2010/08/16 00:00 | by Konan | コメント(2)
Vol.49: 欧州ストレステスト
今回も金融ネタです。旧聞の領域ですが、7月下旬に公表された欧州のストレステストに関する感想を簡単に書きたいと思います。本件、基本的にはぐっちーと同意見で、Gucci Post読者には新味がない点、ご容赦下さい。
ストレステストの「本家」は米国。昨年初に実施した当初、様々な批判を受けました。しかし、事後的にみると、ストレステスト後、金融機関の資本増強が進んだことで、「潰れるかもしれない」という危機感は後退し、米国の金融システムは、何とか安定を保っています。バーナンキ議長が、ストレステストの経験を絶賛する内容のスピーチを最近行っていますが、今般の欧州のストレステストの評価においても、「米国は成功したが」と対比されるなど、当初の批判は影を潜めました。
こうした経験を振り返ると、「ストレステスト=儀式」と思わざるを得ません。シナリオの妥当さ、厳しさなどについては、いくらでも批判可能です。今回の欧州のストレステストでも、「経済成長率がベースシナリオ対比3%下振れ」「ソブリン・リスク、すなわち国債の価格が下落するリスクも勘案」といったシナリオについて、当局側が胸を張り、アナリストが批判する構図です。要は、シナリオの妥当さについての議論は、水掛け論に終わってしまいます。
結局のところ、「当局がストレステストを行った。資本が不足する先に増資を求めた。自力で増資出来ない場合、公的資本注入の覚悟を示した」ということこそが重要なのだと思います。その意味で、内容ではなく「やった」「意志を示した」ということ自体が大事で、だからこそ「儀式」と思うわけです。更に言えば、結果が全てであり、どのように批判されようとも、今回の結果公表後、とりあえず市場が落ち着いていることで、良しとすればよいと思います。
ただ、ストレステストの限界を理解しておくことも大事です。第1に、「潰れない」ということの確保がテストの目的なので、「その後、金融機関のビジネスが上手く行き、儲かる」ことは全く保証されません。株式投資家の視点からみると、「株式が紙くずにならない」という安心材料にはなりますが、「値上がりするかどうか」という点の材料にはなりません。
第2に、賞味期限は長くないこと。テストで意識されなかったリスクが顕在化することも、少し長い目でみれば十分あり得ることです。今回のテストでも、スペインなどでは、不動産価格の大幅下落の可能性が織り込まれるなど、相応な周到さがうかがわれます。しかし、シナリオ作りには所詮限界がある訳で、収益がテストの前提対比下振れていく可能性を含め、予期せぬ事態が先々生じる可能性は否定できません。
考えてみると、日本でも1998年後半から集中検査を行い、その結果を踏まえ99年春に公的資本を注入し、一旦金融不安は後退しました。しかし、結局のところ問題は2003年頃まで持ち越されました。今回の欧州は素より、米国も日本の二の舞にならなければよいと祈るのですが。。。
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2 comments on “Vol.49: 欧州ストレステスト”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
要するに・・
皆様方が・・
日本の後を追ってらっしゃる・・
何であれ・・
まだ一位である事は・・経済オリンピックで・・
誇りであり・・
名誉であります・・
しかし
油断をすると・・
追い抜かれる・・危険があるのです・・・
金融システムは演繹法での小手先の改良ではもう立ち行かなくなっていると思われます、帰納法で時代にあった金融システムの理念を示し、それにそぐわないものは廃止し、新しいものに作り変えてしまうしかないのでは。