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2022/02/28 00:00  | 今週の動き |  コメント(2)

今週の動き(2/27~3/5)ロシアのウクライナ侵攻


戦争が始まってしまいました。21世紀に、それも欧州で、民主国家が権威主義国家から侵攻を受ける光景を見ることになろうとは、衝撃です。

湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争はありましたが、これらはいずれも、米国というリベラルな秩序を信奉する国家が、その価値観とルールに基づき、相応の(論争もありますが)国際法上の手続きを踏んで行った戦争でした。しかし今回の侵攻は、主権国家が他国に対しむきだしの力をぶつけ、体制を変えようとする行為であり、2つの世界大戦を経て積み上げられてきた国際秩序を根底から揺るがすものです。

世界のイメージは大きく変わりました。まるで19世紀の古典的なパワーポリティクスの時代に戻ってしまったかのような感覚もおぼえます。我々が当然のものと考えていた国際秩序は過去のものになり、新たなフェーズに突入したと言っても過言ではないように思います。

こうした世界観の変化は、欧州にとどまるものではなく、アジアにも及びます。戦争は起こり得る。我々も、そうした認識と覚悟をしなければならない時代に入ったということです。

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先週の動き
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2/20(日)
・仏ロ、仏ウクライナ、仏米、仏ロ(2回目)首脳電話会談
・ロシアとベラルーシが合同軍事演習「同盟の決意2022」の延長を発表
・北京五輪閉幕式
・トランプ前大統領のSNS「Truth Social」がアップルストアで公開
・英国のエリザベス女王の新型コロナウイルス感染が発表
・豪州のモリソン首相が中国軍の艦船による豪軍の哨戒機へのレーザー照射を脅迫行為として非難

2/21(月)
・ロシアのプーチン大統領が安全保障会議を開催、ウクライナの親ロシア派武装勢力の支配地域の独立を承認、ロシア軍の派遣を決定、テレビ演説、親ロシア派武装勢力との相互援助条約に署名(米国は親ロシア派武装勢力の支配地域への制裁を発表、ゼレンスキー大統領は国民向け演説)
・米・ウクライナ首脳電話会談
・米中外相電話会談
・仏ロ外相電話会談
・国連安保理がウクライナ情勢に関する緊急会合を開催(NY)
・EU外相理事会(ブリュッセル)
・米大統領の日
・ニクソン大統領の訪中から50年
・中国外交部が米政府の承認のもとで台湾に武器売却を決めたことを理由にロッキード・マーチンとレイセオン・テクノロジーズに制裁を科すと発表
・台湾が11年の東京電力福島第1原発事故後から導入された福島県を含む5県産の食品輸入の禁止の解除を発表
・イランのライーシ大統領がカタールを訪問

2/22(火)
・バイデン大統領がウクライナにおけるロシアの行動への対応に関する演説(ロシアの行動をウクライナ侵攻と認定、ロシア制裁第1弾、バルト3国の防衛強化を発表)
・ブリンケン国務長官が2月24日に予定していたロシアのラブロフ外相との会談の中止を発表(サキ大統領補佐官が米ロ首脳会談は計画にないと発言)
・米・ウクライナ外相会談(ワシントンDC)
・ドイツのショルツ首相がノルド・ストリーム2の認可手続の停止を発表
・EU臨時外相会合(ロシア制裁で合意)(パリ)
・英国とカナダがロシア制裁を発表
・G7外相電話会合
・ロシア・アゼルバイジャン首脳会談(モスクワ)
・ジョージア州の連邦地裁の陪審が黒人男性アマード・アーベリー氏の射殺事件の3人の白人の被告人に有罪評決
・中国当局が2月21日に北京で在中国日本大使館の館員を一時拘束したと日本政府が発表

2/23(水)
・バイデン大統領がノルド・ストリーム2の運営会社と同社幹部への制裁を発表
・米司法省のオルセン次官補が「中国イニシアチブ」の終了を表明
・香港がRCEP加盟申請を発表
・ロシアの祖国防衛の日(プーチン大統領が演説)
・ロシア・トルコ首脳電話会談
・豪州、日本、EUがロシア制裁を発表
・仏・ウクライナ首脳電話会談
・ウクライナ政府や議会がサイバー攻撃を受けたと情報通信当局が発表
・EUとインド太平洋諸国の外相級会合(パリ)

2/24(木)
・ウクライナのゼレンスキー大統領が演説(ロシアがウクライナ攻撃を承認した、プーチン大統領は会談の要請に返答していないと発言)
・ウクライナが非常事態宣言
・ロシアのプーチン大統領がウクライナのドンバスで特別軍事作戦の開始を発表、ロシア軍がウクライナ攻撃を開始(継続中)
・ウクライナのゼレンスキー大統領が演説
・ウクライナが戒厳令を発令
・ウクライナが総動員令を発令
・米・ウクライナ首脳電話会談
・バイデン大統領がロシアのウクライナ攻撃に関する演説
・米国がロシアへのハイテク製品の輸出規制を発表
・G7首脳サミット(オンライン)
・英国、カナダ、日本がロシア制裁を発表
・仏ロ首脳電話会談
・中ロ外相電話会談
・印ロ首脳電話会談
・ロシア・パキスタン首脳会談(モスクワ)
・EU臨時首脳会議(ロシア制裁で合意)(ブリュッセル)
・米国がサプライチェーン強化戦略に関する報告書を発表

