ブログ記者によるオンライン新聞 グッチーポスト

The Gucci Post [ぐっちー編集長の金融・経済を中心としたオピニオンブログ News Paper]

2020/03/16 06:30  | by Konan |  コメント(2)

Vol.47: 株価のこと

今週は休む予定でしたが、乱高下しつつ水準を大きく切り下げてきた株価について触れようと思い直しました。

株価は余り取り上げたくないテーマです。理由はいくつかあります。第1に、株価の予測は誰にとっても難しいこと。先週金曜日のNY市場急反発の流れを受け仮に今週株価が世界的に反転すると、今回のひとり言はとても間抜けなものとなってしまいます。ただ、今週の動きを自信を持って語ることが出来る人は極めて少ないと思います。第2に、言うまでもなく個別企業の業績を知らず株価を語ることは本来ナンセンスです。私は個別企業の内容まで全く追えていません。第3に、とても恥ずかしい自白をすると、私は個別株投資をしたことがありません。公の世界では、インサイダーを疑われないよう株式投資に厳格な制約がかかります。今は民ですが、上記の通り個別株の勉強が追い付かないのが実態です。そして第4に、私にはカリスマ性が無いこと。ぐっちーのように何を語っても「なるほど」と思わせる力がなければ、株価の話しはなかなか書けません。

このため、私に出来ることとして、マクロ的な視点から最近の株価下落の背景を整理することにとどめます。今後の予測も個別株の話しも一切しません。ご容赦下さい。

いろいろな識者が株価下落の理由を語っています。私流にそれを4つの観点に整理します。

【第1の観点:確実な当面の景気減速】

前回のひとり言でも書いた通り、当面の経済は、日本、中国、世界どのレベルを取っても間違いなく減速(昨年に比べ成長率が鈍化)します(前回のURLを下に掲げます)。当初は中国発のサプライチェーン混乱や中国人インバウンドの減少が心配されました。しかし今では欧州中心に世界中で人や物の流れが止まりました。経済は需要と供給で成り立ちますが、観光・外食・娯楽始め個人消費中心に需要が落ち込み、サプライチェーンの混乱や働きに出られないことから、供給にも負の影響が及びます。

このように間違いなく景気が減速するので、企業により濃淡はありますが、株価下落はむしろ自然な流れと言えます。

【第2の観点:極めて高い不確実性】

上記は「確実に景気が減速する」という観点でしたが、これに不確実性の高さが追い打ちをかけました。株式投資家を含む人々の心理として、不確実性が高い場合、取り敢えず最悪の状態を想定して保守的・リスク回避的に行動することが常です。今回の場合、この「不確実さ」が幾重にも重なった印象を持ちます。ある番組(NPR “THE INDICATOR”)で、2003年のSARSの際の景気の落ち込みのうち、病気の直接の影響は2割に過ぎず、8割は不確実性を心配したリスク回避的行動に起因したとの話しを聞きました。株式トレーダーの気持ちとして「自分もいつ罹患するか分からない。その時に備え取り敢えずポジションを調整しておこう」などと思ったとしても、不思議でないと思います。直観的に言えば、自分が住む地域や国が、少し前の武漢や今のイタリア、イランのようになることまで想定して行動する可能性があるということになります。

不確実性の第1は、新型コロナウイルス問題が中国発だったこと。もともと各種経済指標を含めその信憑性が疑われる国なので、病気に関する各種の発表や報道がどこまで信じられるか、疑ってかからざるを得ない状況が続いた(続いている)と思います。

第2は、病気の特性が読み切れないこと。致死率のようなデータもそうですが、「暑くなれば消えるのか」など誰も答えることが出来ません。ワクチンがすぐ出来ないことは常識化してきましたが(某国大統領も漸く理解したようです(笑))、治療薬開発(ないし既存薬の有効性確認)にどの程度時間を要するか分かりません。

第3は、上記とも関連しますが、一応終息したように見える中国で再流行のリスクは無いか、イタリアやイランはどうなってしまうか、米国は大流行を食い止められるか、とても不確実です。

第4に、今回の流行終息後、経済が元の状態に戻るか否か不透明です。サプライチェーンひとつとっても、恐らくその再構築の動きが進み始め、国・地域・企業ごとに明暗が分かれると思いますが、勝者・敗者の予測は容易でありません。在宅勤務やアプリを用いた会議が一般化してきましたが、これが定着するか否かで人の流れが大きく変わります。中国人が旅行を元通り再開するか、日本を含め他国が快く受け入れるか予想できません。

第5に、日本固有の事情として、オリンピック・パラリンピックの動向も不透明です(2年延期説が急速に濃厚になっている印象ですが)。

【第3の観点:政策対応の限界】

これもいくつかに分かれます。

第1に、金融政策の限界は、新型コロナウイルス問題の前から指摘されてきました。FRBはまだ利下げ余地がありますが(現に今朝緊急利下げされました)、ECBは利下げに踏み込めませんでした。新型コロナウイルス問題により企業が苦境に陥ると、当然銀行経営にも影響が出ます。リーマン危機の再来までは心配しませんが、そうした状況下に利下げで銀行を追い込むことは難しいと考えたのではないかと想像します。日銀の金融政策決定会合は19日に行われます。ETF・社債・CP買入れ増額、銀行へのバックファイナンス措置など色々考えると思いますが、マイナス金利政策深堀りには踏み込めない気がします。

