2016/07/06 00:15 | 米国 | コメント(3)
米国大統領選の注目点②:各州の動向
「米国大統領選の注目点①:激戦州」の続きです。
前回は大統領選を見る上でのポイントとして、激戦州の重要性を説明しました。
今回は、まず歴史的に各州がどのような動向をたどってきたのかを押さえたいと思います。
※12年大統領選の結果
(出所:Library of Congress, Geography and Map Division)
過去6回(92年~12年)の選挙を確認しましょう。
●ブルー・ステート
まず、典型的なブルー・ステート、すなわち民主党が過去6回の選挙において全勝した州(18州+DC)と5勝した州(3州)のうち大規模州は以下のとおりです(括弧内の数字は選挙人数)。
・カリフォルニア(55)
・NY(29)
・ペンシルバニア(20)
・イリノイ(20)
・ミシガン(16)
・ニュージャージー(14)
・ワシントン(12)
・マサチューセッツ(11)
・ミネソタ(11)
・メリーランド(10)
・ウィスコンシン(10)
●レッド・ステート
次に、典型的なレッド・ステート、すなわち共和党が過去6回の選挙において全勝した州(13州)と5勝した州(5州)(※)のうち大規模州は以下のとおりです。
・テキサス(38)
・ジョージア(16)※
・ノースカロライナ(15)※
・アリゾナ(11)※
・インディアナ(11)※
・アラバマ(9)
・サウスカロライナ(9)
●スイング・ステート(激戦州)
最後に、スイング・ステート、すなわち民主党もしくは共和党が4勝(それぞれ「※民」、「※共」)、または両党が3勝している州は以下のとおりです。
・フロリダ(29)
・オハイオ(18)(※民)
・バージニア(13)(※共)
・テネシー(11)(※共)
・ミズーリ(10)(※共)
・コロラド(9)(※共)
・ケンタッキー(8)(※共)
・ルイジアナ(8)(※共)
・ネバダ(6)(※民)
・アーカンソー(6)(※共)
・ウエストバージニア(5)(※共)
さらに、特に近年の州の動向に着目すると、大まかな傾向として以下のポイントが指摘できます。
●マイノリティの民主党支持
直近2回の選挙をみると、フロリダ、ネバダ、コロラドといったヒスパニックが多数居住する地域では共和党は勝つことができていません。
ヒスパニックは、すでに米国人口の16%を占め、黒人を超える最大のマイノリティになっています。民主党はこの票を完全におさえています。
もちろん、黒人も多数が民主党支持です。また、女性や若年層も民主党支持者が多い傾向にあります。
●南部での共和党の強さ
南部は伝統的に黒人をはじめとするマイノリティが多く、このため民主党の牙城と言われてきました。これを変えたのが60年代から70年代にかけてのバリー・ゴールドウォーターの台頭、リチャード・ニクソンの「南部戦略」です。
背景にあったのは、民主党政権が進めた公民権運動に対する南部の白人の反発と、北部の白人富裕層の南部への移住です。ゴールドウォーターとニクソンはこれらの保守的な白人の支持を掘り起こすことに成功しました。これによって南部は共和党の牙城に変わります。
この風景を変えたのが92年と96年のビル・クリントンです。アーカンソー州の知事だったクリントンは、ディープ・サウスの5州で勝利し、再び民主党が南部を奪還しました。
しかし、00年と04年のジョージ・W・ブッシュの時代からは再び共和党優勢の時代に入ります。近年の大統領選で民主党が勝利したのはノースカロライナ(08年)、バージニア(08年、12年)だけ。かつてクリントン夫妻が君臨したアーカンソー州も、共和党は、州知事、上院議員、下院議員と完全支配しています。
以上述べた傾向をふまえた上で、これからの時代、米国ではマイノリティと若年層が増加を続けることを考慮すると、現代米国の二大政党制の実像が見えてきます。すなわち、民主党はマイノリティを含む幅広い層を支持基盤とする主流政党、共和党は南部の白人高齢者を支持基盤とする傍流政党になりつつある、というのが現代の趨勢です。
それでは、今回の大統領選ではどの州の動向を特に注目すべきなのか。これは次回に述べます。
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3 comments on “米国大統領選の注目点②:各州の動向”
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二人とも・・
甲乙つけがたい・・不人気・・評判の悪さ・・ギャランティカード無し・・
熱いトタン屋根の猫達の熱い戦い・・
FBIの出方・・???
オバマの優柔不断・・ここにあり・・
ウォーレン・・評判も悪くなった・・
期待を上回る饒舌・・あれでは・・との評価も出た・・
やはり・・野に置け・・上院に置け・・の声・・
ビルの最近の顔・・問題児系・・
ヒラリー・・ボディにヘビー級一発・・効いている・・
意気盛んなのは・・年上のサンダースだけ・・・(笑
銃で決着を・・なんてならない事を・・
それだけは・・平に平に御容赦を・・・
傍流政党である共和党がなんで議会で多数派なんですか?
ヒスパニックや黒人の投票率が低いためでしょうか?
一般的(?)に言われている、今までの共和党主流派(戦争・金融・石油、ブッシュ父子大統領など)は、新興(?)のティーパーティやプアホワイトに押され、共和党支持者の中でも影響力が低下し、加えて墨等からの大量の移民からの支持で民主党に水を明けられつつある(下手したら永遠に勝てない?)趨勢を各州の動向から見せていただき、ありがとうございました。
みんみんさんの質問に私も興味があります。
恐らく、大統領選と議員数のギャップは上下院とも大統領選の集計や投票において重視されている点などの方法に違いがあるため(俗にいう権力分散による相互チェック機能の一環)だと思っています。
どう違うかは、これから調べますw