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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/11/08 05:00  | スポーツ |  コメント(4)

木村政彦の伝説


米国中間選挙は、上院は共和党が過半数維持、下院は民主党が過半数奪還。サプライズはありませんでした。

私がとにかく心配だったのは、接戦のため当日では過半数が決まらず、下手をしたら12月のルイジアナの本選まで持ち越されることでした。そうなると資料も説明もすべて「subject to change(変更あれば修正)」となり、歯切れが悪い上、この先データを何度もアップデートすることになってしまいます。これは、本当に面倒くさい(笑)。なので、結果さえ判明すればあとは何でも良い・・という心境でした(笑)。

勝敗が決まったのは良かったのですが、ある意味で最も無難な結果になり、物足りなかったともいえます。個人的にはせめてテキサスでワンチャンスあれば面白いと思っていたのですが・・何にせよ、詳細な分析は来週お伝えします。

さて、先月のブラジル大統領選ではジャイル・ボルソナロが予想どおり勝利をおさめました。来年1月に大統領に就任します。

「ブラジル大統領選挙でのボルソナロ勝利」(11/5)

そのボルソナロ次期大統領、決選投票の直前に「グレイシー柔術」の名誉黒帯を授与されたとのこと。

グレイシー柔術の名誉黒帯取得、ブラジル大統領選の極右候補(10月26日付AFP)

格闘技の名誉段位は、その格闘技をやっているかどうかに関係なく、政治家に贈られることがよくあります。私自身も、故・橋本龍太郎氏が空手の経験がなかった(剣道には打ち込んでいた)にもかわらず、空手の名誉五段を授与される式典に出たことがあります。

それはさておき、グレイシー柔術といえば、90年代に総合格闘技がブームになったころ、一躍「世界最強」の地位を確立した格闘技です。ヒクソン・グレイシーホイス・グレイシーらの強さは圧倒的で、空手、柔道、キックボクシング、レスリングなどあらゆる格闘技が撃破されました。

しかし、あの圧倒的な強さを誇るヒクソンやホイスの父で、グレイシー柔術の創始者だった人物を、戦後間もない頃、彼の地ブラジルで破った日本人がいたことをご存知でしょうか。

男の名は木村政彦。「力道山に敗れた柔道家」として名前を聞いたことがあるかもしれません。力道山戦の無残な姿や「プロ柔道」を立ち上げ失敗したなどから、戦後柔道界では事実上抹殺された人物です。しかし、その実像は、「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」といわれ、力道山など及びもつかないほどの名声をとどろかせた不世出の武道家でした。

ということで、今回はブラジル大統領選とは関係なく(笑)、力道山と講道館のために歴史から葬られた「史上最強の柔道家」木村政彦をご紹介します。その人生を見ることは昭和史の一側面を振り返ることにもなります。

なお、この記事を書くにあたっては、かなりの部分を増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』を参考にしました。優れたノンフィクションです。一読をお勧めします。

※ここから先はメルマガで解説します。アウトラインは以下のとおりです。

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木村政彦の伝説
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●15年間不敗の男
●グレイシーとの対戦
●不遇の晩年から伝説へ

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あとがき
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こういうスポーツ(武道)の記事を書くのは私にしてはめずらしい・・と思う方もいるかもしれません。ぐっちーさんの日本シリーズ評に影響された・・というわけではないですが(笑)、記事でセオドア・ルーズベルト石原莞爾に言及したように、一流のスポーツ選手、武道家、芸術家といった文化人は、歴史の中で政治と接点をもち、思わぬ活躍をしています。たとえば山口昌男『「敗者」の思想史』『挫折の昭和史』などを読むとその一端が分かるでしょう。

本メルマガも、映画やドラマ、音楽などを取り上げることがありますが、こうした文化の動きも、政治や社会を読み解く上で重要なヒントになります。これからも、こうした分野のクロスオーバーを折につけ取り上げたいと思います。

ところでぐっちーさんの日本シリーズ評で工藤監督の采配を高く評価していましたが、私も、日本シリーズで無敵の強さを誇った80~90年代の西武を思い出し、強くうなずきました。たとえば先発投手だった武田の中継ぎ起用。これは、かつて西武が日本シリーズではエース東尾を中継ぎに起用していたこととかぶりますね。

ここぞという場面でピンチを抑えるエースの実力もさることながら、その劇的な演出が大いに試合を盛り上げました。おそらく選手たちも奮い立ったことでしょう。巨人も、江川や西本をリリーフに立てて、これはこれで見ている者を興奮させましたが、西武のようにうまくはいきませんでした。短期決戦では、こういう選手層の厚さはもちろん、それをここぞというタイミングで使い切る手腕に大きく影響されるということですね。

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4 comments on “木村政彦の伝説
  1. KB より
    繰り出す技

