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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2020/03/16 00:00  | 今週の動き |  コメント(1)

今週の動き(3/15~21)


新型コロナウイルスの脅威は全世界に拡大し、株式市場と原油市場は急落。先週も激動の一週間でした。

日々の状況は目まぐるしく変化しますが、こういうときこそ、これまで述べてきたとおり、最新の情報を押さえつつ、長期的・構造的な視点から冷静に本質を見極めることが求められます。今週も、Saltさん、Konanさんそれぞれの視角から分析をお伝えします。

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先週の動き
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3/7(土)
・ブラジルのボルソナロ大統領がトランプ大統領の別荘「マール・ア・ラーゴ」でトランプ大統領と懇談(パームビーチ)

3/8(日)
・米民主党の大統領選予備選から撤退したカマラ・ハリス上院議員がバイデン前大統領への支持を表明
・サウジが新型コロナウイルスの感染拡大を理由に東部のカティーフ地域を封鎖

3/9(月)
・米国のNY市場で株価と原油価格が急落
・トランプ大統領が新型コロナウイルスの感染拡大に対応する経済対策を検討すると表明
・トランプ大統領とサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が電話会談
・新型コロナウイルスの感染者が見つかった米大型クルーズ船「グランド・プリンセス」がカリフォルニア州北部の港に接岸
・米民主党の大統領選予備選から撤退したコーリー・ブッカー上院議員がバイデン前大統領への支持を表明
・イタリアのコンテ首相が北部地域に適用していた移動制限を3月10日から全土に拡大すると発表
・トルコ・EU首脳会談(ブリュッセル)
・アフガニスタンのガニ大統領の2期目の就任宣誓式(アブドッラー前行政長官の大統領就任宣誓式も独自に開催、式の最中に爆発音)(カブール)
・アフガニスタン駐留米軍がタリバンとの合意に基づいて段階的な撤退を開始
・北朝鮮が日本海に向けて複数発の飛翔体を発射(金正恩朝鮮労働党委員長が朝鮮人民軍の「前線長距離砲兵区分隊」の火力打撃訓練を指導したと国営の朝鮮中央通信が報道)
・IAEA理事会(ウィーン、~13日)
・日本が新型コロナウイルスの感染拡大阻止のため中国と韓国からの入国を3月9日から月末まで大幅に制限(2週間の待機の要請、ビザの効力の停止、航空機の到着制限)

3/10(火)
・トランプ大統領がFRBは政策金利を「競合国」の水準に引き下げるべきとツイート
・トランプ政権が議会指導部に給与税(年間の税収は1兆ドル)の減税等を含む経済対策の策定を要請
・米商務省が輸出管理規則に基づく「エンティティ・リスト(EL)」に掲載されたファーウェイとその関連企業との一部取引を認める一般ライセンス(TGL)の延長期限を5月15日まで延長
・米大統領選挙民主党予備選(ミシガン、ワシントン、ミズーリ、ミシシッピ、アイダホ、ノースダコタ)
・米民主党の大統領候補の指名を争うバイデン前副大統領とサンダース上院議員の両陣営が新型コロナウイルスの感染拡大を考慮しオハイオ州で予定していた選挙集会の中止を発表
・米民主党の大統領選予備選から撤退したアンドリュー・ヤンがバイデン前大統領への支持を表明
・習近平国家主席が武漢を訪問
・アフガニスタンのガニ大統領がタリバンの捕虜1500人の解放を指示
・プーチン大統領が24年に予定される次期大統領選への自らの出馬を可能にする憲法改正法案を支持する考えを下院の演説で表明
・RCEP閣僚会合(ダナン、~11日)

3/11(水)
・WHOが新型コロナウイルスの感染拡大を「パンデミック」と認定
・トランプ大統領が新型コロナウイルスの感染拡大への対応についてホワイトハウスから国民向けにテレビ演説(英国を除く欧州からの外国人の入国禁止を発表)
・英イングランド銀行が0.5ポイントの緊急利下げ(政策金利を0.25%に引き下げ)を発表
・英国が新型コロナウイルスの感染拡大に対応する300億ポンドの経済対策の検討を表明
・中国の湖北省政府が省内の一部企業の操業再開を認めると発表
・イラクのバグダッド北方にあるタジ基地にロケット弾が撃ち込まれる(米軍関係者2人と英軍関係者1人が死亡)
・トルコのババジャン副首相が新党「民主主義進歩党」の設立を発表

