2016/09/26 00:15 | 米国 | コメント(8)
米国大統領選:第1回テレビ討論会のポイント
ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの直接対決。いよいよ最初の山場が来ました。
今メキシコでダイビングをしているので(笑)、細かくは書けませんが、以下ポイントだけ簡単に述べておきます。
●ビジュアル
ヒラリー・クリントンは、過去にバラック・オバマ、今回はバーニー・サンダースといった、強敵との一騎打ちを無数に経験しています。まさに百戦錬磨のディベーターといえます。
これに対しトランプは、一騎打ちの討論を経験していません。政策論議もまともにやったことがありません。とにかく自分の土俵に引き込み、レトリックを駆使して、巧みに印象操作を行うのがトランプ流です。
トランプ流は予備選の集団討論では持ち味を発揮しましたが、果たして90分間の一騎打ちでどこまで通用するのか。個別の政策論に入ったとき、「アメリカを再び偉大に」、「壁を作る」を繰り返すだけでは、いくらでもヒラリーに押し込まれるでしょう。
一方、テレビ討論会でものを言うのは、言葉より見た目の印象です。
テレビ討論会が初めて行われたのは1960年のケネディ対ニクソン。このとき、ラジオを聞いた人はニクソンが勝ったと思い、テレビを見た人はケネディが勝った(ケネディは黄疸から顔色が日焼けしたように良く見え、ニクソンは汗をかいて顔色が悪く見えた)と思ったというエピソードはよく知られています。
また、ジョージ・H・W・ブッシュは腕時計を頻繁に見たり、アル・ゴアは何度もため息をついた振る舞いが不利に評価されたと言われています。
今回の予備選でも、トランプがジェブ・ブッシュやマルコ・ルビオをやり込めましたが、言葉よりも、表情やジェスチャーが強く印象に残った点は記憶に新しいところと思います。
●失点を防ぐ
近年の大統領選は、政策論では差がつきにくいこともあり、失点の多さで勝負が決まると言われます。したがって、自分の強みを積極的にアピールするよりは、相手の弱みをさらけ出す戦い方をする方が合理的です。
トランプとしては、これまでどおり、トランプ劇場を展開しながら、ヒラリーの弱点である「新鮮味のなさ」、さらに、できれば「信頼できない」面を際立たせたいところです。
一方で、ヒラリーとしては、政策論議をしながら、トランプの実質のなさを追い詰め、焦りを誘い、「大統領にふさわしくない」という弱点をさらけ出すことを狙うとみられます。
ここで気になるのは、最近、トランプの振る舞いが比較的普通になってきたことです。トランプにとって失点を防ぐというためには効果的ですが、得意のトランプ劇場に持ち込む上ではマイナスにも作用する可能性があります。
●テレビ討論会の影響
これだけ言ってから、期待を下げるような話ですが・・(笑)、これまでの大統領選の結果を見ると、実はテレビ討論会は思ったほどに大きな影響を与えていません。
ジョージ・W・ブッシュは、テレビ討論会のパフォーマンスがまったく冴えませんでしたが、最終的に勝利しました。前述のとおり失点を避けるような戦い方になっていることも関係していると考えられます。
今回も、既に述べたとおり、お互いに相手の失点を誘う戦いになると予想されます。しかし、トランプもヒラリーもいずれも、その弱点は既によく知られており、今更という感じは否めません。したがって、どちらが勝つにせよ、大きな影響は及ばないと思われます。
●今回の討論会のポイント
ただ、今回の大統領選に関して注目されるのは、ヒラリーがジリジリ後退している局面が変わるかという点です。
ヒラリーは、クリントン財団、メール問題に関する発言の公開、健康問題の浮上、トランプ支持者への批判により支持率を下げています。最近、自らが一貫してリードしてきた激戦州のうち、フロリダ、オハイオという重要州を含む6州でトランプにリードを許すという結果も出てきました。
一方、トランプも、長きにわたり繰り広げてきた「オバマは米国生まれではない」という主張が誤りだったと認める失態を披露しています。しかし、トランプの支持率は、例によって、暴言と失態があっても下がりません。すでに彼の評価は底を打っており、むしろ、皮肉なことに、普通に振る舞えば評価が上がる余地があるという、奇妙な強みになっています。