    喧騒から一夜明け、今朝の趣のあるこの記事
    全く知らない人物で、格闘技とも無縁ですが、引き込まれました。
    そして、Amazonをポチッ、ポチッと・・・(笑)
    JDさんの技(引き出し)の多彩さ、絶対黒帯ですね。。。

  2. ペルドン より
    木村政彦

    力道山に木村が破れた中継も・・
    テレビで見ていた。幼かったが・・無様に木村が空手チョップに打ちのめされる記憶が残っている。何故か分からないが・・凄く失望した。
    成長して木村の真の強さを読み・・何故木村が破れたのか・「カネだな」と決め打ちした。『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』も知っているが・・多分そんな処が書いてあるのだろうと思ったから・読まなかった。
    本当はどうだったんだろう・?・・・( ^ω^)

  3. 健太 より
    プロレス

     確か1968年ごろアメリカ人が書いた書物に、新書だったと思うが、移住した日本人の多くがが格闘技がすきだから、それを日本に普及させようとして、力道山をアメリカへ呼び、プロレスで育てたとかいてあった。その後力道山は増長して、その人を無碍にした、其れが残念だと書いてあった。
     日本人のある種の暴力性を見抜いていたと言うことでしょう。

     何で読んだ忘れたが、はじめから手はずが決まっていたようですが、それを力道山が守らないので変だと思ううちに、たたきめされたとあった。

      我が国の戦国時代以前は村と村がそれこそ戦いをしており、中世が平和だったというのは幻想に過ぎない、其れが徳川家康によって納まり、綱吉によって平和な世界が実現したのが実情のようです。
     われわれの頭にある江戸時代は1750年以降の世界で、それ以前は別世界と見たほうが良いと言うのは最近の読書の結果です。

     ちなみに戦前の我が国を外国は暗殺でないと物事が進まない国と見ていた。
    局長クラスも暗殺されていたようです。

     今も基本的には同じでしょう。知事の交代によって進むのが普通で、議論で進むことは少ないのでは?

     戦前の我が国の外交は支那の利を取るかアメリカの利をとるかの選択に過ぎなかったという見方は合理性があると思う。国防と言うのは中身のない事でした。何を守るのかに対する具体的な回答がないからです。
     特攻隊員の遺書を読むと其れがわかるが、読解に難しいものがある。また戦犯で処刑された人々の遺書を読むと、わかると思う。その読解もむずかしい。

    アジア解放とか色々な思想的なものより、別なものが働いていると思う。これは今も同じで、わが国は商売の国家、通商の国家と言うのが基本ではないかと思う。

     そこで問題は靖国神社でしょう。戦前に成長した人は靖国に複雑な感情を持っている。父親は亡くなる一年前に、<靖国行く?>とたずねるとと言うので、家族で行った。東京駅は工事中で見えなかったが、靖国へ入った。戦後初めていった。それまではたずねても、行かないということでした。

    <ああこれで>と言ったことは忘れられない。

     朝鮮半島はますます混乱する、明治のときもおなじだった。日清日露戦争がそのために戦われたことを忘れている、日本人にはいかなる運命が訪れるか?

  4. 下北のねこ より
    つい買ってしまったけど(´;ω;`)

    最初のジャイアント馬場が出てくるシーンから、もうこれは面白いなと思わせる雰囲気でワクワクしたのですが、考えてみれば、この本、どんな公立図書館にも確実にあるレベルの本ですね。オガール紫波図書館どころか岩手県立、盛岡市立どちらにも普通にありました。
    上巻を買って読み始めて気付きました。
    文庫本でも厚くて高いよね。だけど、力作なのも、文章が上手いのも確かです。
    でも、図書館で借りればよかったなあ。(´Д⊂グスン

    力道山の空手チョップとジャイアント馬場の十六文キックって、不思議な技なあって、個人的には思います。あれで最大限の効果を出せるのは、あの二人だけじゃないのかな。特にジャイアント馬場の十六文キックは、ロープに投げて、跳ね返ってくるところに足を上げてるだけなんて、輪島ちゃんの日大卒業論文、下手投げのやり方なみに単純です。あれで相手を倒せるなんて、何か技の極意があるんでしょうね。

    野球について、日本シリーズも頭から消えそうなほど、今回のMLBの皆さんに失望中です。この情けなさじゃあ、日本のプロ野球選手のみならず高校生のみなさん、特にピッチャーはこれだったら、僕たちでも大リーグで活躍できるんじゃないか、自分がメジャー行ったら何億もらえるだろう、最初からメジャーに行こうなんて思うに違いありません。そうなったら、日本のプロ野球は空洞化です。
    マイコラスが来てたらなあ。
    柳田選手や秋山選手はすごいけど、メジャーのボールと日本のボール、反発係数の違いはどれくらいなんだろう?
    なんか、そこだけはちょっと気になりました。

    あと、岡本選手に申告敬遠してたけど、打てないときの岡本選手は絶対打てないんだよ~って、あっちの監督さんに、ああ、教えてあげたかった。

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