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2015/06/30 00:00  | 韓国・北朝鮮 |  コメント(7)

武藤正敏『日韓対立の真相』


先週の日韓国交正常化50周年。久しぶりに友好的なムードを演出できて、まあ良かったというところですね。ということで、今回ご紹介するのはこの本です。

武藤正敏『日韓対立の真相』

2012年まで在韓国大使を務めた外交官による日韓関係論です。著者は、外務省では数少ないコリアン・スクール(韓国語研修)のキャリア外務省員です(意外に思われるかもしれませんが、韓国語ができる大使というのは非常にレアです)。本省はもちろん韓国駐在経験も豊富という、外務省きっての朝鮮専門家です。

中国語などを専門とする外務省員は、その国に対して甘い目線を向けてしまうと言われますが、この本の著者は、かなり思い切った言葉で韓国の問題点を指摘しており、偏った印象を受けることはありません。同時に、日本側の課題(嫌韓感情の高まり)も率直に指摘しており、バランスのとれた議論を展開します。そこに違和感はありません。

個人的には、日本と韓国は、お互いにガチンコでぶつかるべき事情もなく、同じ方向を向いて協力できる関係にあると思っています。ここは中国とは決定的に違うところです。本来であれば、日韓は、米国を介して同盟関係を結ぶこともできる関係にすらあります。最近の日韓関係の惨状は、韓国側の責任によるところが大きいですが、韓国の不合理な振る舞いに目くじらを立てて嫌韓感情を高める状況も残念というか、ちょっと情けない感じがします。

韓国人の感情的な振る舞いについて、本書には、韓国人は「アタマではなくハートで考える」という指摘があります。これは韓国人のメンタリティを表現する「恨(ハン)」とか「情(ジョン)」に通じる指摘と思いますが、実体験に照らしても共感するところです。

この傾向は外交にも現れるわけですが、一つの例を挙げれば竹島の問題。「南シナ海の領有権問題」で、領土問題は、実効支配を確立した者の勝ち逃げになると書きました。文句がある方は裁判所に訴えようと言いますが、実効支配をしている方には何のメリットもないので、受け入れるわけがなく、現状がそのまま続くことになるからです。

したがって、通常、実効支配をしている側は、相手がどのような領有権の主張をしようが、泰然と構えて放っておけば良いのです。実効支配している側としては、そこに「領有権をめぐる問題」など存在していない、という態度をとることがベストです。下手に相手にして反論などすると、「領有権をめぐる問題」が生じていることを明らかにしてしまうことになるので、得策ではありません。ひたすら無視をするのが正解です。北方領土を実効支配しているロシア、尖閣諸島を実効支配している日本は、いずれもこういうスタンスをとっています。

ところが、竹島を実効支配している韓国が奇妙なのは、日本が領有権の主張をすると異常な敵意をむき出しにしてくるところです。「領土問題」として考えれば、このように問題を大きくすることで得をすることはないのに、なぜか攻撃的になるのです。これは、本書も述べているとおり、「領土問題」を「歴史問題」にしてしまっていることが大きな原因ですが、根っこには、日本に対する強烈な対抗心があって、それが理性的判断を妨げるのでしょう。

こうした韓国人の考え方を理解すれば、挑発的な言動に接しても、かわいいものだと思って、冷静に対応できるでしょう。ここで腹を立てて相手の土俵に立ってガチでぶつかっても、何も得るものはありません。日韓が衝突することで得をするのは中国です。本書は、中国の台頭が日韓の分断を招いたことを的確に指摘しています。

もちろん、譲れないところを譲るべきではありませんから、従軍慰安婦の問題も、日韓基本条約で決着済み、アジア女性基金を含め真摯な対応をしてきたことを繰り返すという、これまでの方針を変える必要はありません。

本書は、1992年の宮沢総理の訪韓のとき朝日新聞が誤報を出し、韓国側の最悪の対応を招いたことが嫌韓感情の出発点になった点を説明しています。重要な指摘です。こういう軽はずみでミスリーディングな愚挙は論外ですが、相手に阿るような行動をとる必要はまったくありませんし、そうすべきでもありません。

そんなわけで、記述はシンプルですが、コンパクトで分かりやすく、最新の事情までおさえてあるので、色々と考え方のヒントを得られる本と思います。

余談ですが、本書には、著者が外務省に入省した年から、韓国人青年を日本に招聘する「青少年交流」プログラムが始まったとの記載があります。実はこのプログラム、私も外務省に入って1年目に担当しました。著者は、このときに来日した韓国人の女性が非常に魅力的だったことを書いていますが、私も同じような思いを抱きました(笑)。

余談を続けると、私は青年たちを母校の空手部に連れて行き、空手体験をさせるという企画を組み込みました。当日、私の後輩の空手部員と一緒に練習を始めたところ、青年の中にはテコンドーをやっている男性がいて、練習が熱を帯びるにつれ、この青年が空手部員と組手(試合)をしたいと言い始めました。これ自体はある程度予想できたのですが、組手が始まると、相手をした空手部員の後輩は空気を読まず上段回し蹴りを浴びせ、韓国人青年を流血させるという不測の事態。幸い事故にはなりませんでしたが(なったのか?笑)。

