2015/05/30 00:00 | 東南アジア | コメント(2)
ロヒンギャ難民とミャンマーの制裁
■ 漂流するロヒンギャ族 迫害拡大の可能性(5月22日付フィナンシャルタイムズ記事(日経新聞訳))
■ Malaysia, Indonesia to let ‘boat people’ come ashore temporarily(5月20日付Reuters記事)
ミャンマーからのロヒンギャ難民をインドネシアとマレーシアが受け入れたとのこと。
ロヒンギャは、ミャンマーのラカイン(アラカン)州と隣接するバングラデシュとの国境地域に居住するイスラム教徒です。ラカイン州には15世紀から居住していたと言われますが、英国植民地時代にベンガル(ラカインとともに英領インドだった)から移住した人々もいます。
ミャンマーには、135の民族が存在し、それらは州名となっている8の主要民族(①ビルマ族、②シャン族(コーカン族、ワ族、パラウン族を含む)、③カレン族、④ラカイン族(アラカン族)、⑤モン族、⑥チン族、⑦カチン族、⑧カヤー族)に分類されますが、ロヒンギャはいずれにも属していません。ラカイン州と隣接するバングラデシュとのつながりが深いことから、ミャンマー人からは「ベンガル人」と呼ばれています。
ロヒンギャは、ミャンマー政府から国民として認められておらず、仏教徒が多数を占めるミャンマー人から迫害を受けています。特に、同じ居住区域に住むラカイン族は、第2次世界大戦において、ロヒンギャが英国側で戦った一方、ラカイン族は日本を支援したことがあるため、深刻な対立関係にあります。
しかも、最近は、仏教徒の過激主義(radical Buddhism)が勢いを増していることもあり、迫害が一層激しくなっています。
■ Nationalists say no to foreign pressure(5月28日付The Myanmar Times記事)
「仏教徒ナショナリスト」が外国からの非難に対抗するための集会を行ったという記事です。迫害を受け続けたロヒンギャは、難民となってバングラデシュ側に流出していましたが、今回は、7000人がボート難民として亡命し、タイ、マレーシア、インドネシアから入国を拒否されたことで問題になったものです。
マレーシア、インドネシアは一時的に受入れを決定しましたが、タイは拒否しました。タイは人身売買(トラフィッキング)が問題になっている国ですが、ロヒンギャ難民の多くが人身売買の被害者となっています。
元々はミャンマーの迫害が問題を生み出しているわけですが、ミャンマー人の偏見、特にラカイン族の迫害はすさまじく、人権の意識の強いアウンサン・スーチーすら、ミャンマー人からの批判をおそれ、ロヒンギャ問題に関与するのを避けているほどです。
この問題は単なる人道上の問題にとどまらず、米国は、人権状況が改善しなければ制裁を継続すると述べています。制裁解除と直接に関連づけられ、国際政治、ビジネスにも重大な影響を与える問題となっているわけです。
最後に、本件とは離れますが、ミャンマーの少数民族についていえば、武装組織との和平交渉は、「東南アジアの不安定化①」で述べたとおり、11月に予定されている総選挙に大きな影響を与える問題です。これについては、また別途詳しく説明したいと思います。
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2 comments on “ロヒンギャ難民とミャンマーの制裁”
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受け入れても・・
期間・・一年・・一年で片付く問題でもなし・・
一年後・・どうなるか・・誰も分からない・・
米国がミャンマーに圧力かけても・・実効力あるかな・?
日本が費用の一部・・負担する以外ないでしょうねぇ・・・
「先進国でもっと難民を受け入れろ。日本はもっと受け入れろ」という声がよく上がりますけど、「民族、言語、宗教などの観点から近い地域に都市を建設してそこで難民を受け容れられるように国際社会はその財政支援とプラン形成をする」というわけにはいかないのでしょうか。
極論になりますが、近隣地域(隣国のバングラディシュや受け入れ表明をしたフィリピンなど)にG7共同管理区域でも建設して、そこで受け入れる方がマシなように思えてしまいます。