ブログ記者によるオンライン新聞 グッチーポスト

The Gucci Post [ぐっちー編集長の金融・経済を中心としたオピニオンブログ News Paper]

2020/03/09 06:30  | by Konan |  コメント(3)

Vol.46: もう一度新型コロナウイルスのこと・経済に絞って

また新型コロナウイルスのことです。今回は経済に絞ります。世界経済、日本経済と経済対策、円高と日銀、の3点を取り上げます。Saltさんのメルマガを是非合わせてお読み下さい。

事の発端である中国経済について。この騒ぎの前から、今年の中国の成長率は昨年までの+6%台から+5%台に低下すると言われていました。高度経済成長後の日本もそうでしたが、経済が成熟を迎えるにつれ成長率が落ちるのは自然ですし、中国は過剰債務問題や米国との貿易問題を抱えています。これに今回のショックが追い打ちをかけました。

議論(計算)を単純化するため、騒ぎの前、今年の成長率が+6%丁度と予想されていたとしましょう。多くのアナリストは、1~3月期の中国経済は年率換算でマイナス2%~4%程度落ち込み、+2%~+4%に成長率が低下するとみています。そして、4月以降は騒ぎから脱し、+6%成長の軌道に戻ると期待を込めて予想しています。仮に1~3月期が予想最下位の+2%とすると、今年1年を通じれば、(2+6+6+6)/4=+5%成長と騒ぎ前(+6%予想)を1%下回ります。

この予想はやや楽観的に見えますが、それでも当たるかもしれません。政策面で財政による下支え余地がありますし、中国における新たな患者の発生は減少し、今のところ北京等に広がっていません。また、習近平国家主席が経済活動再開の号令をかけ始めたとも言われます。更に、仮に幸いにも治療薬が開発(ないし既存の薬の有効性が確認)されれば、安心感が一気に広がります。

ただ逆に言えば、経済活動再開に伴い北京、上海等への本格的な飛び火が起これば事態は一変します。また、人の移動や消費が委縮した状態が続く可能性もあります。日本の話しですが、先日お店(フレンチ)を経営する知人からSOSが入り行ってみました。案の定客は私一人。店の方は「テレワークや時差出勤が広がると、お客様がお店に来難くなる」と話していました。今回の件を機にワークスタイルが変化すると、その影響が長く続く可能性がある訳です(無論、そうした人たちをターゲットに新たなサービスが生まれる可能性もあります)。要は「+5%成長」には下振れの可能性がかなりあり、新型コロナウイルスの帰趨が見えてくるまで、大きな不確実性が残ります。

世界経済に目を転ずると、1月時点の新型コロナウイルスの影響を織り込まないIMF世界経済見通しは、昨年+2.9%成長とリーマン危機後最低水準に落ちこんだ後、今年は+3.3%成長への回復を見込んでいました。しかし、新型コロナウイルスの影響は、皆さんが実感されてるように日を追って世界に広がっています。当初は中国のサプライチェーンの関係、中国人観光客の減少に注目が集りましたが、今では世界中で人や物の動きが止まりつつあります。患者が増加し始めた米国も予断を許しません。仮に中国経済が4月以降リバウンドするとしても、その他の地域では、新型コロナウイルスの影響が4月以降も尾を引くことが予想されます。このため、今年の世界経済の成長率は+3.3%予想には届かず、昨年の+2.9%を下回り、リーマン危機後の最低値を更新すると考える方が良いと思います。

さて日本。ここではオリンピック・パラリンピックは予定通り開催と想定して話しを進めます。今年の日本経済に対する新型コロナウイルス問題が起きる前のほぼ一致した見方は、「最初の数か月で漸く消費税率引上げの影響を克服し、オリンピック・パラリンピック期に盛り上がり、その後減速する」というものでした。新型コロナウイルスの影響が加わり、「最初の数か月」についてマイナス成長の声も出始めています。オリンピック・パラリンピックが開催されても、新薬の開発等安心材料が無い限り、インバウンド中心に期待していた盛り上がりは見込めないと思います。そしてその後当初予想通り減速するとすれば、今年を通じ極めて低い成長率にとどまり、場合によりマイナス成長も覚悟せざるを得ないと考える方が自然に思えます。

無論、こうした悲観的な状況を経済対策によりある程度挽回することは可能です。10日に公表予定の経済対策について、感染拡大防止策と医療提供体制の整備、臨時休校に伴う課題への対応、事業活動の縮小や雇用への対応、事態の変化に即応した緊急措置、の4点が柱と報道されていますが、私の言葉に置き換えれば、「新型コロナウイルスに対する直接的対応」と「消費税率引上げや世界的な景気減速に伴う日本経済の逆境への対応」の2つで構成されると予想します。