そのあと、福岡に一緒に行って記憶がなくなるまで飲んだりして、これも不測の事態がありましたが、韓国人青年の熱情を身をもって体感することができ、なかなか得がたい経験でした。ちなみに空気を読めない空手部員の後輩は、翌年外務省に入り、1年目から北朝鮮を担当しました(笑)。

ちなみにこのプログラムでは、韓国専門家との対談も企画しており、産経新聞の黒田勝弘氏にお願いすることも検討しました(最終的には都合あわず別の方にお願いしたのですが)。同氏の『韓国 反日感情の正体』は韓国人の考え方を知る上で非常に参考になる本なので、別途紹介したいと思います。

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7 comments on “武藤正敏『日韓対立の真相』
  1. ペルドン より:
    JDさん

    ストックホルムのクラブで・・日本人と思い声かけたら・・韓国人だ・・日本人は嫌いだと言われた経験が、昔ある。日本人が間違える程だから、目を三角にする程の事ではないと思うけれど、千年の恨みとか大統領が言い始めると・・千年の恨みと認識が出る。

    竹島は国際法的には日本領だから、相手が応諾しなくとも国際司法裁判所にネチネチ提訴すればいい。
    いずれにせよ、双方敵にしない方が良い民族だから・・
    問題は北が崩壊した時、崩壊の気配を見せる時・・難民が出た時(今年は百年の不作とか)対策が出来上がっていると思うけれど・・それもないと言われたら怖いな・・・(笑

  2. you-king より:
    Q&Aお願いします

    昨日だったか?ニュースで日本の個人金融資産が1700兆円に達したとか。
    つい最近までは1600円兆円で、20年くらい前までは、1200兆円とか言ってたような気がするのですが。
    社会人になり15年ほどが経過しましたが、そんなに給与水準が上がったような実感はありませんし、株で資産が増えた❗という人も身近にはそんなにいません。
    自分としては、国債の発行額が、公的年金となり、消費しない年金受給者が結果として貯蓄してるのではないかと推測するのですが、実際は何が要因なのでしょうか?

  3. volcano より:
    同盟

    韓国は重要な軍事機密を中国に流している。それはアメリカも把握している。イザ戦争になれば南北朝鮮とも将軍が真っ先にトンズラする国。ただ弱い相手には、とことん残虐になれる民族。
    日米とも腹の中では同盟に懐疑的部分があるんじゃござーせんか?

  4. volcano より:
    質問

    河野談話

    慰安婦の問題。
    「慰安婦と称する婦人に一切質問してはならない。証拠は何もないが強制も含め、もし日本政府が認めてくれたなら以後ギャアギャア騒ぐことはない」
    この韓国側の言葉を信じた宮澤政権。
    朝鮮人の特性を知っていれば、信ずるのは愚かなこと。外務省の朝鮮専門家は適切な助言をしたのでせうか?

  5. JFKD より:
    休戦状態という均衡

    戦後、日米中露とも朝鮮民族についてはこういう共通認識を持っているので、六か国協議という形をとり、倒れそうな北朝鮮をなんとか支える努力をしているのだと思います。北朝鮮の資源狙いもあるとは思いますが、統一は均衡による平和を失うので米中とも望んでいないように見受けられるのですが、最悪、北朝鮮による統一でもいいと内心思い出す国が出る気もします。

  6. Audley End より:
    韓国の人たちの

    国民性と価値観は、日本人とかなり違うという印象があります。最も驚いたのは、「公」と「私」の境目がかなり希薄、更に言えば、「自分と「他人」、「リアル」と「バーチャル」の境界があいまいなことです。

    もしかすると、歴史的、民族的な背景に起因する、ある種の生存本能と自己防衛本能が働いているのかもしれませんが、これが、あらゆることを、ややこしくしている原因のひとつであるような気がしています。表面には見えてこないものなので、なおさらです。

    たぶん無意識に行われている、この心の動きと思考回路は、「和の精神を尊ぶ」日本人である私にも理解不能なので、個人主義が日本よりはるかに徹底している欧米の人たちには、想像すらできないものかもしれません。まさに真逆ですものね。

    中国の人たちの国民性と価値観も、日本人とはかなり違いますが、同じ「反日」でも、その目的と、基本となっている考え方は、中国と韓国ではだいぶ違うんじゃないかな~と感じています。いずれにしても、中国と韓国に対して、甘い考えは一切持っていません。

  7. sissi より:
    分析を

    大変興味深く、勉強になる分析をありがとうございます。
    Kindleで購入できるのはありがたく、早速著作を2冊購入いたしました。
    毎度、大統領が暗殺されるのも分かるような気がいたします。
    国際舞台に上ってきた時期も、意外に遅いですね。
    IMFの監督下の時期が長くて。

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