりです(「*」は新任、肩書は新体制で予想される新たな職務(「※」は未定なので推測)と現在の職務)。
1 習近平(Xi Jinping)(69) 総書記(変わらず)
2 李強(Li Qiang)(63)* 国務院総理※ ← 上海市党委書紀
3 趙楽際(Zhao Leji)(65) 全人代常務委員長※ ← 党中央規律検査委書記
4 王滬寧(Wang Huning)(67) 全国政協主席※ ← 党中央書記処書記
5 蔡奇(Cai Qi)(66)* 党中央書記処書記 ← 北京市党委書紀
6 丁薛祥(Ding Xuexiang)(60)* 国務院常務副総理※ ← 党中央弁公庁主任
7 李希(Li Xi)(66)* 党中央規律検査委書記 ← 広東省党委書記
国務院総理(首相)候補だった胡春華は常務委員に入れなかったどころか、政治局委員からも外されました。中央軍事委員会副主席は張又侠(前出)と何衛東(台湾を管轄する東部戦区の司令官)でした。
文字どおり「習一強」を完璧なものとする、徹底的な人事でした。李克強と汪洋の引退が決まった時点で、この結果はある程度予想されたのですが、それにしてもここまでやるかと、衝撃が走りました。
今回の党大会の評価と今後の展望について、明日解説します。
●ブリンケンと海軍作戦部長の台湾発言
中国共産党大会の初日に行われた習近平総書記の活動報告では、台湾について、「最大の誠意と努力で平和的な統一を堅持するが、決して武力行使を放棄しない」と述べたことが注目を集めました。
その翌日、ブリンケン国務長官がスタンフォード大学のフーバー研究所での講演で、中国の台湾統一について質問されると、「中国は以前に比べてかなり早い時間軸で(統一を)目指すと決意している」「現状維持は受け入れられないという根本的な決断」をしたと述べました。
さらにこの後、米海軍作戦本部長のマイケル・ギルデイ大将がアトランティック・カウンシルでの会合で、中国による台湾侵攻は今年中か来年中にも起きる可能性があるとの見方を示しました。
党大会の開幕に続いて台湾侵攻をめぐり米国の高官の発言が相次いだことは波紋を呼び、専門家の間でも議論が起こりました。米高官の一連の言動が意味するものについてコメントします(※メルマガで解説)。
●ロシアのウクライナ侵攻
ロシア軍によるウクライナ侵攻は、本日(10月24日)で245日目を迎えました。
東部のハルキウ州とルハンスク州ではウクライナ軍が反攻を続けていますが、ロシア軍は防御を固めており、大きな前進は見られないようです。もっともロシア軍も、これら2州での反撃とドネツク州のバフムト方面での侵攻は成果を上げておらず、戦線に大きな変化はありません。
一方、南部のヘルソン州ではウクライナ軍の反攻が成果を上げ、ウクライナは、この1週間で新たに13の集落を奪還し、ドニエプル川西岸のベリスラフ市では親ロシア派の占領当局の活動が停止したと発表しました。ロシア軍のスロビキン司令官は、ヘルソンは非常に困難な状況にあるとして、苦境を認める異例の発言を行い、親ロシア派の占領当局はヘルソン市を含むドニエプル川西岸から住民5~6万人の「退避」を呼びかけました。米戦争研究所(ISW)はロシア軍はヘルソン州から撤退を開始したとの分析を述べています。
そうした中で、ゼレンスキー大統領は、ロシア軍がヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムの爆破を計画していると主張。これに対し、ロシアは「根拠がない」と否定した上で、ウクライナがダム攻撃を計画していると主張し、相互に非難を応酬する状況になりました。
ロシア軍は、ウクライナ各地のエネルギーインフラを標的にしてミサイルとドローンによる攻撃を続けています。ゼレンスキーは、イラン製のドローンが攻撃に使われているとしてイランを非難し、米国も、NSCのカービー戦略広報調整官がクリミア半島にイラン軍が駐留し、ロシア軍のドローン攻撃を支援していると発言しました。ロシアとイランは否定しましたが、EUもイランを非難し、ドローン攻撃への関与を理由に制裁を課すと発表。またイスラエルの閣僚は、イランを非難した上で、ウクライナに軍事支援を行う可能性を示唆しました。