前者は、

・バス会社、旅館、外食などインバウンド減少の影響を受けた業種、一部製造業のようにサプライチェーン混乱の影響を受けた業種への対応がまず考えられます。資金繰り支援、例えば既に報道されている政府系金融機関による無利子・無担保融資や民間金融機関への融資継続要請は当然ですが、どこまで補助・助成に踏み込めるか注目されます。

・次に、総理自ら約束した学校休校に伴う給与補償。ただ、この点は学校休校の影響にとどまらず、また、世界的にも問題化しています。敷衍すると、例えば私は週1回ヨガ教室に行きますが、ジム閉館に伴い2週間通うことが出来ません。このヨガの先生の収入も減少したはずです。また、例えば欧米のウーバー運転手はどうでしょうか?ギグエコノミーが広がり働き方が多様化する中、こうした働き方を選ぶ人たちの雇用保障の問題が世界的に論点になると予想します。雇用保障が無いと収入を得るため病気であっても働こうとするインセンティブが働き、新型コロナウイルスを拡散させます。感染症対策としても重要な意味を持ち得る訳です。

・更に新型コロナウイルスや将来起こり得る異なる感染症への対応力強化です。新薬やワクチン開発、検査や隔離体制などの拡充、マスク等の増産、サプライチェーンの日本へのシフトバック支援、そして例えば企業のテレワーク整備助成などもあり得るかもしれませんね。

後者は、古典的な過去何度もあった経済対策の領域で、要は「バラマキ」です。そのうえで、2点補足します。

・通常であれば、個人消費を促進するための「商品券」的な政策がメニューになり得ます。しかし、今回は人の移動を止めることが喫緊の課題なので、旅行、外食等を後押しするものはまずいことになります。こうした選別が必要です。

・野党は消費税率引下げを既に求め、政府・与党は拒否する構図です。私も消費税率引下げは無いと思います。麻生財務大臣ひいては安倍総理の責任問題への発展を阻止したいとの政府・与党の思いに加え、消費税率変更(下げであっても)の移行コストは無視できないこと、消費税は社会保障等長期的な財政対応のための財源であり、循環的な景気変動対策に割り当てることに適さないこと、が理由です。税であれば、所得税の今年一年限りの減税、キャッシュレス決済の還元の延長などでしょうか。

最後に円高と日銀について。米国利下げ後急速に円高が進み、日本株価下落の一因にもなっています。日本は伝統的に円高恐怖症の国なので、「何とかしろ」とのプレッシャーが高まる可能性があります。

まず、直接的手段である「介入」について、最近59歳の手習いで始めたTwitterでも少し書きましたが、2点。

・「介入=日銀」と思われている方が多いですが、「介入=財務省(supported by 日銀)」です。日本銀行法には(恐らく普通の方には理解できない超難解な表現の(苦笑))以下の条文が置かれています。

「法第40条第2項 日本銀行は、その行う外国為替の売買であって本邦通貨の外国為替相場の安定を目的とするものについては、第三十六条第一項の規定により国の事務の取扱いをする者として行うものとする。」

「介入は政府のお仕事。日銀はそのお手伝いだけしていなさい」という趣旨です。介入は財務省の判断で外為特会のお金を用いて行われます。日銀は財務省の命令に従いその通り介入の事務(為替ディーラーへの連絡や売買資金の管理)を行うだけです。

・ここ何年もの間介入は行われていません。安倍内閣以降、困るような円高になったことがほぼ無かったことに加え、トランプ大統領になり、介入を行うと「為替操作国」に認定される恐れがあったためと推測します。

次に、では日銀は何もできないのか?以前このコーナーで書いたように(URLを下に載せました)単純に言えば利下げ等の金融緩和を行うとその国の通貨の魅力が減じ、通貨安が実現する可能性があります。今回も米国利下げでドル安(円高)が進行した訳です。

黒田総裁は、半年ほど前から、追加緩和を行う際の4つのオプションを対外説明しています。

・マイナス金利の深堀り
・10年物国債金利操作目標の引下げ
・ETF等の資産買入れの拡大
・量の拡大ペースの加速

です。なお、余り知られていませんが、上記の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みとは別に、日銀は金融機関による成長基盤強化や貸出増加の支援、被災地金融機関の支援を行っています。例えば被災地金融機関が震災復興のため資金供与を行う場合、そのバックファイナンスを低利で行う仕組みです。政府の新型コロナウイルス対策に協力するため、同様の金融機関へのバックファイナンス措置が導入されるかもしれません。

