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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/01/31 00:00  | 今週の動き |  コメント(0)

今週の動き(1/30~2/5)ウクライナ情勢、ブライヤー最高裁判事引退、米国競争法案、イタリア大統領選出、北京五輪


もう1月も終わりですね。早いものです。今年は、引きこもりから脱却してアクティブに動くつもりなのですが、研究調査系の仕事があまりに忙しく、結局ステイホームを余儀なくされています。

オミクロン株は恐れていないのですが・・しかしそろそろ一段落つくので、タイミングを見て外での活動を本格化させる予定です。メルマガも、そうした活動を踏まえて、質量ともにさらに充実させるつもりですので、ご期待下さい。

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先週の動き
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1/23(日)
・台湾国防部が中国軍の戦闘機など39機の防空識別圏(ADIZ)への侵入を発表

1/24(月)
・米欧首脳オンライン会議
・米国防総省がウクライナ情勢に対処するNATO即応部隊に8500人規模の米軍部隊を派遣する準備に入ったと発表
・EU外相理事会(ブリュッセル)
・イタリアの大統領の選出(マッタレッラ大統領が再任)
・豪州のモリソン首相のウィーチャットのアカウントが21年7月から使えなくなったことが判明
・イエメンのフーシ派がUAEのアブダビに向けて弾道ミサイル2発を発射したと発表(UAEは迎撃したと発表)
・ブルキナファソ軍がカボレ大統領を退任させたと発表

1/25(火)
・バイデン大統領がロシアがウクライナに侵攻した場合、プーチン大統領への制裁を検討すると表明
・バイデン政権がロシアがウクライナに侵攻した場合を想定し、欧州への石油・ガス供給を強化するため中東、北アフリカ、アジアとの協議を進めていると発表
・FOMC(~26日)
・中国・中央アジア5か国首脳の国交樹立30周年記念のオンライン会議
・北朝鮮が2発の飛翔体を発射(北朝鮮は長距離巡航ミサイルの発射実験を発表)
・独仏首脳会談(ベルリン)
・ロンドン警視庁が英首相官邸で新型コロナウイルス対策の行動規制の最中にパーティーが繰り返されていた問題について捜査に着手したと発表

1/26(水)
・米国とNATOがロシアからのウクライナ情勢に関する要求に対する回答を書面でロシアに提示
・米下院が「米国競争法案」を発表
・WTOが中国による米国への6億4000万ドルの報復関税を認める仲裁決定
・中国共産党の中央規律検査委員会が周江勇・元杭州市党委書記の党籍剥奪を発表
・独仏ロ・ウクライナ(ノルマンディー形式)の高官協議(パリ)

1/27(木)
・米・ウクライナ首脳電話会談
・米中外相電話会談
・米FCCが中国聯合網絡通信(チャイナ・ユニコム)の米国事業免許の取消しを決定
・米連邦最高裁のブライヤー判事が引退を発表
・米国の21年10~12月期の実質GDP成長率の発表(前期比年率換算+6.9%)
・北朝鮮が2発の飛翔体を発射(北朝鮮は地対地戦術誘導ミサイルの発射実験を発表)
・欧州委員会が中国はリトアニアに差別的な貿易措置をとったとしてWTOに提訴
・ホンジュラスのシオマラ・カストロ新大統領の就任式(ハリス副大統領が出席、台湾の頼清徳副総統と挨拶)
・カザフスタン上院がナザルバエフ前大統領が務めていた安全保障会議の終身議長職等を廃止する議案を可決

1/28(金)
・バイデン大統領が近いうちに米軍を東欧に派遣すると発言
・バイデン大統領とフォンデアライエン欧州委員長がエネルギー安全保障の協力に関する共同声明を発表
・バイデン大統領がペンシルバニア州ピッツバーグを訪問
・仏ロ、仏・ウクライナ首脳電話会談
・カザフスタンのトカエフ大統領が政権与党「ヌル・オタン」の臨時党大会で新党首に選出

●ウクライナ情勢をめぐる米ロの協議(欧州、ウクライナ、中国の立場)

ウクライナをめぐる緊迫した状況は続いています。先週、米国とNATOは、ロシアからの要求に対する回答を書面でロシアに提示しました。前回の記事で指摘していたとおりの動きです。

「ウクライナ情勢をめぐる米ロの協議」(1/24)

書面は公表されていませんが、ブリンケン国務長官は、NATOの東方不拡大は呑めず、軍事演習や軍備管理(ミサイル配備)については協議の余地があることを示したと述べています。これも、上記記事で予見したとおりです。

これに対し、ロシアのペスコフ大統領報道官は、米国とNATOの回答はプーチン大統領に報告されたと述べ、プーチンが判断することになるが時間がかかるだろう、ただ楽観的になる理由は多くないとコメントしました。ラブロフ外相も、主要な論点であるNATOの東方不拡大について前向きな回答がなかった、米国が示した論点は二次的なものに過ぎないが交渉の起点にはなると述べ、交渉は続ける姿勢を示唆しました。