2/25(金)
・ウクライナのゼレンスキー大統領が演説(プーチン大統領に停戦交渉を呼びかけ)
・ロシアのプーチン大統領が演説(ウクライナ軍に政権転覆を呼びかけ)
・米・ウクライナ首脳電話会談
・中ロ首脳電話会談
・NATO首脳会議(オンライン)
・米財務省がプーチン大統領とラブロフ外相への制裁を発表
・EU外相理事会(プーチン大統領とラブロフ外相への制裁で合意)(ブリュッセル)
・豪州とNZがロシア制裁を発表
・中仏、中・EU、中英外相電話会談
・国連安保理がロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案を否決(ロシアが拒否権を行使、中国、インド、UAEは棄権)
・バイデン大統領が連邦最高裁判事にケタンジ・ブラウン・ジャクソン連邦控訴裁判事を指名
・ユーロ圏財務相会合(パリ)

2/26(土)
・ロシアのペスコフ大統領報道官がウクライナは停戦交渉を拒否したと発言
・米、欧州委員会、英、独、仏、イタリア、カナダがロシア制裁の共同声明を発表
・米欧がウクライナへの軍事支援の強化を発表(ドイツは対戦車兵器とスティンガー・ミサイルの提供を発表)
・英・ウクライナ、イタリア・ウクライナ首脳電話会談
・トランプ前大統領が保守政治行動会議(CPAC)で演説(フロリダ州オーランド)

●ロシアのウクライナ侵攻

2月21日、プーチン大統領は、親ロシア派武装勢力が実効支配するウクライナ東部(ドンバス)の「ドネツク人民共和国」(自称)と「ルガンスク人民共和国」(同)の独立を承認する大統領令に署名しました。そして「平和維持」のために軍をこの地域に派遣すると表明。これによりロシア軍が公式に駐留することが決定し、米国はこれを「侵攻」とみなし、制裁を発表しました。

そして24日、プーチンは、親ロシア派の住民を守るためとして、ウクライナにおいて「特別軍事作戦」を行うと発表しました。テレビ演説では、ウクライナの「非軍事化」と「非ナチス化」を目指し、「一般市民に対して血なまぐさい罪を犯した者たちを裁く」と表明。ウクライナに対する明確な「宣戦布告」でした。

ロシア軍はウクライナの都市に向けてミサイル攻撃を開始。ロシア国防省は、誘導爆弾で空港などウクライナ軍の施設を攻撃、防空網を制圧したと発表。26日付けの発表によれば、ウクライナの施設821か所を破壊、14の飛行場などを破壊し、戦闘機7機、ヘリコプター7機を撃墜したとのこと。攻撃対象は軍事施設に限定され、住宅などへの攻撃はしていないと説明しました。

一方、ウクライナ政府は、キエフ、オデッサなど主要都市へのミサイル攻撃と同時に、ウクライナの北部、東部、南部の3方向からロシア軍の地上部隊の攻撃を受けたと発表。英国防省は、地図で衝突の状況を伝えています。

北部では、ロシア軍はベラルーシからキエフに向かって進軍。キエフから北130キロのチェルノブイリを制圧。キエフ近郊のホストメル空港では、ロシア軍のヘリコプターなどがパラシュート部隊を降下させて制圧したとのこと。北東部の第2の都市ハリコフでも、激しい戦闘が継続、市街戦にも及んでいます。

東部では、親ロシア派武装勢力の部隊がロシア軍の支援を受け、ドネツクルガンスク(都市)に進軍し、複数の村や拠点を占拠。親ロシア派は、もともとドネツク、ルガンスク両州の約半分を支配していましたが、両州全体に支配領域を拡大しようとしています。

南部では、クリミア半島からロシア軍がウクライナに上陸。ロシア国防省はヘルソン州の一部を掌握したと発表しました。さらに南東部のメリトポリに進出(ロシアは制圧したと発表)。さらに東進し、東部側で侵攻しているマリウポリと接続することを狙っているようです。

ウクライナは、26日、ロシア軍の侵攻でこれまでに子供を含む198人が死亡、1,115人が負傷したと発表。ロシア軍の3,500人が死亡し、200人が捕虜したと発表しました(ロシア側は死傷者を発表せず)。また、ロシア軍がキエフ中心部にも攻勢をかけ、戦闘が発生したが、撃退したと発表しています。

