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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2025/09/08 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.289: 小噺・日銀氷見野副総裁講演


今回は2日に行われた日銀の氷見野副総裁講演のポイントを紹介します。とても分かりやすく、格調高く、多くの論点をカバーしています。ぜひ全文読むことをお勧めしますが、とても親切なことに、論点ごとにまとめパートが置かれています。このうち、経済の見通し(関税の影響)、物価の見通し、金融政策の対応について抜粋すると、以下の通りです。

(経済)
今後についてのメイン・シナリオとしては、各国の通商政策の影響はいずれ顕在化し、海外経済が減速、わが国の企業の収益も下押しされるだろうと見ています。その場合、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、日本経済の成長ペースは鈍化するものと考えられます。ただ、影響が思ったより小さくなる可能性も、大きくなる可能性も、両方考えられるところで、当面は大きくなる可能性の方により注意が必要ではないかと考えています。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、日本経済も成長率を高めていくと見込んでいます。

(物価)
メイン・シナリオとしては、このところの米などの食料品価格上昇の影響はいずれ減衰して、現実のインフレ率は下がっていくと見込んでいます。基調的なインフレ率については2%に向かって徐々に上昇しつつあり、関税による経済下押しの影響を受けて足踏みがあったとしても、いずれ物価安定の目標である2%と概ね整合的な水準で推移するようになるのではないか、と見ています。ただ、既に述べましたように、このシナリオについても、上下双方向のリスクが考えられるところです。

(金融政策)
これまでご説明したような経済・物価のメイン・シナリオが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適切だろうと考えています。ただ、既に申し上げた通り、経済も物価も様々な要因から上下双方向のリスクが考えられます。メイン・シナリオが本当に実現していくかどうかについては、予断を持たずにみていきたいと思います。

以上をまとめると、「慎重に利上げをしていく」と理解できます。実際に、市場は「9月の利上げはないだろう」と受け止め、為替相場は少し円安に動きました。

さて、8月4日に利上げのタイミングに関し、「あえて確率を示せば、9月0%、10月25%、12月35%、1月40%です」と書きました。今時点では、「9月0%、10月10%、12月45%、1月45%」くらいに思っています。

王道は今年同様の1月です。来年の春闘の行方がほぼつかめるからです。10月は短観や支店長会議で景気動向を確認し、展望レポートで考え方を示しつつということになりますが、米中首脳会談が10月末のAPEC首脳会議開催時と予想され、米中関税戦争の行方が決定会合時に定まっていない可能性が大きいと思います。このため確率を下げました。

12月は関税の行方も定まり、もう一度短観を確認できます。先延ばしして思わぬ事態が生じてしまうことを避けたいと思えば、12月利上げも考えられるところです。

どうなるでしょうか?

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