こうした状況の中で、ヒラリーとしては、テレビ討論会を流れを変えるチャンスにしたいところです。とはいえ、「選挙戦略」で述べたとおり、ヒラリー圧倒的有利という基本的な構図に変わりはありません。
トランプは、最近リードしてきた上記6激戦州に勝利した上で、ペンシルバニア、バージニア、ノースカロライナ、ミシガンといった重要州で勝たなければ過半数の270をとれません。ヒラリーはこの条件のどれか1つでも崩せば勝てるのですから、トランプが勝つのは至難の業です。
したがってヒラリーとしては、最悪でも現状維持でOKといえます。後退のトレンドを押しとどめればダメ押しができるという立場にあります。
こういう大きな構図をみると、テレビ討論会で攻めなければならないのは、やはりトランプです。しかし、そのトランプは、前述のとおり、どちらかと言えば守りの姿勢に入っています。やむを得ない戦術であり、ヒラリーの自滅に期待という状況です。
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8 comments on “米国大統領選:第1回テレビ討論会のポイント”
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反対出来ない分析・・
しかし・・
それだとあまりにも・・簡単すぎる・・
実際は・・もっと複雑な渦巻きがあって・・
両者とも・・
計算しにくい流れになっているのでは・?・・・(笑
民主党はヒラリーが勝利さえすれば・・倒れてくれても構わない。
副を大統領にして・・ヒラリーよりも容易に動かせる・・操れる・・・
そうですねぺルドンさん、ヒラリー夫婦は今までのしがらみが多過ぎ、当選後どこかでバッサリやられそうですね。
口うるさいおばちゃんにならなければ、大丈夫だと思います。
逆に口うるさいおばちゃんは、みんなから嫌われる典型的な性格の一つです。
ヒラリーがマイノリティーに対する擁護者である限り、トランプさんがいくら煽っても階層間対立に持ち込まれることもないでしょうし、心配なのはやっぱり体調かなあ。
先日の肺炎、非感染性ってところがかえって気になってます。
感染性の肺炎なら、たくさんの人と接する選挙期間中になるのは別に不思議でもなんでもないです。
薬剤性間質性肺炎とかじゃなければいいけど。
なんか、家族揃って健康管理のポイントがちょっとズレていそうな気がします。
予想されていたように・・
トランプが変身した・・
つまり舞台衣装を脱ぎ捨てた・・トレードマークの金髪も地毛に戻した。
ヒラリーが喋っている間・・自分を攻撃している間・・
顔の表情で対抗した・・
ぐっちーが知っている本来のトランプに戻ったわけだ。
に対して
ヒラリーは顔の細やかな表情が出来ない。整形手術を受けているかのように・・
顔が動かない。目だけ強調され・・人相が悪くなる。
演説内容は・・これまでと同じのように思えた。
トランプがヒラリーを押した・・と思える。
専門家JDの意見を訊きたい・・・・(笑
こちらでは夜、リアルタイムで見てましたが、最初の15分を過ぎるころから、トランプがある意味勝手にどんどんひどくなってきました。何度も、何度も完全にヒラリーに操られて、弁解一方という体たらく。はじめこそ、心配していましたが、後半はあまりのひどさに逆にトランプの高齢を思い出してかわいそうになったぐらいですから。ヒラリーファン、トランプ嫌いの私がこういうんですから、すさまじかったです。基本ヒラリーが特別よかったというより、トランプの完全自滅です。民主党は確かにトランプ相手に否定的アドをたくさん売ってますが、相手がトランプの場合、これはみな、本人の過去の言動を流して編集しているだけです。
百歩譲って、昨夜のDebateを見て、トランプに嫌悪感を覚えない女性はまずいないと思います。なかでも一番印象的だったのが、彼が過去、Miss Universeの優勝者をMiss Piggyとよんだり、Piss Housekeeperと呼んだりしたことが取り上げられたのですが、トランプは何を血迷ったのか開けて火曜日の朝のFoxニュースでのインタビューで、そう呼んだのは理由があるてき発言をして、さすがの右翼のFoxのキャスターたちも困ってしまてましたから。
