2017/05/23 00:00 | 米国 | コメント(10)
ロシア疑惑とトランプの司法への介入疑惑
先週は、ジェームズ・コミーFBI長官の解任に続いて、トランプ大統領のロシアへの機密漏洩疑惑、コミー長官(当時)へのマイケル・フリン元大統領補佐官に関する捜査終結の要請疑惑、コミー解任のロシアへの説明(「nut job」発言)疑惑と特大リークが連発。
さながら、情報機関・メディアとトランプの全面戦争に突入か・・・とも思われましたが、事実関係の解明はロバート・モラー特別検察官による調査に委ねられることになりました。
トランプにとっては気の休まる話ではありませんが、共和党にとっては救いの手だったといえるでしょう。この一週間の混乱は、トランプ政権発足以来、最大の危機的状況だったといえます。
最もまずかったのは、コミーに対する捜査の終結要請。これが事実とすれば、疑いなく弾劾理由になります。この疑惑を受けて、ホワイトハウスの顧問弁護士は弾劾のメカニズムの整理検討に入ったともいわれています。
最大のポイントはコミーが残したといわれるメモをめぐる事実ということになりそうです。ただ、トランプが当時のコミーに捜査終結を要請したとき、フリンはすでに大統領補佐官を解任されていました。
トランプとしては、「いいやつ」と認めていたフリンをわずか1か月でクビにしたことを忍びなく思っており、このためコミー長官の情に訴えた・・・ともみられています。そうであれば、違法な司法への介入とまでは言えない余地もあり得ます。いずれにしても特別検察官による調査次第です。
ところで、「コミーFBI長官の解任②」のコメント欄で、下北のねこさんとJFKDさんはトランプ擁護のご意見を述べています。実は、これは鋭い指摘です。というのも、米国の世論は今回の騒動をめぐって反トランプで固まっているわけではないからです。
コミーの解任も、機密情報をロシアに伝えたことも、手続き上の問題はありません。トランプが大統領としての権限を正当に行使していることは事実であり、むしろ、コミー長官こそ問題があったということを主張して、トランプの決断を評価する声は結構あります。日本の報道からは見えにくいですが、このような見方が米国内で一つの勢力をなしていることは、決して見逃してはいけない重要な一面です。
また、牧神の午後さんから、「クレムリンゲート」は私の造語ですか?と聞かれています。この言葉はワシントンDC界隈では「クレムリンゲート問題の拡大」を書いた3月頃から聞かれるようになりました。
「Kremlingate」で検索すれば沢山記事が出てきます。もっとも日本語で検索すると、たしかに私のHPしか出ないですね(笑)。最近は、邦字紙は「ロシア疑惑」という表現を使っているようです。それで意味が通るようになっているので、ここでも簡単にそのように書くことにしようかな、と思います。
それにしても、牧神の午後さんからは、今回の件を早くから予想していたことについて、過分なお言葉をいただき、恐縮です。弾劾については、おっしゃるとおり、議員の投票で決まります。したがって、これは法的というよりも本質的には政治的な手続きです。
ご存知のとおり、現在は、共和党議員が上下両院を制しているのがニクソン大統領の時代との大きな違いです。このため、弾劾の蓋然性は極めて低い、という基本構造は変わっていません。
18年中間選挙で民主党が議会を奪回するかどうかが一つの大きなポイントとなります。もちろん、このままでは勝てないと共和党議員が思えば、選挙を待たずして状況は動きます。
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10 comments on “ロシア疑惑とトランプの司法への介入疑惑”
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死中活を求める・・トランプ大統領
恐怖こそわが命・・
死中活を求める・・北の若旦那・・
マケイン・・弾劾反対・・
狂乱こそわが命・・米国マスコミ・・
死中活を求める戦略・・生中死を求める・・双方の核を招き寄せるか・・・
JD・・在京ですね・・・京都に来ませんか・?!
prestia(旧citibank japan)のメルマガでは「ロシアンゲート」という言葉を使っておりました.