3/12(木)
・トランプ大統領が個人的意見として東京オリンピックは1年間延期したほうがよいかもしれないと発言
・米国防総省が親イランのシーア派武装勢力「カタイブ・ヒズボラ」のイラクとシリアの拠点を空爆したと発表
・バイデン前副大統領とサンダース上院議員が新型コロナウイルスの感染拡大についてそれぞれ演説
・中国外交部の趙立堅副報道局長が新型コロナウイルスは米軍人が武漢に持ち込んだ可能性があるとツイート(米国は抗議)
・英国のジョンソン首相が新型コロナウイルスへの対処方針を発表
・イランが新型コロナウイルス対策としてIMFに支援を要請したと発表
・ブラジルがバインガルテン大統領報道官の新型コロナウイルス感染を発表
・ドイツの与党CDUが4月25日に予定していた臨時党大会の延期を発表
・ECB定例理事会(フランクフルト)

3/13(金)
・トランプ大統領が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて国家非常事態を宣言(検査キットの用意、ドライブスルー型検査、学生ローンの利息免除等の対策を発表)
・米下院がファミリーズ・ファースト・コロナウイルス対策法案(無料検査、有給休暇と失業保険の拡充等)を可決
・米ホワイトハウスがトランプ大統領は新駐日大使にハドソン研究所のケネス・ワインスタイン所長を指名すると発表
・日米首脳電話会談
・FOXニュースがブラジルのボルソナロ大統領の新型コロナウイルス感染を報道したが、同大統領が検査結果は陰性だったと発表
・カナダ議会がUSMCAの実施法案を承認
・マイクロソフトがビル・ゲイツ取締役の退任を発表
・日本で新型コロナウイルス対策の特別措置法が成立

3/14(土)
・米ホワイトハウスがトランプ大統領の新型コロナウイルスの検査結果は陰性だったと発表
・トランプ政権が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて実施した欧州からの入国規制について3月16日深夜から英国とアイルランドも追加すると発表
・米大統領選挙民主党予備選(北マリアナ諸島)
・イラクのバグダッド北方にあるタジ基地にロケット弾が撃ち込まれる
・フランスが新型コロナウイルスの警戒レベルを最高に引き上げ(全国のレストラン、バー、映画館等の営業を禁止)
・プーチン大統領が24年に予定される次期大統領選への自らの出馬を可能にする憲法改正法案に署名(法案を憲法裁判所に送付)

●新型コロナウイルスの感染拡大(米国の対応)

新型コロナウイルスの感染は世界各地で拡大し、WHOはついに「パンデミック」と認定。特にイタリアをはじめとする欧州で感染者が急増していることを受けて、「今や欧州がパンデミックの中心になっている」とも表明しました(中国での拡大がスローダウンしているタイミングに合わせたように見えて、何か違和感もおぼえましたが・・)。

米国内でも感染拡大が加速しており、3月15日時点で感染者数は2,952人、死者は55人に上っています。米国民の危機感も先々週から一気に高まり、先週は週明けから株式市場が暴落。その後も、一時反発したものの、急落を続け、過去最大の下げ幅を更新しました。

トランプ大統領は当初、「心配は要らない」「政権は状況をコントロールしている」「インフルエンザに比べれば大した問題ではない」として感染拡大阻止に成功していると主張。株価急落に対しては例によってFRBに「利下げしろ!」と指示。また、議会に給与税の減税等を含む経済対策の策定を要請しました。

それでも株価の下落はおさまらず、3月11日にトランプは国民に向けたテレビ演説を緊急に実施。英国を除く 欧州からの過去14日間滞在した外国人の入国禁止、中小企業への低利融資、納税期限の延期を発表しました。

しかし株式市場はさらに急落。制限措置の対象は人の移動にとどまるのにトランプは物流も制限されると述べ、保険会社がカバーする範囲は検査にとどまるのにトランプは治療も含まれると述べたりして、後になって訂正するというドタバタもありました(しかもわずか数日後に英国も制限国に追加)。

その後、3月13日にトランプは国家非常事態を宣言。これによりFEMAの災害救助資金を中心に連邦予算500億ドルを州など地方政府に回せるようになります。さらに検査キットの用意、ドライブスルー型検査、学生ローンの利息免除等の対策を発表しました。