またプーチン大統領は、ロシア全土に警戒態勢を強める大統領令と、ウクライナの「併合」した4州に戒厳令を導入する大統領令に署名しました。警戒態勢の強化によって地方政府の行政権限は強化され、ウクライナと隣接する州においては経済動員を行うことも可能になります。
こうした最新の状況を踏まえ、現状と展望について解説します(※メルマガで解説)。
●英国のトラス首相の辞意表明
英国のトラス首相が「保守党から選出された任務を果たすことができない」として辞任を表明しました。在任期間はわずか44日という歴代最短の政権となりました。トラスは党内での支持を失っており、遠からず退陣に追い込まれることは前回の記事(以下のリンク参照)で指摘していましたが、それにしても急転直下の展開でした。
・「英国のトラス政権の混乱」(10/18)
保守党の議員委員会「1922年委員会」のブレイディ委員長は28日までに新党首を選出すると表明。そして立候補には党所属の下院議員357人のうち100人の推薦を必要とするルールが定められました。つまり最大でも3人の争いに絞られるということです。
有力候補とみられているのは、前回の党首選に出馬したリシ・スナク元財務相とペニー・モーダント下院院内総務、それにボリス・ジョンソン元首相です。このうちモーダントはいち早く出馬を表明。ボリスは休暇でジャマイカ共和国に滞在していましたが、予定を切り上げて帰国。現時点では、スナクが120人、ボリスが50人、モーダントが20人程度の議員の支持を得たと報じられています。
トラスの辞任と党首選の展望について解説します(※メルマガで解説)。
●イタリアのメローニ新政権の発足
9月のイタリア上下院の総選挙で第1党になった「イタリアの同胞(FDI)」のジョルジア・メローニ党首が首相に就任し、右派政党の「同盟(Lega)」と「フォルツァ・イタリア」との連立政権を発足させました。
政権がなかなか発足しないので不安だとの書き込みを見かけましたが、これは、以下の記事で述べたとおり、議会や大統領との協議の手続きから想定されていたスケジュールです。もっとも、首相指名に至るまでの間に、右派連合内では早くもゴタゴタが生じました。
・「イタリア総選挙」(10/3)
これまでのところ、メローニ新政権の発足と今後の展望は、上記記事で示した見通しにおおむね沿っていると考えられます。しかし政権発足とそれまでの経緯を踏まえ、あらためて説明を補足します(※メルマガで解説)。
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今週の動き
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(※1中全会、英国の保守党の党首選出など。メルマガで解説。)
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あとがき
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■ 「国家の戦争」から「個人の戦争」へ プーチン氏は変化を見落とした(10月18日付朝日新聞)
読み応えのあるインタビュー記事でした。世界的に世論が被害者と人権の問題に関心を持つようになった理由について、「現場の映像が見えるようになったことが大きな要因」との指摘がありますが、今回の戦争が「SNSの戦争」であることは、私もウクライナ侵攻が起こった直後に配信したメルマガ第626号(2/28)のあとがきで指摘していました。
湾岸戦争のときも、戦争の映像は配信されましたが、それは米軍と一部のメディアによって、衛星や航空を使って撮影されたものでした。このため衝撃的ではありましたが、至近距離での凄惨な現場の光景はなく、「テレビゲーム」のようだとも評されました。
ところが今回の戦争では、同じ映像の配信であっても、まったく様相が異なりました。市民一人一人がスマホで撮影し、検閲などされることもなく、ネット上で各人の思うがままに発信されたからです。これだけ戦争の生々しい実態が可視化され、世界中の人たちに瞬時に共有されたのは、人類史上初めてのことでしょう・・(※ここから先はメルマガをご覧下さい)。
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