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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2025/04/21 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.272: 小噺・なぜ経済予測に差があるのか?


日本時間の明日の夜、IMF世界経済見通しが公表される予定です。トランプ政権の政策の影響がどのように織り込まれるか、注目されます。

さて、同じ国際機関であるOECDは3月に経済予測を公表しました。今月に入り、様々な機関やシンクタンクが経済予測を公表しています。トランプ政権の政策は景気にマイナスの影響を与えるとの見方は揃っていますが、影響の大きさに関しては結構な幅があります。なぜそうした違いが生じるか、簡単に整理します。

1.前提の違い
OECDの場合、3月に予測を公表したので、当然4月2日以降に実際に起きたことを全て見通せた訳ではありません。それでも結構な確度で当てたと感心していますが、4月2日以降に公表された・される予測には敵いません。とくに対中関税とその報復関税の高さは誰にも予想できなかったと思います。また、OECDは相手国の報復関税の影響を考慮に入れていますが、中国を除き、目立った報復関税が実施されそうにないのが現状です。90日の猶予期間の後どうなるか、前提の置き方が極めて難しく、例えばIMFは「楽観シナリオ=猶予が恒久化」「悲観シナリオ=猶予後、結局4月2日案通り」「最悪シナリオ=悲観シナリオに相手国の報復関税を上乗せ」など考えているかもしれません。

2.経済モデルの違い
仮に同じ情報を前提にしても、各機関が用いる経済モデルが異なるので、予測にも違いが生じます。ある大きさの価格上昇が個人消費をどの程度押し下げるかなど、それぞれの経済モデルにより答えが異なってきます。

3.プライシングに関する想定の違い
例えば10%の関税賦課のケースで、米国での販売価格が素直に10%上昇すると考えるか、業者が飲み込み価格が上がらないと考えるかで、米国の物価や景気、あるいは輸出国の景気に与える影響が異なります。第1次トランプ政権時の実績など勘案しつつ、エコノミストの腕の見せ所です。

4.不確実性の要素、金融資本市場への影響をどこまで織り込むか
上記3までは関税の実体経済への直接の影響を想定していました。実際には、第1次トランプ政権時の米中対立による不確実性の高まりから、2019年の世界経済は途中から減速しました。また、現に最近の金融資本市場の変動の大きさは耐え難いほどです。こうした不確実性の高まりは間違いなく景気にマイナスですが、それをどの程度と置くか、極めて難しい判断です。

5.トランプ以外の要素
世界はトランプだけで回っている訳ではありません。各国独自の事情の織り込み方も、各種予測の差を生むひとつの要因です。

上記以外にも要因はあると思いますが、主な点は網羅できたと思います。明日のIMF世界経済見通しを含め、経済予測をみるうえで参考になれば幸いです。来週はこのIMF世界経済見通しを、再来週は日銀金融政策決定会合を紹介する予定です。

今回はこの辺で。

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