2018/08/08 05:00 | 映画・文学・芸術 | コメント(3)
映画『グレイテスト・ショーマン』『ペンタゴン・ペーパーズ』
※本日はメルマガのみ特別レポートを配信しています。
映画『グレイテスト・ショーマン』と『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』を見ました。
『グレイテスト・ショーマン』は、すでに絶賛されている作品なので今さら私が言うまでもないですが、『ラ・ラ・ランド』と同じチームによる音楽が素晴らしかったですね。ストーリーと演出も、「フリークスの見世物小屋」などと呼ばれて社会問題にもなり得る際どいテーマを美しい映像のヒューマンドラマにしており、大胆な挑戦に感心しました。
なお個人的には、同じ題材の映画として『地上最大のショウ』(セシル・B・デミル監督、1952年)と『フリークス』(トッド・ブラウニング監督、1932年)を思い出しましたが、前者は本作と同じ王道エンタメであるのに対し、後者はまさに「フリークスの見世物小屋」を前面に出した怪作です・・決して薦めません(苦笑)。
『ペンタゴン・ペーパーズ』は、夫の自殺という偶然により専業主婦からワシントン・ポストのオーナーになったキャサリン・グラハム(01年死去)が、政権の圧力に屈することなく機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の報道に踏み切る決断を描いた作品です。
今どきの映画らしからぬ、ある意味で古くさい地味なテーマです。「なぜ今さら?スピルバーグが?」と思わなくもありませんが、おそらくトランプ政権によるメディア抑圧が強い問題意識としてあったのでしょう。
ワシントン・ポストとキャサリン・グラハムといえば最も有名なのはウォーターゲート事件ですが、事件で問題となったニクソン政権の盗聴体制が作られた理由の一つはこのペンタゴン・ペーパーズのリーク事件でした。これは物語の最後でもエピローグのように示唆されています。
そのウォーターゲート事件を報道したボブ・ウッドワードは9月に『Fear: Trump in the White House』という新著を上梓するとのこと。タイムリーですね。
作品は、派手な演出はありませんが、とても丁寧に描かれ、古き良き米国映画を思い出すような王道感があり、楽しめました。
なお個人的には、『ブレイキング・バッド』『ベター・コール・ソウル』のソウル(ボブ・オデンカーク)と『ホームランド』のロックハート(トレーシー・レッツ)が出ていたのがうれしかったです。
・「ドラマ『ブレイキング・バッド』」(17/10/6)
また、細かいところですが、物語の終盤で、司法省の法律顧問局からワシントン・ポストに重要な電話がかかってくるとき、同局の担当者が「レンキスト」と名乗りますが、これは後に最高裁判事(長官)になる若き日のウィリアム・レンキストですね(05年死去、後任判事はサミュエル・アリト)。
これら二つの作品は、マイノリティと社会、政府とメディアの関係という古くから存在する問題を現代の価値観と技術から再考したものとみることができると思います。これらの作品が今このタイミングでそれを試みた点を含め、色々と考えさせられました。
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3 comments on “映画『グレイテスト・ショーマン』『ペンタゴン・ペーパーズ』”
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現状のレポートに留まらず、問題点や弱点などを冷静に考察しているところ、とても興味深く読みました。メルマガの醍醐味ですね!
それに、以前の記事も読み返しながら、味わいました!
国の体制と国民性のギャップが、この国の成長を阻んでいるのでしょうか?次回も楽しみです。
そういえば、ベター・コール・ソウル、シーズン4が昨日から始まりましたね!楽しみすぎます(笑)
温故知新ですね・・・
( ^ω^)
アメリカでは“一緒に歌おう(Sing-along)”上映、日本では応援上映も。
はい、わざわざ広島まで、名古屋まで、行きました…笑。
今はまた神戸でやってるようですね…。