2015/11/30 00:01 | 中国 | コメント(5)
中国とASEAN①
■東アジア経済連携、年内大筋合意を見送り 自由化率で溝(11月18日付日経記事)
「アジア太平洋地域の自由貿易圏づくりはRCEPや日中韓自由貿易協定(FTA)に比べ、環太平洋経済連携協定(TPP)の先行が鮮明となってきた。・・・先送りするのは10月のTPP大筋合意の影響が大きい。RCEP交渉参加国は貿易戦略の中でRCEPをどう位置づけるか、再検討が必要になったためだ。・・・TPPには東南アジアからシンガポールやマレーシア、ベトナムが参加する。今後インドネシアやフィリピンなど参加に傾く国が増えれば、RCEPは形骸化し、中国はアジア太平洋地域での経済貿易秩序づくりの主導権を失いかねない。緩やかな自由貿易圏にしたいが、国際的な秩序づくりも主導したい中国の出方が焦点となる。」
この展開は「TPPの大筋合意と中国」で指摘したとおりですね。TPPは他の経済連携交渉に大きなインパクトを与えていますが、日本の次の最重要課題は日・EU・EPA。世界的にみれば経済規模の点から最重要といえるのは米・EU・FTA(TTIP)。
いずれにおいても鍵を握るのはEUです。EUは、広範囲にわたり高い関税を維持し、地理的表示、意思決定の遅さなど、課題が山積しており、先進国であるにもかかわらず日米やアジアの国々と比べ遅れをとっていますが、来年からの巻き返しに要注目です。
ところで、TPP、RCEP、さらにAIIBをめぐる最近の動きをとらえて、日米による対中封じ込め戦略であるとか、ASEANがRCEPではなくTPPに乗り換えようとしているのは日米陣営につこうとしているとか、さらに南シナ海の問題にも言及して、ASEANは中国よりも日米に寄りつつある、といった意見を目にします。たしかに、TPP、RCEP、AIIBに政治的意味合いがあることは否定できません。
しかし、これらの経済連携協定やインフラ開発支援、さらに南シナ海をめぐる議論をASEANと中国、日米との間の外交関係を結びつけるのは、短絡的に過ぎます。東南アジア出張中に色々な人に会って感じたことですが、ASEAN各国は、AIIBにせよRCEPにせよ、中国を含む枠組みに対しては格別に高い期待を向けています。
ASEANは、いずれの国においてもインフラ開発を極めて強く重視しています。陸のASEAN(タイ、CLMV)の物流インフラ、インドネシアとフィリピンの電力・輸送・地方開発、シンガポールの都市開発事業の輸出と、それぞれの地域がそれぞれの事情からインフラ開発の重要性を強調しています。
■ASEAN首脳会議、「経済共同体」を討議-テロ、領土紛争も焦点に(11月13日付ウォールストリート・ジャーナル記事)
先日のASEAN首脳会議の主題となった今月末に発足する予定の「ASEAN経済共同体」も、現在は、その経済効果は関税撤廃よりもコネクティビティの向上にあると強調しています。これも膨大なインフラ開発を必要とします。残念なことに、最近の世銀、ADB、日本の経済協力は、この膨大なインフラ需要に十分に応えられるものではありませんでした。
この間隙をついてきたのが中国の一帯一路、シルクロード基金、AIIBです。ASEAN各国にしてみれば、インフラ開発に対する資金提供とプロジェクトは、どんな政策よりもその心にヒットする強い魅力のあるイニシアチブです。
こういった事情を理解せず、中国に対抗すべく、日米が共同してASEANを引っ張りこむという議論は、短絡的というか、実際にASEANの人たちと接したことがない人が唱える机上の空論に過ぎません。ここから本題に入りますが、長くなったので続きは明日述べます。
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5 comments on “中国とASEAN①”
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お金を沢山・・使わせる戦略ではありませんか・?
以前・・書いたのですが・・
痩せた中国を太らせ・・腐敗させてから・・
料理する米欧の戦略があるような・・・(笑
生きて還ってきましたね・・カーゴ室は大した事ないか・・
あそこ・・食事が出ないし・・トイレ・・尿漏れパンツか・・・(笑
導入部だけですでに大変勉強になります。
JDさんはつねに冷静で客観的なのに実務的で現実的でもあり、
大きな投資判断を伴う現場のバランス感覚を感じます。
ご指摘の文脈で考えれば、インドネシアの新幹線ロストも至極納得です。
以前書かれていた、陸のASEANの道路の記事を拝読したとき、
あの地域では道路すらまだ整っていないことに驚きました。
確かに道路もないのに貿易協定どころではありませんよね。
続きが非常に楽しみです!
ありがとうございます。
私の見方は、現実的・実務的すぎて、ジジくさいとかつまらないとか言われそうですが(笑)、面白く感じていただけるとうれしいです。
ベルドンさんが
以前・・書いたという
痩せた国を太らせ・・腐敗させてから・・
料理する米欧の戦略があるような
これって、日本の大バブル失敗の話でしょう?
ノーパン・シャブシャブで、大蔵官僚すっかり
腐敗しました
中国は、日本の成功も失敗も良く知ってますよ
2,3年前ぐっちーが、肉屋を友人と思っている豚、と言っていましたがTPPで日本はそうかもしれませんが、中国にとっては米国は倒すべき育ての親?、しかし両者とも所詮は料理される豚?。しかも中国はもうほとんど食い終わっている?。それとオバマはいくらウォール街のGSから資金を受けていても出身・建前はシカゴの人権派弁護士だったような気がするのですが。確かにGSのジェイ・ロックフェラーはオバマの後見人には見えますが。EUはこれからAIIBで食おうというのは遅すぎるのでは。人民元のSDR採用は料理のどの段階なのか。