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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2025/09/02 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.288: 金融行政方針


今回は、金融庁が8月29日に公表した金融行政方針を簡単に紹介します。

金融行政方針は、伊藤現長官の6代前に当たる森長官時代に作成が開始されました。当初は公表時期が不確定でしたが、最近では8月最終営業日の公表が定着しています。7月人事異動後、翌年の人事異動までの金融庁の方針が示されます。

7月に就任した伊藤長官は、エース級の満を持しての登板という感じでしょうか。平成元年大蔵省入省同期の中でも実力者の一人で、枢要ポストである秘書課長の最長不倒記録保持者と言われます。若い頃は長銀破綻処理に携わり、財務省で活躍後、金融庁に戻りました。その長官が打ち出す方針なので注目を集めましたが、大胆な組織改編という予期せぬ荒業を繰り出しました。

金融庁ホームページを見ると、金融行政方針は「本文」「概要」「主なポイント」の3バージョンが掲載されています。本文や概要の体裁はこれまでと余り変わりませんが、主なポイントは、金融庁の主要方針を端的に示します。具体的には以下の6項目です。

・地域金融力強化プランの策定
・人的資本開示・NISAの一層の充実
・暗号資産・ステーブルコインに関する施策の推進
・協同組織金融機関における適切な経営管理及び業務運営の確保
・保険業界の信頼の回復と健全な発展に向けた対応
・組織体制の不断の見直しと金融行政の進化

地域金融力は、今回初めて使われた言葉と思います。暗号資産等がここまでプレイアップされたことも初めてと思います。協同組織金融機関と保険業界は、最近の保険会社や信用組合を巡る問題への対応の必要性を示します。

そして、組織体制面では、現在の「監督局」「企画市場局」「総合政策局」の3局体制を、「資産運用・保険監督局」「銀行・証券監督局」「企画市場局」「政策統括官(官房担当)」の実質4局体制に再編する方針が示されました。総合政策局の機能は資産運用・保険監督局と政策統括官(官房担当)に移管されます。政策統括官は聞き慣れない言葉ですが、「局」を設けないが実質的に「局長」の役割を果たすポストと理解すれば間違いないと思います。

これは霞が関の常識の中ではかなり高い増員要求の球で、伊藤局長でなければ英断できない荒業と受け止めています。今後に期待します。

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