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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2025/04/28 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.273: IMFと内閣府


今回は、22日に公表されたIMF世界経済見通しを紹介します。また、先週紹介し損ねましたが、18日に公表された内閣府月例経済報告にも触れます。いずれも下方修正でした。

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世界経済見通しは下方修正
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今回のIMF世界経済見通しは、トランプ政権の政策が不確実な中、どのような想定でどのような分析を行うか、注目されました。

いつもは少し詳細に計数に触れますが、今回は簡潔にポイントをお伝えします。

・普段は様々な情報を勘案してベースラインシナリオを提示するが、今回は余りに不確実性が大きいため、「参照予測」として提示された。

・とりあえず4月4日時点で入手可能な情報を前提としている。ただし、その後に起きた中国との3桁関税と他国との10%超の相互関税90日間猶予を勘案しても、前者(中国)と後者(猶予)が打ち消しあうので、世界全体の経済成長見通しの姿はさほど変わらない。

・2025年に限ると、実質経済成長率見通しは、前回1月見通し対比で世界全体が0.5%下方修正され+2.8%成長となった。米国は0.9%も下方修正され+1.8%成長に、中国は0.6%下方修正され+4.0%成長とされた。

・米国は関税の影響でインフレ率が高まる一方、他の国・地域は、報復関税が想定されないこともあり、世界経済減速の影響から、むしろインフレ率の更なる上昇が抑えられる格好。

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重要なのはリスクシナリオ
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日本の報道は上記ばかりですが、今回大事なのは、IMFの公式日本語訳がない第1章のBox1.1です。2つの分析を行っています。

・例えば上記の米国+1.8%成長は、様々な起きうる事象の中での中心的な見通しで、確率分布として上振れ・下振れ双方の可能性がある。2025年の米国の成長率が+1.2%を下回る確率は、昨年10月の25%から37%に上昇した。

・今後様々なこと=楽観シナリオ、悲観シナリオ=が起きうる。このうち、米国は減税で支えられるが中国・欧州は停滞、関税戦争激化、不確実性の高まり、金融環境悪化のすべてが起きる悲観シナリオでは、世界経済成長率が2025年に1.3%も押し下げられる。

このほか多くの情報が記載され、IMF世界経済見通しは読みごたえがあります。ただ、今回は「出しゃばりすぎるとIMFの存亡の危機にかかわりかねない」との遠慮があったようにも感じます。

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内閣府もトランプ警戒
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内閣府月例経済報告は以下の通りで、トランプ警戒アラートです。景気の基調判断は現状、先行きとかなり修正され、輸出の先行きの表現も下方修正されています。

(現状)
・基調:景気は、緩やかに回復しているが、米国の通商政策等による不透明感がみられる
・個人消費:消費者マインドが弱含んでいるものの、雇用・所得環境の改善の動きが続く中で、持ち直しの動きがみられる
・設備投資:持ち直しの動きがみられる
・住宅建設:おおむね横ばいとなっている
・公共投資:底堅く推移している
・輸出:このところ持ち直しの動きがみられる

(先行き)
・基調:雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっている。加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、金融資本市場の変動等の影響に一層注意する必要がある
・個人消費:雇用・所得環境が改善する下で、持ち直していくことが期待される。ただし、消費者マインドの動向に留意する必要がある
・設備投資:これまでの堅調な企業収益や省力化投資への対応等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:当面、横ばいで推移していくと見込まれる
・公共投資:補正予算の効果もあって、底堅く推移していくことが見込まれる
・輸出:米国の関税引上げによる直接的な影響、通商問題による世界経済を通じた間接的な影響等に留意する必要がある

今回はこの辺で。次回は注目の日銀金融政策決定会合を紹介します。

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