2015/05/29 00:00 | 中東 | コメント(1)
トルコの政策金利据え置きと総選挙
■ トルコ中銀が主要政策金利を据え置き、総選挙控え(5月20日付ロイター記事)
トルコの政策金利については、かねてから、景気対策のため利下げを主張するエルドアン大統領と、リラ安を懸念して少なくとも現状維持を守りたいバシュチュ中銀総裁、ババジャン副首相との間で激しい意見の対立が生じていました。
エルドアンは、首相を3期11年務め、その間すべての選挙で連戦連勝、強力なリーダーシップをもってトルコの経済発展と宗教的保守化を実現させた、トルコ史上に残るであろう稀代のリーダーです。所属政党であるAKPが首相の4選を禁止していため、今度はトルコ初の直接選挙(直前に政争のゴタゴタの中で憲法改正があり、導入されたもの)により大統領となりました。
エルドアンの次の野望は、憲法改正により、現在名誉職に近い(といってもある程度権限が強化されていますが)大統領の権限を米国の大統領並みにして、皇帝(スルタン)のごとく君臨することです。それが実現するかは6月に予定されている総選挙にかかっています。憲法改正は、3分の2の多数決、あるいは国民投票を経るのであれば60%の多数決で可能となります。
AKPがどれだけの議席を得られるのか、一つの鍵を握るのはクルド政党HDPへの支持がどれだけ集まるかです。トルコでは、10%以上の得票率を得ないと政党に議席が認められません。
このためHDPは、これまでは政党として選挙に臨むことを諦め、すべて候補者が独立の立場で出馬していましたが、今回は、デミルタシュHDP党首の人気やクルドの英雄オジャランPKK党首とトルコの間の交渉が停滞している状況もあり、政党として選挙に臨むというギャンブルに出ました。
仮にHDPの得票率が10%を超えれば、AKPは議席をいくつか失い、憲法改正に必要な議席数を得ることが難しくなります。その一方で、最新の世論調査によれば、AKPは過半数もとることができないとの見通し。
■ トルコ総選挙、景気減速で与党AKPが苦戦へ(5月26日付ロイター記事)
こうなると、憲法改正どころか、単独政権の維持すらあやうくなる状況です。エルドアンの夢もここまででしょうか。
さて、政策金利の話に戻ると、仮にAKPが勝利し(憲法改正ができるかはともかく)エルドアンが権力を強めることになれば、かねてからエルドアンが猛烈に批判しているバシュチュ中銀総裁、ババジャン副首相が更迭される可能性は極めて高くなります。
この2人は経済運営のエキスパートとして、国内外で高い信頼を寄せられており、仮に退任することになれば、投資家がトルコを見る目は極めて厳しくなります。エルドアンが皇帝になるかどうかは、言うまでもなくトルコ政治を大きくゆるがす大問題ですが、同時に、トルコ経済を直撃する問題にもなります。
ということで、6月の総選挙はトルコの将来を決定づける歴史的な選挙となります。トルコについては注目すべき点が多いので近いうち詳しく解説します。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
One comment on “トルコの政策金利据え置きと総選挙”
コメントを書く
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
ロシアからの接近・・
キプロス沖の海底ガス田・・
あちらもこちらも・・
色目遣い・・
いずれにせよ・・
六月の総選挙には・・間に合いそうにない・・
どうなるでしょうか・・・(笑