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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2020/02/10 06:30  | by Konan |  コメント(2)

Vol.42: 新型コロナウイルスのこと


Saltさんや多くの報道の後追いにしかなりませんが、新型コロナウイルスに関し、簡単に触れたいと思います。

実体経済面では相応の影響が出始めています。私は経済モデルを操ることが出来ないので具体的な数字を示すことは出来ませんが、例えば今年の中国経済に関し、6%を割り込み5%台に成長率が落ち込むとの見方が増えています。この影響がとくにアジア地域に及ぶことは不可避です。

中国人の国内外の移動制限に加え、中国への旅行や出張も控えられています。この直接の影響は航空、宿泊、外食など幅広く及びます。また、各種報道で指摘されているように、仮に中国国内での自動車や電子機器関連製品の生産が落ち込むと、サプライチェーンを通じ影響が広がります。私が参加を予定していた5月の北京でのイベントが既に延期され、この頃まで影響が長引くことも見込まれます。

無論、マスクや医薬品のように「特需」を受ける業種もあります。大震災や台風同様、事後的な政府支出により実体経済(GDP)面である程度の挽回も可能です。更に、例えば米国人が中国旅行を控えるケースを考えると、行き先が中南米や欧州等に変更されるかもしれません。こうした点で、短期あるいは一地域への影響に拘泥すると、見方が悲観的になり過ぎる恐れがある点には注意が必要です。逆に言えば、今年前半、中国を中心としたアジア地域(日本を含む)の成長に限れば、その足枷になることは間違いありません。

市場への影響はどうでしょうか。これまでのところ、日によって大きな材料とはなりますが、市場のトレンドを大きく変えているようには見えません。2月7日にFRBから議会に出されたMonetary Policy Reportではpossible spillovers from the effects of the coronavirus in China have presented a new risk to the outlookと触れられ一部報道で話題になりましたが、精々リスク認識された程度と言うことも出来るかもしれません。

ぐっちーやSaltさんのような市場のプロと異なり、当局者は市場動向に悲観的になりがちです。どこかで「米国株価はバブルではないか」などと疑る性癖を持っています。元当局者の私もそこからなかなか抜けられません。疑る理由は「余りに緩和的な金融環境が必要以上に資産価格を押し上げているのではないか」との見方です。各国中銀の量的緩和政策により市場には流動性が溢れています。日銀の長短金利操作により10年物金利ですらマイナス圏内です。米国でも、市場金利はあるべき姿より低いと見ることも可能です。低下したとはいえ米国の潜在成長率は2%近くありますし、インフレ率も2%近くです。「金利=実質期待成長率+期待インフレ率+リスクプレミアム」と考えると、長期金利水準は少なくとも3%程度あっておかしくありません。それを恒常的に下回っているのだからバブルが生まれつつある、との理屈です。そして、新型コロナウイルスがバブルを弾けさせる要因となるかどうか不明だが、いつかそのうち弾けるはずと思ってしまいます。

ぐっちーの教えは、「こういう高飛車な見方に惑わされず、丹念にデータを追い、自分で判断せよ」だったと思います。Saltさんという素晴らしい後継者ができ、本当に良かったと思います。また近々飲みましょう!

さて、政治への影響。JDさんのご意見をいつか伺いたいのですが、習近平体制にひびは入っていないのでしょうか。中国と言う特殊な環境の下では、この程度のことはかすり傷かもしれません。ただ、経済減速、米国との摩擦、香港問題、台湾総統選挙など、任期を無期限に延長し毛沢東を上回る権力者になったと見られた僅か数年前に比べ、苦しい状況が続いているようにも思います。日本で同じことが起きたら、きっと総理が2人くらい交代していたでしょう(苦笑)。ここが中国や習近平国家主席の強さ・凄さなのでしょうか。

