プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2025/10/27 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.295: 小噺・日銀金融システムレポート


今回は、23日に公表された日銀の金融システムレポートを紹介します。毎年4月と10月、金融政策決定会合の直前に公表され、日銀の政策判断の前提のひとつとなる大事なレポートです。旧ひとり言の頃から公表の都度紹介してきましたが、今回は簡潔に説明します。

結論は以下です。

・わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。
・金融仲介活動は円滑に行われている。
・わが国の金融機関は、内外の金融市場や実体経済に大幅な調整が生じるリーマンショック型のストレスなど、様々なストレスに対して耐え得る、充実した資本基盤と安定的な資金調達基盤を有している。

この結論を導く前提としてチェックした論点は以下の4点です。

・トランプ関税など各国の通商政策の影響。個々の企業の業績が関税の影響で悪化したり、世界経済が減速する場合、金融機関にどの程度の影響が及ぶか。
・高騰気味の株価や不動産価格が下落するリスクをどう考えるか。
・内外でプレゼンスを拡大しているヘッジファンド等の海外ノンバンク部門の投資ポジションの巻き戻しが起きる場合、日本の金融市場にどのような影響を及ぼすか。
・金利上昇が金融機関や家計・企業にどの程度の影響を与えるか。

以上の論点を勘案しつつ、以下のリスクシナリオに沿ってわが国金融システムの耐性・頑健性をチェックします。

・金融調整シナリオ:国内外の金融市場においてリーマンショック期並みの調整が発生し、内外の実体経済も大きく悪化するシナリオ
・海外金利上昇シナリオplus:地政学的リスクの顕在化などに伴うグローバルな物価上昇を背景とした、海外金利の上昇と海外経済の減速が生じるシナリオ

そして、冒頭に紹介したように「おおむね大丈夫」との結論を導きます。

今回は「小噺」として以上の極めて簡単な紹介にとどめます。そのうえで2点。

・このレポート、簡単な方から「要旨」「概要」「全文」の3バージョンがあり、とくに全文は読み応えのある大作です。分析のレベルも高く、面白い図表も多くあります。もし時間があれば、覗いてみてください。
・私の感覚では、上記の4つの論点の中では不動産価格と海外ノンバンク部門との連関を日銀は気にしているように見えます。また、少し長い目で見た地域金融機関の生き残りも容易とは思えません。

金融システムのことは最近忘れがちですが、この金融システムレポートや金融庁の金融行政方針をみておくことは引き続き大事と思っています。今回はこの辺で。

メルマガ「CRUのひとり言」を購読するためにはご登録のお手続きが必要です。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。