第2に、財政政策に関して。そもそも欧州(とくにユーロ圏)のように財政規律を極めて重視する国・地域では、今回を例外と認めるのに時間を要します。米国は思ったよりスムーズに民主党との合意が進んだようですが、それでも大統領選挙を控え、トランプ大統領と民主党がどこまで一枚岩でいられるか分かりません。日本でも、来年度予算成立まで本格的な措置は取れないということで、これまでの対応は不十分なものにとどまっています。

ただ、こうした政治的問題以上に難しいのは、下手な財政政策はかえって病気を広げてしまう恐れがある点です。以前も書きましたが、病気が終息するまでは人の移動を止めないといけません。早い段階で旅行促進クーポン券のような施策を打ち出すと、とてもまずい結果になるか、病気が怖く誰も利用しないか何れかです。終息宣言を出せるまでの対策として、医療体制整備、倒産しかけている企業の支援、働く機会を失いつつある人たちの支援に全力を挙げ、終息後に個人消費促進策を打ち出すといった段取りが求められるように思います。要は、当面は経済活動が止まっても企業や家計が安心できる保障措置を徹底して行い、新型コロナウイルスの終息後、需要喚起や供給体制再構築を進める段取りです。逆に言えば、財政政策が景気回復に寄与するには、他の局面以上に時間を要してしまいます。

第3に、自由主義経済との関係。大上段に振りかぶってしまいましたが、トランプ大統領誕生後、それまでの自由貿易体制の土台が崩れ始めました。今回の問題は、人の移動をどこまで自由に認めるか、サプライチェーンを他国に頼ってよいかなど、トランプ大統領以上のインパクトを持ち得ます。とくに、英国離脱問題の裏として、EUは人と物の自由な移動を武器に成長を図ってきました。日本と中国や東南アジアの関係も似ています。こうした経済モデル自体が変革を求められるとすると、将来の成長パスに対する見方も変化せざるを得ません。

【第4の観点:そもそもバブルだった疑惑】

以前書きました(URLを下に掲げますが、その真ん中のセクションです)が、株価等の資産価格が、世界的な金融緩和により本来あるべき水準対比高くなっていたのではないかとの見方です。この点には深入りしません。立場や分析の仕方により答えが違ってくるからです。ただ、この点を(改めて)指摘する意見が出始めたことは事実と思います。

以上です。まとめると、当面、以前の予想や昨年までに比べ景気が減速することが見込まれ、株価押し下げ要因です。しかし、このこと以上に不確実性の増大が株価下落に影響したと考えられます。この霧がいつ晴れるか、大きなポイントです。政策面では、金融政策には余り期待できず、財政政策も効果発現に時間を要すると思います(そうでないと、病気終息に逆行しかねません)。そのうえで、これまでの上昇局面をバブルに近いとみるか、あるいは、新型コロナウイルス問題が自由主義経済のあり方の変化の契機となるとみるか否かで、先行きの見方が大きく分かれます。

世界恐慌、ブラックマンデー、ITバブル崩壊、リーマン危機など過去の株価暴落時も、タイミングや仕方は様々ですが、必ず底をつけ回復に転じました。今回、先週金曜日の東京や木曜日のNYが底だったか否かすら私には分かりません。ただ必ずどこかで回復に転ずると思います。そのタイミングや仕方を読者の皆さんに考えて頂く際の参考になればと思い、今回書いてみました。ただ、読み返してみて、整理したというより、読者の皆さんを一段と混乱させてしまったかもしれません。申し訳ありません。ぐっちーが生きていれば、きっとメルマガ読者に向けて「皆さんは確りと学んできた。自分で考える力が付いた。頑張れ!」と言うでしょうね。

そのぐっちーをJDさん、Saltさんがしっかりと引き継ぎ、自らの発信を続けています。本日(以降)のメルマガでもこのテーマに言及があると思います。期待ください!

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2 comments on “Vol.47: 株価のこと
  1. どくしゃ より:
    株価急落

    今回の株価急落をリーマンショック並みという人もいますが、違和感を感じます。リーマンショックのときの株価下落は強烈な恐怖感を感じるようなものでしたが、今回の株価急落は、現時点では、あまり恐怖感を感じられません。

    10年単位で見ると、優良株は株価がそれほど下がっておらず、業績不振株の株価が下落しているだけ、という状況です。

    キーエンス
    https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=6861.T&ct=z&t=ay&q=c&l=off&z=m&p=m65,m130,s&a=v

    トヨタ自動車
    https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=7203.T&ct=z&t=ay&q=c&l=off&z=m&p=m65,m130,s&a=v

    日本製鉄
    https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=5401.T&ct=z&t=ay&q=c&l=off&z=m&p=m65,m130,s&a=v

  2. 健太 より:
    株価

    自動車はこれからでしょう。下がるのは。物流が止まるわけですから。
     在宅勤務が増えると思う。これまでやればできたがいろいろなわけでできなかったことができる。この変化は大きい。しかし人の移動がすくなくなることは経済活動が落ち込むことを意味する。
     石油先物が28ドルですよ。

     戦時体制へと移ると思うが、アメリカは平時と戦時を区別しない仕組みですからさほど影響はないが我が国は戦時と平時を分けて行動する。この違いは大きいと思う。
     物流が止まることは戦争で言うと補給が止まることを意味する、前線の兵士は飢えで(失業)で苦しむ。
     国民の40パーセントが実質貯金がない状態とネットに出ていた。
    これを考えると恐怖心が走る。

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