2017/06/06 00:00 | 米国 | コメント(3)
トランプ大統領のパリ協定離脱表明
■ トランプ大統領、パリ協定離脱を発表 同盟国や米経済界に波紋(6月2日付ロイター)
世界中を震撼させたトランプ大統領の決断。世界を敵に回した、これでトランプは終わった・・・などといわれていますが、米国の内政面に限って言えば、それほどの驚きはありません。むしろ、ある意味で合理的な判断だったとすらいえます。
まず、そもそも環境問題は選挙戦において大きなイシューにはなりません。メディアは世界のみならず米国でも反対の大合唱が起こっているかのように伝えていますが、有権者に対して大きな影響を与えることはないでしょう。
むしろ、選挙での扱い方によっては、トランプ・共和党に利するとすらいえます。なぜなら、トランプは、「環境対経済」「米国対その他の世界」という価値観の対立の構図に持ち込んでいるからです。
ここでは環境問題への取組み方は問題になりません。メディアはトランプの発言をファクト・チェックにかけて批判していますが、そういう次元の問題ではないのです。
そして、この構図に持ち込めば、選挙戦では十分に勝機があります。実際、共和党の本流の議員ですらトランプの考え方に共鳴している人は多く、この問題に関しては、トランプは孤立していません。
特に、大統領選でトランプを勝たせた重要州の多くは石炭生産州ですから、その支持をこれからもつなぎとめる政治的なメリットは極めて大きいといえます。
米国が正式に離脱できるのは早くても2020年11月4日で、次期大統領選の翌日にあたることから、これを選挙の争点として一つの有利な材料にしようとする狙いも透けて見えます。
さらにいえば、もともとオバマ前政権下で導入された環境規制はトランプ政権でひっくり返されていますから、パリ協定から離脱したからといって米国の環境規制に大きな影響が出るものでもありません。
また、グローバル化している米国企業は引き続き世界標準にしたがったビジネスを進めるでしょう。
ただし、その一方で、外交面でこの決断が与える影響は、もちろん甚大です。
トランプの基本理念は、このHPで何度も述べているとおり、「米国対その他」という敵味方の構図です。価値観の共有や信頼、パートナーシップという考え方はなく、すべては利益の追求と取引のみ。
これまでの米国の政権にそうした面がなかったとはもちろん言いませんが、それでも米国は世界のリーダーであり、同盟国とは信頼関係を築くという点において歴代の政権にブレはありませんでした。それが、大きく揺らいでいます。
これによって、中国が世界的に影響力を高めることが当然に予想されます。
「一帯一路サミット」でも、中国は米国に代わるあらたなグローバル化の担い手となることを高らかに謳いました。環境面でも世界を主導する地位をアピールすることになるでしょう。排出権取引においても、米国がいなければ主導的なプレイヤーになりますから、レトリックにとどまらず、経済的にも大きなメリットを得ることができます。
また、これもこの政権の一つのテーマである内部対立が一段と鮮明になる機会となりました。
いまや政権を左右する政策は、スティーブ・バノン対ジャレッド・クシュナーの主導権争いに委ねられてる状態といわれますが、この数週間のトランプの言動は、そのことを強く示唆するものだったといえます。おそらく次は、対中国外交において両者の激突がトランプの方針を左右するものとなるでしょう。
最近は、ラインス・プリーバス首席補佐官がギリシャ大使に転出するという噂が流れています。プリーバスは政権内でまったく存在感がなく、この地位にあって得るものは何もないでしょう。だからといってこのポストに就きたいという後任の人材もおらず、そのままとどまっている状態。
首席補佐官といえば、大統領の腹心中の腹心が就任し、議会との関係を一手にマネージする、政権における最大の枢要ポストですが、それがこの体たらく。長年米国政治を見ている人たちにしてみれば、想像しがたい事態といえるでしょう。
この政権内での不協和音は、情報機関との対立もあいまって、リークの続出によりさらに激化し、それが政権の方向性をより不透明にすると予想されます。
環境問題のサブスタンスにおいて大きな影響を与えるものではありませんが、トランプ政権の展望をみる上では大いに示唆に富むイベントだったといえます。
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3 comments on “トランプ大統領のパリ協定離脱表明”
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付いてこれない奴は・・
容赦なく・・置いてきぼり・・
スティーブ・バノン対ジャレッド・クシュナー・・
お互いを認めて・・手を組む以外ない・・
より強力になれる・・・
次の目標は・・ヒラリー・・・
・( ^ω^)・・・(笑
トランプが恥も外聞もかなぐり捨てて、中国と同じレベルに立って交渉するというのはある意味コロンブスの卵だ。オバマは頭が固く、中国にとっては最高にありがたい相手だったが。代りに中国が自由貿易・環境配慮・平和志向というオバマのような事を言う笑える事態になってしまった。中国はお株をうばわれたあげく、立派な建前を言う羽目になった。
トランプはAIIBも一帯一路も米国に都合よくディールできればいいだけなので、やばいと思った安倍首相も先手を打って中国にリップサービスし出した。笑
実際は誰もが想像する結果にしかならないのでは。採算と安全がとれない。だから他国に金を出させたいが、今までもいろんな機構で機能していない。アングロサクソンの真似をしても無理だ。
ランドパワーの地域は過酷だ。テロにもなりやすい。結局中国もシーパワーで米国に追いつくしかない。ただ海軍で中国とどの国が組むのだろう。笑 宇宙ではロシアの技術で健闘しているが。
これは米国の素直な正統的考え方なのでは。冷戦からの米国が変わってしまったのだ。国際主義者が米国を乗っ取った感じだ。彼らは中国を育てているが、米国の代りというわけにもいかないだろう。ロシアに対してはプーチンの反撃を食らったので、目の仇にしている。だからトランプのロシア外交を批判する。極めて正統的な外交だと思いますが。
そもそもこんなのアメリカが離脱しようがしまいが現時点もこれからも大勢には影響は殆どないですから、こんなので世界政治に影響を与えるというのもなんだか間抜けな話ですね〜。
パリ協定の米国離脱云々はその本質において実に実にくだらない案件ですよね、、、。