日銀もFEDのように臨時会合を開く可能性はありますが、そうでなければ19日が次回の金融政策決定会合です。今回は久し振りにとても注目される会合となります。

このCRUのひとり言、月2回執筆を原則としていますが、最近連投が続きました。臨時会合が無い限り、次回は23日(月)に更新します。その間可能な範囲でTwitterやFacebookで発信します。なお、近々JDさん、Saltさん、編集部さんと会食の予定です。新型コロナウイルス自粛モードを破りつつ、チームワーク向上に努めたいと思います。

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3 comments on “Vol.46: もう一度新型コロナウイルスのこと・経済に絞って
  1. なかのゆ より:
    めっちゃ参考にしてます

    すごい視点からの話だと思います 今後も政府の取り得る方策お話しいただけると本当にありがたいです

  2. 健太 より:
    日銀

     >例えば被災地金融機関が震災復興のため資金供与を行う場合、そのバックファイナンスを低利で行う仕組みです。

    あれだけ大きな被害を出して、地方銀行がつぶれ無いわけがないと 思っていたが、なるほどと思う。しかしですよ、素人だがその行為は金融の原則に対して、間違いではないか?

     わが国における重要な決定は、いつだれが決定したかわからない。
    総量規制は今ではだれが決めたかわかるが、その当事者がいろいろ考えて決断したのかは不明だとみている。当事者の名前は分るが決定したのが本当に当事者なのかは疑問だとみている。

     近くに土木工事に使う機械が置いてあるところがあるが、本日そこの近くを通た時、驚いた。ずらりと並んでいる。ブル、バックフォー、その他。
     ほんとにずらりですよ。
    この機械を使うのは土木工事だから、政府予算でするしか道はない。
    この費用をどのように出して、どのように国土の土木工事をするかは官僚の責任で決断は政治家の責任で、どのようにして、資金をつくるか?

     MMT理論で、するべきではないか。そのままにしておくと機械は古くなり、運転できる人もなくなり、それでおしまいではないか。
     そのくらいなら、銀行に積んである金を出させて、詐欺でもいいから土木工事をして、国土の強化をして、子孫に残すことではないか?

  3. X より:
    6月まで続き、世界中の都心の不動産バブル崩壊が始まる

    この騒ぎは中国でも4月では収束しないでしょう。封じ込めにある程度成功してしまったので、逆に解除が難しくなっています。欧米などの寒涼地での感染はこれから本番ですし、逆輸入の危険性も高まっているので、すぐには解除できません。夏になれば、通常のコロナウイルス類は不活発のなるので、さすがに落ち着くでしょうが、戦闘態勢を解けるかどうか?
    一番の問題は、多くの国では国民がが新型コロナのリスクの相対的低さを正しく理解せずパニックになって全数検査・感染例が多い国からの入国禁止などに進むことです。そのため、例え自国民が知的に行動して平静を保ったとしても、結局他国との経済活動が不可能になってしまうという事です。どちらに転んでも、結局不景気を伴うウイルス封じ込め政策を採用せざるを得ません。
    治療薬は、最初の薬の認可までは数ヶ月程度で行くでしょうが、通常患者の30%にでも効果が有れば大変優れた薬ですので、大半の患者に有効な薬が出揃うには一年くらいは必要です。ワクチンは有効ですが培養など開発に時間がかかり、安全性など試験にも時間がかかり、量産にも時間がかかるので、やはり一年くらい必要です。次の冬に何某か間に合えば幸運と言えます。
    次に確実に起こるのは、世界中の都心バブルの崩壊です。東京を含む世界中の大都市で都心の土地信仰が蔓延り不動産価格が高騰しています。しかしその価値は通勤の利便と人の密集する商業施設へのアクセスですので、感染症対策で遠隔での勤務とAI化無人化が進めば、アドバンテージが無くなります。
    東京で言うなら、環八-環七より内側は大きく下落するでしょう。そこそこ便利な郊外の価値は、再び見直されます。世界中で同様の事象が起こり、経済の転換点となります。無人化に伴い雇用も減りますが、少子化の日本ではそれほどの影響は出ないでしょうね。
    景気対策は、結局人と物の移動を活発化させ感染を広める事になるので、暫く効果的な対策は出来ないでしょう。景気悪化の影響を受ける企業や労働者への救済措置と医療福祉面でのリソース拡大ぐらいしか出来ることはないです。

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