この発表は、国内の感染拡大には成功している(海外は成功していないので遮断する)という従来のスタンスを転換するものであり、市場も正しい方向とみて好感しました。

また、下院では民主党(ペローシ議長)が「ファミリーズ・ファースト・コロナウイルス対策法案」を策定。無料検査、有給休暇と失業保険の拡充、10億ドルの食糧費補助等を含む支援パッケージで、ホワイトハウスと調整を重ね、最終的に合意に達しました。これを踏まえ、法案は国家非常事態宣言後に下院で可決されました。

このように1週間で状況は激しく動きました。米国の対応についてコメントします(※メルマガに限定)。

●新型コロナウイルスの感染拡大(中国の対応)

新型コロナウイルスの感染拡大は中国ではスローダウンしています。3月15日時点で世界の感染者数は15万6400人と先週から4万6000人も増加していますが、中国の感染者数は8万1000人で、先週から300人程度の増加にとどまっています。

そうした状況を踏まえ、先週、習近平国家主席が突然に武漢を訪問しました。コロナウイルスの感染拡大が問題視されてから初めての武漢訪問です。また、湖北省では一部企業の操業再開が認められ、近いうちに「終息宣言」を出すのでは・・との観測もあります。

一方、中国国内では、当局の対応への反発も高まっています。孫春蘭副首相が武漢視察時に住民から批判を浴びせられ、SNSにその光景が流されたり、武漢市トップの王中林党委書記が「党に恩義を感じさせる教育」を指示したが反発されて撤回したり、情報を統制する中国ではめずらしい「失態」が露呈しています。習近平の訪問の背景には、そうした反発を抑え込む狙いもあったのでしょう。

また先週、中国外交部きってのツイッター使いで、最近報道官に昇格した趙立堅副報道局長がコロナウイルスは米軍人が武漢に持ち込んだ可能性があるとツイートしたことが物議を醸しました。かねてから中国では、昨年10月に武漢で開催された世界軍人運動会の際にウイルスが持ち込まれたという噂が流れていました。それを念頭に置いたものでしょう。

このように、最近、中国は、コロナウイルスの終息を見据えながら、「コロナウイルスは中国発祥ではない」「むしろ中国は世界に先駆けて未知のウイルスと戦う立場に置かれた」「中国は世界のためにウイルスと戦い、いち早く克服した」といったナラティブを作り出そうとしています。「初動が遅れた」という批判をかわしつつ、自らの威信を回復させることが目的です。

3月14日には、環球時報が、欧米の対応は甘い、感染拡大を許したとして反省すべきだ・・とする社説を掲載するまでに至りました。日本や諸外国からすれば「アホか・・」と思うでしょうが、中国の狙いは国内向けプロパガンダなので、外国の反応は必ずしも重要ではありません。

中国らしいといえばそれまでですが、米国も日本も、こうした情報戦にどう対応するか、検討を求められます。日本政府についていえば、厚労省ではなく、首相官邸、つまり国家安全保障局(NSS)が主導することが適切です。

また、本来であれば、米国が同盟国との連携を主導して、中国に立ち向かうことが望まれます。しかし前項で述べたとおり、それをトランプ政権に期待することはできないでしょう。

●原油価格の暴落(サウジの王族逮捕)

3月6日のOPECプラスで原油の減産合意の継続に向けた交渉が決裂し、ロシアとサウジがいずれも4月以降に増産する意向を表明。これを受けて原油価格(WTI)が急落。3月9日には4年ぶりとなる27ドル台まで下がりました。

サウジはスイング・プロデューサーという地位を放棄するという前例のない決断に踏み切りました。今後、産油国は、サウジ、ロシア、米国以外の国々も含め、ノーガードの価格競争の時代に入るとみられています。

一方、OPECプラスと同日、サルマン国王の実弟であるアフマド王子(元内相)とその息子、そしてムハンマド・ビン・ナイフ(MbN)前皇太子とその弟が突然に逮捕されました。サルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子に対してクーデターを企てた容疑と伝えられています。

これらの動きと今後についてコメントします(※メルマガに限定)。

●米大統領予備選挙(ミシガン)

スーパーチューズデーの後、ミシガン、ワシントン、ミズーリ、ミシシッピ、アイダホ、ノースダコタの6州で予備選が行われました。

バイデンは大規模州のミシガンとワシントンを含む5州で勝利。以下の記事で述べたとおりミシガンはサンダースにとって正念場と言える重要州でしたが、そこでバイデンは16ポイントもの大差をつけて勝利しました。

