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The Gucci Post [ぐっちー編集長の金融・経済を中心としたオピニオンブログ News Paper]

2019/10/17 05:00  | 米国 |  コメント(2)

米軍のシリアからの撤退とトルコのクルド攻撃

クルド人組織、シリア政府が支援で合意 トルコの進攻で(10月14日付BBC)

米国、トルコ、シリア、クルドをめぐる状況が激しく動いています。

先週、トランプ大統領とトルコのエルドアン大統領が電話会談。会談後、トルコはシリア北部で「安全地帯」を設置する軍事作戦を近く行うが、米軍は関与も支援もしないとホワイトハウスの報道官が表明しました。

そしてトランプはシリア情勢について「終わりなき愚かな戦争はやめる」とツイート。同じタイミングで米軍がシリア北部から撤退を開始しました。

シリア北部のクルド人民兵部隊「YPG」を中心とする「シリア民主軍(SDF)」は米軍の撤退を「裏切り」と呼んで厳しく非難。米国の議員も、民主党のみならず、トランプと極めて近い関係にある共和党のミッチ・マコーネル上院院内総務、リンゼー・グラム上院議員らが反対を表明しました。

その直後、トルコ軍は、「平和の泉」作戦と称して、シリア北部に侵攻しました。トルコは16~17年の「イスラム国」との戦闘(「ユーフラテスの盾」作戦)でアレッポ県のアザズ、アル=バーブ、ジャラブラス、18年1~3月のSDFとの戦闘(「オリーブの枝」作戦)でアフリンを占領しています。今回は、国境からのテロリストの侵入阻止と難民の帰還を実現すべく、シリア北部の国境地帯の東西600キロ、南北30~40キロに「安全地帯」を構築するとして、地域を実効支配しているSDFを完全に排除しようとしています。

これに対し、トランプはトルコの軍事行動を「支持しない」との声明を発表。「ルールに基づいて行動しなければ制裁を通じてトルコに金融面でとても激しい打撃を与える。注視している!」とツイートしました。エスパー国防長官も「大変失望した」と述べ、トルコのアカル国防相と電話協議しシリア攻撃の停止を求めたと表明しました。

今週に入ると、トランプ政権はシリアに駐留する約1000人の米兵をすべて撤退させると発表しました。その直後、SDFは、トルコへの対抗のためアサド政権軍と協力することで合意したと発表。その合意は、ラタキアに駐留しているロシア軍の空軍基地で成立したと報じられています。

トルコとの合意を受けてアサド政権軍はSDFが支配する北部に侵攻。アレッポ県の要衝マンビジュを占領し、北東部のラッカ県、ハサカ県に部隊を展開しています。

一方、トランプはトルコに制裁を科すと表明。トルコの国防相、エネルギー天然資源相、内相を制裁対象に指定し、鉄鋼への追加関税を現行の25%から50%に引き上げ、通商交渉を中止すると発表しました。

さらにトランプはエルドアンと電話で会談。そして10月16日にペンス副大統領、ポンペオ国務長官、オブライエン大統領補佐官らがトルコに訪問することになりました。

トランプの米軍撤退とエルドアンのシリア侵攻はどのような思惑によって決定されたのか。今後、トルコ、シリア、そしてトランプ政権はどうなるのか。現時点でのポイントを解説します。

※ここから先はメルマガで解説します。アウトラインは以下のとおりです。

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米軍のシリアからの撤退とトルコのクルド攻撃
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●米国の方針転換
●トランプの独断専行
●トルコのクルド排除とシリア・ロシア・イラン

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あとがき
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動画:ウクライナ大統領、会見の世界最長記録を「更新」 12時間超も(10月11日付AFP)

ウクライナゲートのために(不本意でしょうが)一躍時の人になったゼレンスキー大統領。記者会見も世界の注目を集めました。

長ければ良いというものでもないでしょうが、12時間はすごい。しかも場所はフードコート。さすが俳優(ものまね芸人)、こうしたパフォーマンスはお手のものでしょう。

ちなみにこちらがゼレンスキーが主演していたドラマ『国民のしもべ』です(言語はロシア語です)。

SERVANT OF THE PEOPLE / Trailer / English Subtitles 2016

記者会見ではないですが、議会での長時間の演説といえば、昨年2月の下院でのナンシー・ペローシ下院議長(8時間)、13年のテッド・クルーズ上院議員(21時間)が思い出されます。

