2015/10/29 00:00 | 中央アジア | コメント(2)
中央アジアの新グレート・ゲーム
■ 安倍総理大臣のモンゴル及び中央アジア5か国訪問(10月28日付外務省HP)
総理大臣の中央アジア訪問というと、2006年の小泉首相のカザフスタン、ウズベキスタン訪問が思い出されますね。このとき私は内閣官房にいたこともあり、よくおぼえています。総理大臣の初の中央アジア訪問ということで、大変盛り上がっていました。
そして今回の安倍首相の中央アジア5か国訪問。前回のカザフ、ウズベクに加え、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギスが加わっています。これら3か国の訪問も史上初。非常に意義深いと思います。
両首相に共通して言えるのは、在任期間が長いという点です。日本の総理大臣はとにかく在任期間が短いので、新政権が発足するたび、とりあえずはアジア、米国には行かないといけない、ということになり、他の国々の番が回ってくるときには既に退陣・・・これを繰り返すのがこれまでのパターンでした。
在任期間が長ければ、中央アジアやアフリカにも手が伸びるわけです。長期政権はそれ自体外交においては大きなアドバンテージになります。
今回の訪問が「トップセールス外交」であるとして非難する向きもあるようですが、よく分からないですね。インフラ輸出などのビジネスをトップが売り込むことはどこの国でもやっていることであり、まったく悪いこととは思いませんし、そういう視点でしか見ることができないのは、むしろ批判している人の知見のなさを示しているようなものですね。
中央アジアは、エネルギー、米国・欧州とロシアのせめぎ合い、中東のテロとの関係など、現在の国際情勢を見る上で重要な意味をもっている地域です。
「トルコ系民族の興亡」ではその歴史の一幕を紹介しましたが、中央アジアは19世紀末から20世紀初めに展開された英国とロシアの壮絶な勢力争いの舞台になりました。このときの大国間のせめぎ合いは「グレート・ゲーム」と言われました。
その有様を描いた名著がピーター・ホップカーク『ザ・グレート・ゲーム』です。
現代の中央アジアには、ソ連崩壊後に独立したカザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタンという5つのトゥルク系イスラム国家が存在します。カザフ、ウズベク、トルクメンは石油ガスの一大産地であり、その莫大なエネルギー資源をどのように輸出するかをめぐって各国間で様々な駆け引きが展開されています。これを現代の新たなグレート・ゲームと呼ぶ人もいます。
ここから各国の状況を概観しようと思ったのですが、長くなってしまったので後日に回します。とりあえず、エネルギーに関する現代の状況をつかむにはダニエル・ヤーギン『探求-エネルギーの世紀』が参考になります。
私の記事の方はちょっと先になるかもしれませんが、気を長くしてお待ち下さい。
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2 comments on “中央アジアの新グレート・ゲーム”
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いずれの国も・・
中国とプーチンを刺激するんじゃないのかな・・・(笑
そんなことを気にして手を出さないのはいかがなものでしょうか。
ケリー国務長官も訪問するとの発表。私は昔、外務省で中央アジアに関する日米協議を担当しましたが、国務長官が行くのが初めてとは知りませんでした。グレートゲームの始まりです。