日本と言えば、安倍総理にとり桜を見る会やIR(カジノ)関係の話題が薄まり、幸運な展開だったように思います。チャーター機を飛ばしたことを評価する声も聞かれます。そのうえで、総理にとって悩ましいのは習近平国家主席の国賓としての訪日をどう扱うかということではないでしょうか。中国側が大人の対応で訪日延期を考えるのかもしれませんが、中国の体制はそこまで柔軟ではないのかもしれません。ただ一部週刊誌の見出しで「陛下と会う際はマスクを着用させるべき」などと書かれるなど、予定通りの4月訪日は、あまり良い結果を齎さないようにも思います。少し前政府高官と話した際「変更の話しは聞かない」としていましたが、コロナウイルスを巡る事情が日々悪化する中、どうなっていくでしょうか。

ところで、仮に訪日が延期になると、春の解散の日程的余裕が生まれます。この点で、国内政治面への波及も注意してみていきたいと思います。

いつも以上に冴えない内容で失礼しました。。。

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2 comments on “Vol.42: 新型コロナウイルスのこと
  1. ぺルドン より
    武漢肺炎

    まだまだ肺炎収まらず、中国は戒厳令下にあるといっても過言ではないでしょう。
    政治局常務委員会も収まらなければ、又は習国家主席の体調が崩れれば・・
    金委員長が妹・金与正に実権を委譲したように、習国家主席が王岐山副主席に、一時的に席を譲る可能性も考えておかなければ、とも思いますね・・・

  2. 健太 より
    鳥インフルエンザの対応

     今回のクルーズ船の対応は基本的には成功しない.鳥の場合は消毒と殺処分で対応するしか道はない。従って同じ対応をすることだがどれもしていないから、さらに蔓延する。船を消毒しないといくら検査をしても無駄に過ぎない。原発事故と同じ対応をしているとみている。
     不謹慎で、吉田氏には悪いが、あの時できたなら即座に海水を入れることだったが入れるとつかえなくなり,一機8000億がパーになり、四つで3兆二千億がパーになるから、その判断ができなかったと思う。多分関係者ではそれが共有されているのではと推測する。
     政府など対応能力がないとしか思われず、今後の展開はいろいろあるが悲観的です。ただ歴史を見ると、盧溝橋事件の勃発と同じような気がする。
     自民党の二階氏は行動はその時の軍部及び政府の対中国認識と同じで、行動も同じに見える。その時、逆に見れば絶好のチャンスだったが利用できなかった。その次に起きた第二次上海事変においても似たような行動だった。あの時海軍の米内光政が邦人保護のため派兵を主張したが、陸軍が反対だった。派兵は必要だったが.邦人がある程度虐殺されてから、派兵をすることで、その判断が政治的にできなかったことが間違いだった。
     チャーチルはドイツの暗号を解読していたが、それがばれないように行動して、ロンドン空襲があることは分っていたが、その防衛はしなかった。そのためバトルオブブリテンが生じたが、それでも暗号解読の事実の方が重要だと判断したというわけです。
     今回はいろいろな意味で、わが国のチャンスだが費用がないとは違う。将来の損得を考慮して、その費用をいくらかわからないが10兆円くらい負担するつもりで、わが国の対中国政策の変更をすることでしょう。それは国内闘争になること戦前と同じです。当時は財界は反対で軍部においても分裂があった。
    今回は国民は賛成で、財界は反対でしょうか。政治家は利権によって分裂している。
      ことは中国から生産設備の撤退です。それと中国人の入国禁止です。それと軍事力の増強で、これは支那事変が起きた時と同じで、当時の軍備は貧弱なものだったに過ぎない。多くの日本人は当時強大な軍備があったと思っているがそれは違う。軍備の主点が兵器から補給へと移っていたから、それを考えると、話にならななかった。
     肺炎がドン程度蔓延するかのシミュをすることだが、その能力が政府首脳にあるのか?原発のように運に頼るのか、それとも、なけなしの考えで、真珠湾攻撃のようなことをするのか?
     すでに日銀はそれと同じことをしているとみている。手がないがそれでもかんがえて有効な手を打たないと国内は暴動が起きる。
     戦前も2.26事件につずいて国民が暴動を起こせばあの戦争は起きなかったと思う。
     こんなにのんきでいいのかなと思うが
     支那事変が起きて、2年過ぎたころ国民はこの戦争は止めないいけないと思ていたが、それができずに、対米戦争へとすすんだ。
     このままいけば、日本人入国禁止の措置をとる国が出てくる。

     

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