クルーズは当時、オバマケア反対のフィリバスターとして長時間の演説を行い、政府閉鎖を主導。1年生議員ながら大いに名を上げました。なおクルーズは先週アジアを歴訪しており、日本では安倍首相、台湾では蔡英文総統と会いましたが、香港では林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に会談をドタキャンされました(笑)。

米国には長時間の演説によるフィリバスターが称えられる文化がありますが、それは名画『スミス都に行く』(フランク・キャプラ監督、1939年公開)のイメージも影響しています。

Mr. Smith Goes To Washington – Trailer

この映画は田舎の青年が突然連邦議員になるという『国民のしもべ』にそっくりな話ですが、劇中でジェームズ・ステュアート演じるスミス議員は24時間を超える演説を行います。

ちなみに現実にもこの長さの演説をした人がいました。57年にストローム・サーモンド議員が公民権法に反対して24時間18分の演説を行っており、これがフィリバスターの最長記録とされています。

なおサーモンドは100歳で亡くなる直前まで上院議員を務めていました。私はその頃米国に住んでいたのですが、サーモンドは、人種隔離政策を主張しながら、死後にアフリカ系のメイドとの間に隠し子がいたことが分かり(娘は父の名誉のために死去するまで秘密を守った)、当時は大きなニュースになりました。以下の記事で述べたトマス・ジェファーソンを思い出させるエピソードでした。

「シャーロッツビル事件と南部の文化」(17/8/24)

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2 comments on “米軍のシリアからの撤退とトルコのクルド攻撃
  1. KB より:
    スッキリ、腹落ちしました

    おかげさまでスッキリ理解できました。
    揺らぐトランプの態度のワケも、二転三転するエルドアンの対応の理由も、腹落ちしました。
    メルマガで言及されている、エルドアンからトランプへの働きかけも、全くその通りになっているなぁ、と言う印象です。(言ったら、プロレスみたいな…)
    複雑なクルドを整理していただいたのも、感謝です。
    ゼレンスキー、俳優の時より哀愁が漂っていて、カッコいいですねぇ。会場が突飛すぎて、一瞬、どこにいるのかわかりませんでしたが(笑)

  2. china より:
    丁寧な洞察

    今回も面白く読ませて頂きました。
    制裁も「制裁を行った」という事実だけではなく、その中身をきちんと見ていく事が大切なのですね。ついついトランプの勢いに騙されそうになりますけれど、その実は骨抜き制裁だった・・なんて、メルマガを読まなければ気が付かなかった事実です。
    ツイート頂いたトルコとシリアの停戦合意も然り。
    https://twitter.com/JDWorldBriefing/status/1184985991766892544

    あと、事が起こった前後で誰とコミュニケーションをとっているか、誰とホットラインを繋いでいるか、というあたりを注意深く見ていく事も大事だなと思いました。そういった細かい事実を丁寧に拾いあげることがニュースの本質に迫るための近道なのかなと思います。プーチン・エルドアンの電話会談で提案されていたロシア訪問は22日に決まったようですね。それにしても今回はロシアの存在感が光っているように感じます。

    今回のシリア侵攻決定から侵攻後のエルドアンの発言を見ていてえらく強気だなと思っていたのですが、やはり政権基盤の変化が影響していましたか。古今東西、内側で困ったら外側、なのですね。皆考えることは同じなのかな。

    エバンジェリカルからの批判にはそういった意味合いがあったのですね。ただ単にトランプの決定を倫理的な観点から批判しているのだと思っていました。トルコ軍事行動後のトランプのブレは、まさに彼の動揺ですよね。とても動揺しているように感じるので、周囲の反応が当初の目論見と大分違ったのだろうなと思います。
    やはりウクライナゲートが持ち上がってからストレスフルなのでしょうか。何だか精彩を欠いているようにも感じます。政治の「天才」はこのピンチを上手く乗り切ることが出来るでしょうか。

    これまでの歴史もあり、周辺国の思惑もあり、複雑な関係の上に成り立っているのが中東であるということは分かっているのですが、それでもやはり今回はクルド人への同情を禁じ得ません。国を持たない流浪の民がまた窮地に追いやられてしまうことになったように感じます。トランプの主張にも一理あると思いますが、米軍を引き上げるにしてももっとやり方というものがあったでしょうし、今回みたいに一方的にエルドアンに資するようなやり方はあんまりだなと感じます。ISIS掃討ではかなり力を借りているはずなのに。当事者ではない私ですらそう思ってしまうくらいですから、今回この件で怒りの声を上げている人は本当に心の底から怒っているのだろうなと思います。

    あ、JDさんのページの右側にツイッターのタイムラインが搭載されましたね。編集部さんありがとうございます。

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