「米大統領予備選挙(スーパーチューズデー、ミシガン)」(3/10)

バイデンは勝利演説でサンダースとその支持者に対して「一緒にトランプを倒そう」と呼びかけ。一方、サンダースは、翌日の記者会見で「3月15日のテレビ討論会に出る」と述べ、選挙戦から撤退しないことを表明しました。

今回の結果が意味するもの、そして今週予定されるフロリダ、イリノイ、オハイオ、アリゾナの4州の予備選を含め今後の展望について、明日解説します。

●ワインスタイン新駐日大使の発表

新駐日大使にハドソン研究所ケネス・ワインスタイン所長が指名されるとホワイトハウスが発表しました。コメントを述べます(※メルマガに限定)。

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今週の動き
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3/15(日)
・米民主党の大統領選候補者の第11回TV討論会(ワシントンDC)
・フランス統一地方選挙

3/16(月)
・G7首脳が新型コロナウイルスへの共同対策をテレビ会議で協議

3/17(火)
・米大統領選挙民主党予備選(フロリダ、イリノイ、オハイオ、アリゾナ)
・FOMC(~18日)
・ネタニヤフ首相の詐欺罪等の容疑に関する初公判

3/18(水)
・USTRがエアバスへの補助金を理由とするEUへの航空機への追加関税の税率を引き上げ(10→15%)
・英・EUのFTAを含む将来関係についての第2回目の交渉(ロンドン、~20日)

●米民主党の大統領選候補者の第11回テレビ討論会

以下の記事で述べたとおり、バイデンとサンダースの一騎打ち、サンダースにとっては事実上最後の挽回の機会になります。

「米大統領予備選挙(スーパーチューズデー、ミシガン)」(3/10)

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、会場はアリゾナ州フェニックスからワシントンDCに変更され、無観客で行うことになりました。

●米大統領予備選挙(フロリダ、イリノイ、オハイオ、アリゾナ)

フロリダ、イリノイ、オハイオ、アリゾナの4州で予備選が行われます。ポイントは以下の記事で解説しましたが、明日、あらためて詳しく解説します。

「米大統領予備選挙(スーパーチューズデー、ミシガン)」(3/10)

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あとがき
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世界情勢からマーケット、日常生活に至るまで新型コロナウイルスのニュースで染まっている感があります。

世界各地で移動や集会の制限が進み、国際会議も中止や延期が相次ぎました。先週には、IMF・世銀春季総会(4月予定)とG7外相会合(3月24~25日予定)をテレビ会議で行うことが決定されました。

マルチの国際会議の中には、拘束力のある合意に向けてギリギリとした交渉を行うものもあれば、講演や情報共有、意見交換に終わるものもあります。後者であればオンラインで行うことも無理ではありません。

こうなるとキャンプ・デービッド・サミットもテレビ会議になるかも・・と思っていたら、G7首脳が週明けに新型コロナウイルスへの共同対策をテレビ会議で協議するとのこと。本当に現実味を帯びてきましたね・・(苦笑)。

私も、政府の自粛要請があってから、打ち合わせをオンラインで行うようになり、在宅勤務の時間が増えました。もともと家でも仕事をするタイプなので、環境が大きく変わったわけではないのですが、今まで以上に家での仕事環境を快適にしたいと思うようになり、色々取り組んでいます。

たとえばディスプレイを増やしたり、AIスピーカーを活用してスマートホーム化を進めたり。デスクにはEcho Showを置いてラジオや音楽を流したり、音声でメッセージを送ったりしています。ウーバーイーツも多用するようになりました。

行動が制約されることで、経済が縮小することは避けられませんが、一方、生活スタイルが変化することで、需要が増える分野もありますね。暗い話が多いですが、こういったチャンスも見つけていきたいものです。

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One comment on “今週の動き(3/15~21)
  1. KB より
    これぞグッチーポスト!

    各国の対応や国民性がそれぞれ異なって、同じ状況を目の前にしてもここまで色々が違うのかと興味津々。
    それに「トランプの器の小ささ」。今それを言うか!というツッコミたくなるような、なんだかみみっちい感じ・・・(笑)。コロナを通して様々な人の考えが見え隠れして、面白いです。

    サウジ。原油価格というキーワードをJDさんは広く国際関係から、Saltさんはマーケットから攻められていて面白いですね。まさに「長期的・構造的な視点から冷静に本質を見極める」ことができるグッチーポストですね。

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