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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2025/08/18 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.286: 4~6月期GDP


暑い日が続く中、今日が夏休み明けで気が乗らない方も少なくないと思います(私もそうです)。今回は、15日に公表された4~6月期のGDPを紹介します。成長率が予想を上回り、折からのベッセント財務長官発言も相まって、日銀利上げ期待が強まる結果となりました。

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5四半期連続プラス成長
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4~6月期の実質GDPは前期比+0.3%(年率換算+1.0%)のプラス成長となりました。当初マイナス成長だった1~3月期も上方修正されたため、これで5四半期連続のプラス成長です。寄与度は内需-0.1%、外需+0.3%と外需が押し上げた格好です。

内需では、民間最終消費支出が前期比+0.2%(寄与度+0.1%)、設備投資が前期比+1.3%(寄与度+0.2%)、住宅投資が前期比+0.8%(寄与度+0.0%)となりました。他方で、公的需要が前期比-0.3%(寄与度-0.1%)、民間在庫変動も寄与度-0.3%となりました。設備投資が年率換算で5%台とまずまずの伸びとなり、個人消費も実質賃金マイナスにもかかわらず何とかプラスを維持した格好です。

外需は、輸出が前期比+2.0%(寄与度+0.5%)、輸入が前期比+0.6%(寄与度-0.2%)。トランプ関税の影響で輸出の減衰が心配されていましたが、結果的にはプラスに。電子部品・デバイスの好調に加え、自動車についても、輸出価格を抑え数量を維持したと指摘されます。現に名目GDPをみると、輸出は前期比-0.8%となっています。

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今後をどうみるか?
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3カ月前に1~3月期GDPを紹介した際、輸出について以下のように書きました。少なくとも4~6月期について予想を外したことになります。

「輸出については、4~6月期からトランプ関税の影響が本格化してきます。対米輸出の関税は多くの品目で10%、鉄鋼や自動車は25%なので、値上げを通しつつ需要を維持することはさすがに難しく、対米輸出へのマイナスの影響が見込まれます。他国向けも、例えば中国製品との競争激化に見舞われるかもしれません。」

関税が日本や米国の経済・物価に与える影響を機械的に予想することは容易ではありません。企業の価格戦略と、価格変化に対する米国側の需要の弾力性が商品により一律でないからです。例えば関税率15%に対し輸出価格を15%引き下げれば、輸出数量は維持できますし、米国で物価上昇は生じません。ただ、日本企業の収益は打撃を受け、その影響が徐々に日本経済に表れてきます。逆に輸出価格を据え置くと、米国の輸入価格は15%上昇します。それでも需要が減らなければ日本企業は万々歳ですが、米国経済には負の影響が徐々に表れてくるはずです。

現実には、この中間的なことが起きつつある状況と思います。日本株価は最高値を更新し、喜ばしく思います。ただ、1年前にゼロに近かった米国の関税率が二桁になった訳で、とくに米国輸出の依存度が高い企業にとってその対応は容易ではありません。個々の企業の動向を慎重にみていきたいと思います。

今回はこの辺で。

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