2011/05/02 00:00 | by Konan | コメント(2)
Vol.86 : 大震災と行政
今回は大震災との関係で行政の問題を取り上げます。「縦割り」「スピードや決断力不足」のような問題が何故生じるか、官の一員として解説を試みたいと思います。構造問題と、民主党政権下で加わった問題に分けて整理します。
構造問題はとても根深い問題です。大袈裟に言えば、民主主義の根幹に行き着く問題とも言えます。「縦割り」批判は多方面から聞かれます。しかし、縦割りの解消は不可能です。各省庁の仕事は、各省庁の設置法により国会で定められます。設置法に規定されたことが各省庁の仕事です。各省庁はそれに従い仕事を行ないます。書かれたことは自分の仕事であり、それが縄張りになります。しかし、もっと重要なことは、「書かれていないことはしてはいけない」ということです。国民を代表する国会が官(行政)を統制する仕組みのひとつとして、各省庁設置法が制定される訳で、その枠を超えて各省庁が仕事を始めることは、民主主義の否定を意味します。従って、どのような省庁であっても、設置法で規定されない仕事は決して行ないません。
各省庁の設置法の間に曖昧な重複部分があると(ある仕事がA省、B省2つの設置法それぞれで読み込めてしまう場合)、「縄張り争い」が生じます。他方、ある新たな仕事がどの設置法でもカバーされない「ポテンヒット」の状況が生じると、誰も手を出しません。内閣官房がそうしたポテンヒットを処理するスイーパー機能を果たせば良いのでしょうが、人的資源が余りに不足しています。
なお、原発の監督のように、本来設置法で求められていた仕事を怠っていたような例は論外であり、所管していた経済産業省の解体は真面目に議論されるべき論点と思います。
こうした構造問題が、民主党政権下の政治主導により増幅されています。阪神淡路の対応に比べ遅いと批判されていますが、それは、被災地域がより広域である点による面もありますが、この理由が大きいと思います。自民党政権下では、是非はさて置き次官以下で物が決まりましたが、今は大臣・副大臣等政務三役に伺わないと重要な政策は決まりません。要は意思決定ラインが延びてしまった訳で、意思決定に一段と時間がかかるようになりました。本来は政治決定によるスピード向上、あるいは政治家同士の調整による各省庁間のコーディネーションが期待されたはずですが、現実はそうではありません。
以上2つの問題は極めて根深く、大震災のような問題への対応を難しくします。ただ、前者の問題については、枠組みを変えることは出来なくとも、「気配り」や「勇気」により少しであっても状況を改善することは出来ます。それが今官に求められることと思います。後者について最低限言えることは、実務能力に優れた人を大臣等政務三役に据えるべきということでしょうか。政治家として国会論戦で実績を上げる人が、必ずしも実務に長けていないことは、例えばかつて「ミスター○○」と持て囃された方の例をみても明らかです。
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2 comments on “Vol.86 : 大震災と行政”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
要するに・・
ソフトがなかった・・考えてなかった・・
これは・・
行政よりも・・政治家の怠慢・・
こんな場合・・
行政を知悉している・・実力者が・・あるべき場にあれば・・
あるべき場にあって・・拒否したのは・・
あるべき場に・・あってはいけない・・御お方・・
我等が勤勉というのは・・・???
総理の言葉がよくわからないです。
浜岡原発を止める理由が、理由になっておらず、何を検討して決定したか見えません。
予想され準備してきた地震に対し、突然耐えられませんとは。
脳内地震予知連絡会でも開かれて、答申を受けたため決まったの?って感じでしょうか。
もしかして、地震ノイローゼ?