日本でも森友・加計問題で、意図的な偏向報道だ。トランプは当選前から酷い報道をされている。日米とも報道機関の質に疑問が持たれる。彼らはなぜこれほど必死に偏向するのか。相当追い込まれているようにさえ見える。トランプ・安倍を叩けという奥の院の指令だという人もいたな。(笑
どうもブレグジット辺りからな気がする。反グローバリズムを恐れているのだろう。シリアでの移民製造を何百万人も創り過ぎ、オバマがそれを傍観していたのが、世界中の人の脳裏に残っているのでは。マスコミの映像の意図的な創り方、例えばいたいけな子供にヤラセをさせたり、油まみれの鳥を関係ない場面で見せたり、いろいろなものがバレてきた。玉石混交のネットの情報の方が信用が増してきた。明らかに報道の意図が解るようになってしまった。トランプは共和党保守もけむたく、仕事をさせないようしているのは事実だが、報道がルール違反なことまでしている印象も確かなものになってきた。ああまたやってるな、という感じだ。こうなれば、もう信用ないですよ。たとえトランプ時代が終わっても、報道記者を見る目がもう変わってしまっていると思う。
いつもお世話になっております。
トランプ大統領が機密情報をロシアに伝えた事は、大統領の権限であるかも知れませんが、伝えたという前科を作ってしまった事に対して、CIAは、大統領にインフォメーションは伝えてもインテリジェンスは伝え辛くなってしまったのではないでしょうか。
それでは、またよろしくお願い致します。
いくつになっても褒められるのは嬉しいものです。
トランプさん、応援ついでに、気になっているのは、もう少し、FBI長官さん始め政府職員をもう少し尊重してほしいなあってことです。
頭のいい人でしょうから、わかってるとは思うのですが、公務員が忠誠を誓うは国や法であって、大統領ではないということです。
前FBI長官さんは、決して悪意はなく苦労してるようにしか見えませんでした。
政党がそれこそ党利党略で動くことがあるのに対して、公務員の意識は国のためという目的の純粋さから意外に高いと思います。
公務員はおだてて、公僕として使いこなすもんです。ああ、田中角栄を教えてあげたい。
トランプさんと相性がいいのは軍ですが、上意下達が徹底している体質が、最高司令官たる大統領という立場の人にはいいんでしょう。
JDさんも「ロシア疑惑」という言葉を使かわれるみたいですが、拘りを持たず決まった流れには従ういかにも公務員的なバランス感覚ですね。それは美点だと思うのですが、個人的には、「クレムリンゲート」の方が言霊があって好きです。
迫力が全く違いますし、本質的にも、ロシアそのものより、中枢部のクレムリンがプーチンさんの意向の元、直接関与している事件です。
それに、何と言っても「ゲート」という言葉の響き。天国の階段という言葉がありますが、地獄は門です。ウォーターゲート事件も名称そのものが見事なキャッチコピーになり、ニクソンさんを追い詰めていったに違いありません。
クレムリン宮殿とつながる門がトランプさんのために開かれ、門をくぐれば下は奈落。
プーチンさんの顔もよく見れば、かなり怖いです。
クワバラクワバラ。
ともあれ、トランプさんにとって、アメリカで「クレムリンゲート」という用語がメインにならなかったのは、かなり良かったのではないでしょうか。
日本の「あっきード」は、なんか茶化した響きなので、まあ、あの程度かなあ。
やっぱ、平和だわ。
先週は、大変な騒ぎになりましたが、トランプ大統領の支持率は影響を受けていません。
なぜか?
トランプ大統領のコアな支持者とされている人達は、クレムリンゲートの報道なぞ読んでいないのです。
例えば、以下の一文はニューヨーク・タイムズからの抜粋ですが、米国民の半分くらいしか理解できないだろうと思います。
The House letter, written by Representative Elijah E. Cummings of Maryland, was made public hours after Mr. Flynn formally rejected a subpoena from senators investigating Russian interference in the 2016 election and chose to instead invoke his right against self-incrimination, a person familiar with his decision said.
まず、文が長い。
次に、subpoenaとかself-incriminationとか日常会話ではお目にかからない単語が出てきます。
更に、この記事は合衆国憲法修正第5条の知識を前提として書かれています。
だから、大統領の支持率には影響しない。影響しないから、この種の報道を否定する人も出てきます。
トランプ大統領のコアな支持者の人達は、活字メディアではなく、ラジオやインターネットから情報を得ています。
有名どころは、Rush Limbaugh、
Alex Jonesといったトークショーのホストでしょうか。
彼等が展開するストーリーは陰謀論ですが、クレムリンが流しているプロパガンダと内容が近い事は、よく指摘されています。
トランプ大統領の頭の中は、どうなっているのでしょう?この手の陰謀論では染まっている可能性を否定できないのではないか、と思ってしまいます。
【2017年5月18日】 米国の金融界や財界は、トランプの続投を望んで
いる。その理由は、トランプが、米国内産業の保護や、金融やエネルギーの大
胆な規制緩和、気前の良い法人減税などを進め、財界や金融界が喜ぶ政策を続
けているからだ。米国(や世界)の株価が最高値を更新し続けている一因は、
このトランプ効果にある。トランプは、財界や金融界に対する気前の良い(腐
敗的、近視眼的な)政策を「贈賄」として使い、経済界がトランプを支持して
トランプ敵視の軍産に対抗するよう仕向けている。だからトランプはしぶとい
トランプさん、ロシアだけじゃなく、フィリピン大統領にも情報を漏らしていたそうですが、単純に国際間の機密情報の扱いに関する慣習を知らなかったんじゃないでしょうか?今週号のアエラで佐藤優氏がサードパーティ・ルールについて触れていましたが、それこそ充分なブリーフィング(この単語の意味は知らない)を受けていなかった可能性があります。
ということは、JDさんを法律顧問に迎えれば簡単に片がつく話だと思います。ぜひ、そうすればと思うのですが、アメリカさん、誰か気が付かないかな。(笑)
大統領に就任する前の発言を集めてみました。
——
We have the president that can’t get anybody to do anything, so he can sign executive orders.
——
We can’t have someone at Oval office who doesn’t understand the meaning of the word “confidential” or “classified.”
——
The world is laughing at us, laughing at the stupidity of our president.
——
This is the collusion and corruption of the highest order.
感慨深いものがあります(笑)
「英当局、テロ事件受け米国との情報共有停止」というニュースがありますが・・・。
情報機関がメディアに機密を流出させまくって米国の国益をキズつけるのは、さすがに問題でしょう。
トランプがロシアに機密を話したというのは法的問題というよりは政治的問題ということですが、政府職員が国家機密をペラペラ漏らすのは政治的問題以前の法的問題では?