逆に、ヒラリーサイドでは、いつもより一味違った一コマがあり、プラスのバズになってます。’Hillary’s Shimmy’でGoogleしてみてください。昨夜は、Debateの基本さえ分かっていれば本当にあきれるほど、トランプはヒラリーの仕掛けにのってしまっていたのですが、中盤ぐらいで、トランプがヒラリーは気質的に大統領に向いていない、俺のほうが大統領向きの気質だといってしまって、それを受けたヒラリーが思わず、’江、お前がそれ言うの的反応で’思わずにこっとし、肩を揺らしたのです。まあ、ヒラリーにしては公の場にしては珍しく、やったねと思ったのだと思います。まあ、私も勉強と下準備にかけるタイプですから、山掛けがあたったかんですよね。
でも、大事なのは、一部のヒラリー嫌いをのぞいて、これTwitterでバズり、評判いいですよ。
最後に、トランプがやたら鼻をぐずぐず言わせていたのも大きな話題になっています。なぜかというと、コカインの常習者がよくやるのです。90分の長丁場は結局トランプにとってものすごくきつかったのでしょうね。
ちなみに、たとえ税金があがっても、基本市場はヒラリーよりです。ヒラリーの優勢が明らかになってくるにつれて、MarketのFutureがあがり、メキシコのペソ、そしてドルがあがりましたから。
まったくDebateの前はどうなることやらと、びくびくしていたのですが、すこしほっとしました。
アメリカに住んでいる非白人にとって、トランプは笑い事ではありません。まじ、KKKタイプのひとたちの言説が公に受け入れられるようになってきているので。
プロレス的に見ると「技を受けてるトランプ」という感じはありましたね。
プロレスはレスラーが技を受けずに回避しつづけると盛り上がりません。
特に相手がここ一番の大技をだしてきたものをあっさり回避したりすると、
「セコい」「ずるい」「しょっぱい」という評価になってしまいます。
しかし、それまでの小さい技をきちんと受けきっていると、ここ一番で相手の大技を回避した上で返し技一本で勝負を決めるというメイクドラマにできるわけですね。
トランプ氏の作戦はやはりWWE仕込みなのでは?
心理学者の印象評価ではトランプの勝ち。
共和党には、ヒラリーを追い詰める隠し玉があるようです….が、共和党幹部がトランプを大統領にしたくないので迷ってる(笑)。トランプが、最後に大技を決め、3カウントになるか。
トランプって、ほんとうに面と向かって批判されることに耐えられない。この人にとってどうやらDebateの結果はトラウマ化しているようです。実はアメリカ時間金曜日早朝3時過ぎにトランプが放ったTweetが今、すごく話題になってます。彼はなんと、このもとMiss Universeは蓮っ葉で、その証拠にポルノヴィデオを見ろとTweetしたのです。さすがの共和党よりのMorning Showも、あきれ返ってます。すでに事実確認がかかってまして、事実は彼女きわどいReality Showに出たことがある。でもポルノではない。もうひとつはPlayboyに、トップレスの写真が載ったことがある。それだけ。大体トランプの三番目の奥さんも、それよりもっとリスケな過去があったりするのでひどい。私は女ですから、あまりトランプの奥さんのこととか言いたくない。それより3時すぎというのがすごい。トランプほんとうに、コントロールできなくなってしまったのですね。
実はこれ以外にも、ここへきてトランプに不利な事実がやたら出てきてます。一つはキューバのけん。これフロリダのキューバ人をものすごく怒らせるでしょう。もうひとつは、トランプの慈善団体が、ニューヨーク州できちんとした登録をしていなかった件。
なんだかこうなると、出来レースぽくなってきました。なにせDebateの視聴率が過去最高でしたから。正直私もDebateの直前までは、もしトランプが大統領になったらどうしようとおびえだしていたくらいですから。どうも本当に、マスコミはここまでトランプにかなり好きにさせていたみたいです。
でも、それにしてもこのMiss Universeのけんは彼が自分だけで堀た墓穴。ヒラリーなんて、言いたいことを全部我慢して、E-mailのけんは一言あやまっておしまいにしてましたものね。
ここへきて若いWebライターの中にも、ヒラリーの見直しが起きてます。だって、透明じゃないとか、信頼できないとか、すべてイメージと彼女のキャラのつらさからくるもので、事実とは全く逆ですから。
私は、ヒラリーがトルーマンタイプの大統領になるのではと期待してます。それと、例のリーマンショックの落とし前、Wells Fargo がどうやらScapgoatになりそう。