2015/11/11 00:00 | 東南アジア | コメント(1)
ミャンマー総選挙:NLDの勝利
■ミャンマー総選挙、スー・チー氏野党圧勝の見通し(11月10日付ロイター記事)
ミャンマー総選挙、投票結果が明らかになってきて、ずいぶん大きく報道されるようになりました。総選挙のポイントは「ミャンマー総選挙」で述べたとおりです。
もともとNLDが勝利することは間違いないとみられていましたから、ここまでは何の驚きもありません。重要なのは、以前に述べたとおり、民選議席の3分の2(332)を超える議席を獲れるかです。
NLDによれば、既に結果が判明している360議席のうち8割を超える294議席を獲得しているそうで、これが本当だとすれば文句のつけようのない圧勝です。しかし選挙管理委員会によればヤンゴンなど一部のビルマ人の多い地域だけが明らかになっている状態とのことですから、今の時点では、本当にそこまでいくのかな?という疑問は残ります。
「ミャンマー総選挙」で述べたとおり、NLDはビルマ人の多い管区では圧倒的な支持を得ていましたが、問題は少数民族州でした。ここが明らかにならない限り本当の結果は分かりません。
それでもUSDPは、テイ・ウー党首代行、シュエマン下院議長(「シュエマンUSDP党首の解任」参照)、多数の現職閣僚といった大物が続々と落選し、惨敗モードであることは間違いありません。明朝ぐらいにはもうNLDの言うとおりの結果が明らかになっているのかもしれません。
ということで、ここではとりあえず、NLDが圧勝し、単独政権を樹立できると仮定しましょう。その場合どうなるかですが、最も注目されるであろう経済政策については「ミャンマー総選挙」で述べました。
今回は、国軍との関係を指摘しておきます。ミャンマーでは、現在においても、国軍が制度的に強い力を維持しています。具体的には、国軍司令官は(「ミャンマー総選挙」で述べたとおり)166人の軍人議員、それに国防大臣、内務大臣、国境大臣の3閣僚を任命することができます。これらの議員と閣僚だけは現役軍人でいることが許されます。
これが「民政移管」したといっても、まだミャンマーが真の「民主国家」とはいえない所以です。そうすると、いくらNLDが単独政権を樹立できるとはいっても、国軍との協力関係を築くことは不可欠になります。ここで問題になってくるのが、アウンサン・スーチーの悲願である憲法改正です。
アウンサン・スーチーが政治家として何よりも重視しているのは、ミャンマーが自由で民主的な国家となることであり、その実現のためには何としても憲法改正を実現する必要があります。具体的には、憲法を改正して、上記の国軍に認められた制度的な権力を取り除くことが第一に考えられます。
しかし、これをやれば真っ向から国軍と激突します。そうなればミャンマーが再び暗黒時代に戻る可能性も否定できません。
NLDの選挙公約は憲法改正を掲げていますが、国軍の権力を取り除くことは触れていません。国軍については、近代的な軍隊にする、と書いてあるだけです。これは、1990年の選挙でNLDが大勝したとき、あまりにも国軍に対抗する姿勢をとって、選挙が無効にされたという経験にかんがみ、国軍を刺激しないようソフト化したものと見てとれます。さすがにNLDにも知恵者がいるようです。
そういうわけで、NLDが国軍とどのような関係を築き、憲法改正に対してどのようなスタンスをとるかがまずは注目されます。
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One comment on “ミャンマー総選挙:NLDの勝利”
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彼女が心底一直線に進めば・・父親の二の舞に陥るでしょうね。
死を恐れず・・勇猛果敢に突き進むか・・・?!