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2017/06/13 00:00  | 米国 |  コメント(2)

コミー前FBI長官の議会証言


前FBI長官、解任は捜査阻害が目的と非難 司法妨害に言及せず(6月9日付ロイター)

全米が注目したジェームズ・コミー前FBI長官の議会証言。

エンターテイメントのごとく何が起こるか・・・と期待と不安が交錯した一大イベントでしたが、結果だけ言えば、すでに表に出ていた情報を超えるものはありませんでした。

司法妨害とロシア疑惑、いずれについても、これまで報道で伝えられてきた両者のやりとりが確認されただけです。事実認定レベルでも、コミー・メモの証拠能力には限界があり、これだけをもって事実関係が確定できるものではありません。

したがって、今回の議会証言だけをもって違法行為の認定あるいは弾劾に至ることはあり得ません。つまり、法的な意味で、トランプにとっては、それほど直接的なダメージはなく、とりあえず一安心だったといえます。

ただ、政治的・道義的な意味で、トランプが大きなダメージを負ったことは事実です。

まず事実認定については、ロバート・モラー特別検察官の捜査に委ねられることになりますが、これは非常に時間がかかるでしょう。

トランプは、コミー証言を真っ向から否定しています。ここまで両者の言い分が食い違うと、非常に慎重な捜査が必要になります。

そうなると、司法妨害とロシア疑惑という二つの政権のアキレス腱はそのまま持続し、トランプはその対応に追われ続けます。リークは続き、そのたびに議会とメディアは激しくトランプを非難することになります。

こうなると、政治運営はますます不安定になり、政策の停滞もより悪化します。しかも、国民の支持率も低迷を続け、より悪化することも予想されます。

トランプは、前述のとおりコミー証言を否定していますが、これを信じる人々は極めて少ないでしょう。前FBI長官が議会で宣誓して証言し、メモまで公開しているのです。常識的にみればこれが虚偽とは考えられません。

トランプに対する不信感はますます高まり、共和党も、これでは来年の中間選挙は戦えないと考えるようになるかもしれません。そうなると、弾劾へのスイッチが現実味を増してきます。

ということで、議会証言は直接的なインパクトはありませんが、長期的にはとてつもなく大きなリスクをトランプに負わせたといえます。

まずはモラー特別検察官の捜査次第ですが、この議会証言と合わせ技になる新しい事実が出てくれば、それはリークによって大いに可能性がありますが、トランプ政権は一気に傾く可能性があります。

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2 comments on “コミー前FBI長官の議会証言
  1. ペルドン より
    傾斜わ防ぐには・・

    「ハウス オブ カード」
    以外無いか・・
    いよいよ・・至近距離で始まるか・・
    南無阿弥陀仏か・・
    JD亡命する・・??

  2. 牧神の午後 より
    自滅路線

    トランプ政権の最大のリスク要因は、トランプ氏自身ではないか、と思えます。なにしろ問題を引き起こすリークの元がトランプ氏自身であるケースが多くあるわけですから。

    例えば、PBSのJudy Woodruff女史の現地月曜日の番組によれば、トランプ氏は、特別検察官を廃止する事を考えているとの事。

    この番組の性格から考えて、全くのガセネタとは思えない。

    ミュラー特別検察官を任命したのはローゼンスタイン司法副長官ですから、解任できるのもローゼンスタイン司法副長官。

    大統領が特別検察官を解任するためには、その旨をローゼンスタイン司法副長官に命令しなければならない。

    しかし、ローゼンスタイン司法副長官は、ミュラー特別検察官を任命する際の上院公聴会で、特別検察官の独立性をどうやって担保するのか、と問われ You have my integrity. と見得を切ったわけですから、職を賭して抵抗するでしょう。

    となれば、ミュラー特別検察官と
    ローゼンスタイン司法副長官を同時に解任するしかない。

    これは何だ? ウオーターゲートの再現!

    こういう事を上記のPBSの番組は含みにしている訳で、その源はトランプ氏自身。

    これからも、彼自身が騒動を拡げていき、それが支持率の低下と政策推進の停滞を持続させるのでしょう。

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