その後、プーチンはフランスのマクロン大統領と電話会談。クレムリンの発表では、プーチンは、やはりNATOの東方不拡大が無視されているとして不満を示し、これから注意深く検討した上、今後の行動を決めるとのこと。これが現時点で確認できる唯一のプーチンの反応になります。

これとは別に、独・仏・ロ・ウクライナの高官協議がパリで行われました(この4か国の協議は、14年にクリミア危機とドンバスの紛争の解決のために設定された枠組みで、ノルマンディー上陸作戦の70周年記念式典に合わせて始まったので、「ノルマンディー形式」といわれます)。4か国の高官は、ミンスク合意を交渉の基礎とすることを確認し、2週間後に再度ベルリンで会合を開くことに合意しました(4か国は15年に「ミンスク2」と呼ばれるドンバス紛争の停戦を実現させる協定に署名しています。これは、14年にウクライナとロシア、ドンバスの親ロシア勢力が「ミンスク合意」と呼ばれる停戦協定に署名しましたが、停戦が失敗に終わったので、あらためて4か国が協議して締結したものです)。

一方、米国防総省は、ウクライナ情勢に対処するNATO即応部隊に8,500人規模の米軍部隊を派遣する準備に入ったと発表。バイデン大統領は、米軍を派遣する時期を決断したかと問われると、「近いうちに送る、多くはない」と述べました。

また、オースティン国防長官は、プーチンはウクライナに軍事侵攻を実施する能力をすでに整えたとの見方を示し、ただ侵攻はまだ最終決定されていないだろうと発言。ミリー統合参謀本部議長も、ロシアはウクライナ国境付近に10万人超の軍を配置しているが、これほどの規模は冷戦時代以来であり、ウクライナに侵攻すればかなりの死傷者が出るだろうと述べました。

また、バイデンは、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行いました。1月2日に続く今月2回目の会談です。NSCの報道官によれば、バイデンはゼレンスキーに、ロシアが2月にウクライナに侵攻する可能性は十分あると伝えましたが、これに対しゼレンスキーは、米国の支援への謝意を述べながらも、外国メディアとの会見では、他国の指導者がロシアとの戦争の可能性を誇張していると発言。双方の脅威認識に食い違いがあるように見えることが波紋を呼びました。

さらにバイデン政権は、ロシアがウクライナに侵攻した場合を想定し、欧州への石油・ガス供給を強化するため中東、北アフリカ、アジアとの協議を進めていると発表。その後、バイデンとフォンデアライエン欧州委員長がエネルギー安全保障の協力に関する共同声明を発表しました。バイデンは今週、カタールのタミーム首長とホワイトハウスで会談する予定です。

こうした最新の動きを踏まえ、今後の展望を解説します。今回は、特にウクライナ、欧州、中国の思惑に重点を置きます(※メルマガで解説)。

●ブライヤー最高裁判事の引退

米連邦最高裁のスティーブン・ブライヤー判事が今期限りでの退任を発表しました。バイデン大統領はブライヤーとともにホワイトハウスで記者発表を行い、後任判事に初の黒人女性を指名する意向を表明しました。

今週後半の米国のニュースはこの話題で埋まりました。ポイントを解説します(※メルマガで解説)。

●米国競争法案の発表

米下院が「米国競争法案(America COMPETES Act)」を発表しました。これは、上院が昨年9月に可決した「米国イノベーション・競争法案(USICA)」の下院版です。

USICAについては、本メルマガで何度も取り上げてきましたが、今回の法案と調整した法案が中間選挙までのバイデン政権の最後の立法成果になる可能性があります。その意義を解説します(※メルマガで解説)。

●イタリア大統領の選出

イタリア議会がマッタレッラ大統領を再び大統領に選出しました。ドラギ首相は留任します。前回の記事で予想したとおりの展開でした。

「イタリア大統領の選出」(1/24)
 
当初、ドラギは大統領になる意向を示し、マッタレッラは退任を希望していましたが、上記記事で述べたとおり、ドラギの後を継ぐ首相について政党間の合意がまとまらず、現状維持が選択されました。

議員ではない「スーパーマリオ」の実務者内閣が続くことは、本来の議院内閣制が想定する形ではありませんが、コロナと経済への対処が喫緊の課題であり、早期選挙を避けるためにも、望ましい決着だったといえるでしょう。これで当面は政治と政策の安定が見込まれます。

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今週の動き
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(※北京五輪開会式など。メルマガで解説。)

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あとがき
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『ファイト・クラブ』改変騒動、中国版の方が原作寄り 原作者(1月29日付AFP)

ファイト・クラブ』は、個人的に思い入れのある作品なので、インパクトのあるニュースでした。もっとも、中国がこのような改ざんをすることには何の驚きもありませんが・・。

ところが原作者に言わせれば、中国版のエンディングの方が原作に近いとのこと。気になって原作のサマリーを読んでみたところ、色々なことがわかりました。これは、中国版の方が良いという意味ではないのです(※続きはメルマガをご覧下さい)。

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