2025/10/04 08:00 | by Konan | コメント(0)
Vol.292: 短観と月例経済報告
今回は9月29日に公表された内閣府月例経済報告と、10月1日に公表された日銀短観を紹介します。順番は前後しますが、先に短観から。10月30日の金融政策決定会合での利上げ判断を左右すると注目されました。
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どっちつかずの短観
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短観は、利上げの材料にも利上げをしない材料にも使える、どっちつかずの内容でした。アナリストやマスコミの意見も、「これで10月利上げ」説と「12月まで待つ」説に分かれます。
私は関税の影響や来年の春闘の帰趨を見極めるには12月まで待つ方がベターと思います。ただ、既に2人の審議委員が9月に利上げを提案し、別の審議委員までが講演で利上げに言及したことや、米国が本格的に利下げを始めると利上げが円高に作用するリスクもあることなど、10月説を否定するのも難しいところです。
短観に関し、利上げ材料と利上げをしない材料に分けると、以下の通りです。
(利上げ材料)
・大企業製造業の業況判断が13から14へと改善し、関税を巡る不透明感の払拭がうかがわれたこと。
・設備投資額が上方修正され、前年を2桁近く上回る計画になっていること。
・人手不足感が引き続き極めて強く、賃上げ継続を予感させること。
(利上げしない材料)
・業況判断を子細に見ると、大企業鉄鋼、中小企業自動車、大企業宿泊・飲食サービスなどで前回比悪化し、先行き予想も押しなべて悪化方向を見ていること。
・関税の影響を最も受ける大企業製造業加工業種の経常利益が下方修正され、前年比2桁減益を見込むこと。
9月22日に「10月25%、12月45%、1月30%」と書きましたが、もはや来年1月説は風前の灯火。思い切って「10月40%、12月60%」に修正します。
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内閣府は景気判断概ね維持
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内閣府の景気判断は、例えば現状基調判断で前月までの「一部に」が「自動車産業を中心に」に修正されるなどの変化がありました。需要項目でも、個人消費や設備投資の表現がすっきりし、前月より強めの表現となりました。ただ、今は景気判断を変える局面でもなく、概ね維持されたと言ってよいと思います。
(現状)
・基調:景気は、米国の通商政策等による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復している
・個人消費:持ち直しの動きがみられる
・設備投資:緩やかに持ち直している
・住宅建設:建築物省エネ法等改正に伴う駆け込み需要の反動もあり、このところ弱含んでいる
・公共投資:堅調に推移している
・輸出:おおむね横ばいとなっている
(先行き)
・基調:雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクには留意が必要である。加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、金融資本市場の変動等の影響に引き続き注意する必要がある
・個人消費:雇用・所得環境が改善する下で、持ち直していくことが期待される。ただし、消費者マインドの動向に留意する必要がある
・設備投資:これまでの堅調な企業収益や省力化投資への対応等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:当面、弱含みで推移していくと見込まれる
・公共投資:関連予算の執行により、堅調に推移していくことが見込まれる
・輸出:米国の関税引上げによる直接的な影響、通商問題による世界経済を通じた間接的な影響等に留意する必要がある
今回はこの辺で。
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