ロシアが全面侵攻に及び、ウクライナがこれを迎え撃ったことにより、紛れもない主権国家同士の直接衝突、文字どおりの「戦争」に突入しました。想定されたシナリオの一つだったとはいえ、冒頭部分で述べたとおり、21世紀にこんな光景を見ることになるとは、少し前には想像もできなかったことです。

米国、欧州、カナダ、豪州、日本らは相次いでロシアを非難し、制裁を発動しました。米国は、(1)ロシアの主要金融機関、国債取引の禁止の拡大、個人制裁、ノルド・ストリーム2(NS2)制裁、(2)金融機関の追加制裁、国有企業の資金調達規制、個人制裁、輸出規制、(3)プーチンへの制裁などの後、EUらとともに(4)ロシアの銀行のSWIFT排除、ロシア中銀の外貨準備の利用の制限、ロシア富裕層の市民権獲得の制限を発表し、一気に制裁を強化。ドイツもいち早くNS2の認可手続の停止を発表しました。

さらに米欧はウクライナへの軍事支援を強化。ドイツもこれまでの方針を変えて、対戦車兵器とスティンガー・ミサイルの提供に踏み切りました。

ロシアの侵攻に支持を表明した国はミャンマーなどわずかであり、西側諸国をはじめとする多数の国は激しく非難、大半の国は平和的解決を望むと表明しています。中国も、ロシアを非難する国連安保理決議では「棄権」にとどめました。

習近平国家主席も、プーチンとの電話会談で、ロシアを非難することはなかったものの、支持も表明せず、「冷戦時代の思考は捨て、全ての国の安全保障への妥当な懸念を尊重し、協議を通じて均衡のとれた効果的かつ持続的な欧州安保メカニズムを構築すべき」と呼びかけました。

世界中でロシアに反対する市民の声が上がっています。欧米や(ウクライナと同じような状況にある)ジョージアはもちろん、ロシア国内でも各地で数千人規模のデモが行われています。著名スポーツ選手や国際政治学者も、拘束される危険があるにもかかわらず、批判の声を上げています。

状況は刻一刻と変化しており、流動的ですが、今回の全面侵攻の意義と今後の展望について、現時点での分析を述べます。また、制裁や経済への影響については明日、別稿で解説します。

※ここから先はメルマガで解説します。主なポイントは以下のとおりです。

(全面侵攻)
(プーチンの思考)
(戦況)
(今後の展望)

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今週の動き
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(※メルマガで解説。)

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あとがき
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湾岸戦争は史上初のテレビで見る戦争でしたが、ウクライナ戦争はネットで見る戦争になりました。SNSによって、あらゆる人々がリアルタイムで生の情報を流しています。それを、我々は瞬時に確認し、共有することができます。

国家にとっては、こうした情報は「武器」になります。自らに有利な情報を積極的に発信・拡散することで、相手よりも優位に立つことを狙うわけですが、そこには虚偽の情報も紛れ込みます。ロシアは、そうした虚偽情報を自ら作り出し、積極的に拡散することに誰よりも長けています。

そうしたフェイクニュースによる情報操作(ディスインフォーメーション)は、本メルマガも伝えてきたとおり、米国の大統領選などにおいて数限りなく見られましたが、その威力は、今回のような戦争において遺憾なく発揮されます。「ゼレンスキーはキエフから逃亡した」といったデマが典型例ですが、各地で見られる攻撃や軍の動員の動画などもフェイクが紛れ込んでいるので、要注意です。ロシアに惑わされないよう、しっかりとソースを確認し、怪しい情報は拡散しないようにする必要があります。

ゼレンスキー政権は、そうしたロシアのディスインフォーメーションに惑わされないよう、国民に対して正確な情報を伝えようと努力しています。また、ウクライナの市民は、その厳しい現実をできるだけ世界に伝えようとしています。こうした情報は積極的に広げていきたいものです。

ゼレンスキー大統領はSNSでたびたび動画やテキストを投稿し、国民や世界に対して、「自分はキエフにいる」「国のために戦い続ける」というメッセージを発信しています。そのパフォーマンスたるや見事なもので、まったく悪い意味ではなく、大統領を演じた役者の経験も生かされているように思いました。

また、ゼレンスキーと激しく対立してきたポロシェンコ前大統領も、1月にウクライナに帰国し、「ロシアと戦う」というメッセージを投稿し続けています。

ポロシェンコは、本メルマガでは、汚職問題やバイデンのウクライナ疑惑など、良からぬテーマで取り上げてきた政治家ですが、上記動画や自身のSNSの発信を見ると、その覚悟に胸を打たれます。その思いは応援したいですが、無事であって欲しいとも思います。

在日ウクライナ大使館には寄付金を送金することができます。ウクライナを応援したいと思う方はこちらを確認されることをお勧めします。

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2 comments on “今週の動き(2/27~3/5)ロシアのウクライナ侵攻
  1. ベルモット より:
    プーチン失脚??

    ロシア国内でクーデターが起こる可能性って、あるのでしょうか?

  2. JD より:
    ベルモットさん

    その可能性については、次号のメルマガで書きます。

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