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2016/11/04 00:00  | 中国 |  コメント(2)

6中全会


「習氏を「核心」に位置付け、中国6中全会閉幕」(10月27日付ロイター)

現在の中国政治を見る上で最重要イベントである6中全会が閉幕。

6中全会とは、「中央委員会第6回全体会議」の略称です。「中央委員会全体会議」は、5年に1回開かれる共産党全国代表大会(党大会)の間に開かれ、党大会に代行して重要な政策決定を行う会議です。「第6回全体会議」は、直近の党大会から数えて6回目の全体会議を指します。

直近の党大会は、2012年11月に開かれた第18回党大会。このとき選ばれた中央委員が第18期中央委員となり、候補委員とともに中央委員会全体会議のメンバーとなります。

今回の6中全会が注目されるのは、来年の第19回党大会で決定される新体制の布石になるからです。

来年の党大会では、新たに①中央委員(18期は205人)が選出され、さらに中央委員の中から平時において党の政策決定を仕切る政治局のメンバーである②政治局委員(18期は25人)が選出され、さらに政治局委員の中から上位機関である政治局常務委員会のメンバーである③常務委員(18期は7人)が選出されます。

この18期の常務委員7人が現代の中国の最高権力者です。そのメンバーは序列順に以下のとおり。

習近平(63) 党総書記、党軍事委員会主席、国家主席、国家軍事委員会主席 太子党
李克強(61) 国務院総理 共青団派
張徳江(69) 全国人民代表大会常務委員長 江沢民派
兪正声(71) 全国政治協商会議委員会委員長 太子党
劉雲山(69) 党中央書記処常務書記、党中央精神文明建設指導委員会主任、党中央党校校長 江沢民派
王岐山(68) 党中央規律検査委員会書記 太子党
張高麗(70) 国務院常務副総理 江沢民派

このメンバーを見て分かるとおり、現代の中国の権力体制をザックリいうと、習近平派、共青団派、江沢民派の三つの派閥の勢力争いになっています。

そして、習近平派の特徴は、「太子党」特に「紅二代」を中核としていることです。「太子党」は共産党の高級幹部の子弟、いわゆる「二世」ですが、その中でも、革命に参加した幹部の子弟は「紅二代」といわれ、その他の「官二代」とは異なり別格にみられます。

習近平の父は習仲勲、兪正声の父は兪啓威、王岐山の妻の父は姚依林で、いずれも革命に参加し幹部となった人々です。他、劉源上将(父は劉少奇)、李小林(父は李先念)が代表格です。

習近平は、就任当初こそ江沢民派の一メンバーに過ぎず、大した力は発揮できないとみられていましたが、紅二代のネットワークを生かし、他の派閥の実力者を一気に排除して、権力の集中を進めました。

習近平の権力集中のすさまじさを見せつけたのが、江沢民派と共青団派の超大物幹部(薄熙来、周永康、徐才厚・郭伯雄、令計画)の排除(大虎退治)です。

いずれも前常務委員(周永康)、あるいは有力な常務委員候補(薄熙来、令計画)、あるいは軍の実質的なトップ(徐才厚・郭伯雄)という最高レベルの権力者でしたから、苛烈を極める中国の権力闘争史においても、最大級の衝撃を与える事態でした。

これにより、軍・公安・宣伝という最重要部門から他派閥の大物を一掃し、習近平無双の状態に。習近平は、国内の個人崇拝の傾向もあって毛沢東によくなぞらえられますが、この権力闘争の徹底ぶりは、まさに毛沢東の権謀術数を彷彿させるものがありました。

こうして、14年後半には習近平体制が完全に固まったかに見えました。しかし、その後、習近平体制が盤石とはいえないことを示す動きが見えるようになりました。

背景にあるのは、経済の停滞(津上俊哉『巨龍の苦闘』の書評参考)、経済政策の失敗でしょう。李克強(共青団派)との対立も表面化してきました。

14年11月の北京APECの日中首脳会談から好転してきた日中関係が、16年8月の中国漁船の尖閣領海侵入を契機にふたたび不安定化してきたことも、習近平体制の不安定化の一つの現れとみられます。この尖閣領海侵入の時期には、中国の権力者が集まる北戴河会議が開催されていましたから、会議中に反体制派が揺さぶりをかけてきた、という見立てです。

そういう流れの中での6中全会。結果は、上記報道のとおり、習近平を「核心」に位置づけるという決定。

「核心」は、江沢民には呼ばれましたが、胡錦濤には用いられなかった用語。中国語では「唯一の存在」を意味しますから、集団指導体制の中でも別格扱いということになり、習近平一強の体制を内外に明らかにしたといえます。

来年には最後の全体会議である7中全会がありますが、これは党大会の直前に開催されるものですから、今回の6中全会で大きな流れは固まったといってよいでしょう。

そういうわけで、では来年秋の党大会はどうなるか・・・ですが、これは当然のことながら、現時点で見通すことは不可能です。しかし、どの点を見るべきか、ポイントは分かっています。次回、詳しく述べます。

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2 comments on “6中全会
  1. ペルドン より
    核心・・革新・・確信・・確診

    最上階・・
    に立った・・
    素晴らしい・・
    だが・・
    絞首刑の階段かも知れない・・
    としても・・
    これ以上登る階段はない・・降りる階段はあるが・・
    首席・・如何・・なされるのか・・・???

  2. 下北のねこ より
    虎も蠅も

    ドゥテルテさん、オバマさんより習近平さんに、最初から親近感感じてるのはこういうところなんだろうなあ。
    口の悪い、マニラの子に言わせれば、亡命先をキープしてるんでしょってことですが。ヾ(▼ヘ▼;)
    (フィリピンの大統領さんも辞めて無事で済まないケースがあるみたいで、アヨロさんどうなってるんだろう・・・。)

    遠藤誉先生って、ちゃーず(変換できません、上下を合わせて一字にした字と子です。)書かれた人ですよね。傑作だと思います。
    だけど、なんで東京「福祉」大学教授なんだろう??
    なんかすっごい畑違いな気がしますが・・・・・・。

    習近平さん、李克強さんとだけは上手くやってほしいなあ。その限りは大丈夫なような気がします。頭も良くてバランスの取れた方だなあって思います。李克強指数そろそろ改訂版考えられて、外国から見て、信用できる政府公式経済指数を作り出してくれたらいいなって、思ったりしますが、こんな蟻の声は届かないんだろうなあ。
    ともかく、李克強指数みたいに、外から見て客観的でいじることの出来ない数値を組み合わせて、今の経済の実情に合わせたもの考え出すことができそうですが。

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