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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2025/08/04 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.284: 日銀と内閣府


今回は、先月30・31日に開催された日銀金融政策決定会合と、29日に公表された内閣府月例経済報告を紹介します。IMF世界経済見通しは来週に回します。

日銀と内閣府を混ぜ、日銀の景気判断、内閣府の景気判断、日銀政策委員会メンバーの経済・物価見通し、今後の日銀金融政策の予想の順に書きます。

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日銀は景気判断概ね維持
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今回のように展望レポートがある回(1月、4月、7月、10月)とない回(3月、6月、9月、12月)とでは分析の詳しさに違いがありますが、細かい字句修正はあるものの、景気判断は現状・先行きとも概ね維持されました。リスク要因も同様です。

(現状)
・基調:一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
・個人消費:物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している
・設備投資:緩やかな増加傾向にある
・住宅投資:弱めの動きとなっている
・公共投資:横ばい圏内の動きとなっている
・輸出:一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動の動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている

(先行き)
・各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる

(リスク要因)
・とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある

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内閣府も景気判断概ね維持
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内閣府の景気判断も、「米国の通商政策等による影響が一部にみられる」と認めるなど、いくつか文言修正はありますが、全体としては維持されたと受け止めています。

(現状)
・基調:景気は、米国の通商政策等による影響が一部にみられるものの、緩やかに回復している
・個人消費:消費者マインドの改善に遅れがみられるものの、雇用・所得環境の改善の動きが続く中で、持ち直しの動きがみられる
・設備投資:持ち直しの動きがみられる
・住宅建設:おおむね横ばいとなっている
・公共投資:底堅く推移している
・輸出:おおむね横ばいとなっている

(先行き)
・基調:雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクには留意が必要である。加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、金融資本市場の変動等の影響に引き続き注意する必要がある
・個人消費:雇用・所得環境が改善する下で、持ち直していくことが期待される。ただし、消費者マインドの動向に留意する必要がある
・設備投資:これまでの堅調な企業収益や省力化投資への対応等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:当面、横ばいで推移していくと見込まれる
・公共投資:関連予算の執行により、底堅く推移していくことが見込まれる
・輸出:米国の関税引上げによる直接的な影響、通商問題による世界経済を通じた間接的な影響等に留意する必要がある

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物価見通し引き上げ
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日銀展望レポートの中では、植田総裁を含む9人の政策委員会メンバーによる実質GDP・消費者物価指数の見通しが示されます。中央値(9人のうち上からみても下からみても5番目の数字)は以下の通りです。今年度の物価見通し上方修正が話題になりました。

(実質GDP)
2025年度+0.5%(前回+0.5%)、2026年度+0.7%(前回+0.7%)、2027年度+1.0%(前回+1.0%)

(消費者物価指数=除く生鮮食品)
2025年度+2.7%(前回+2.2%)、2026年度+1.8% (前回+1.7%)、2027年度+2.0%(前回+1.9%)

(消費者物価指数=除く生鮮食品・エネルギー)
2025年度+2.8%(前回+2.3%)、2026年度+1.9%(前回+1.8%)、2027年度+2.0%(前回+2.0%)

リスクバランスについては、「経済の見通しについては、2025年度と 2026年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、概ね上下にバランスしている」とされます。

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次の利上げはいつか?
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米国通商政策の影響はありますが、日本の政策金利は引き続き「緩和的」。次のアクションは利上げです。他方で、今回の総裁会見では植田総裁の慎重な言い振りが目立ち、政策が後手に回っている可能性も否定しました。要は「利上げするが、急がない」スタンスです。

今後のポイントは米国通商政策の動向・影響と、来年の賃上げ(春闘)です。

前者については、日本の関税率は概ね定まりました。ただ、中国が未確定なほか、関税が経済に与える影響に不確実性が残ります。

後者については、今年1月に春闘の帰趨を見越して利上げを決定したことからみて、来年1月に見極めることは十分可能です。それをどこまで前倒しできるか?どうしても急ぎたければ、10月会合での利上げが考えられます。短観で企業の収益見通し等を点検し、支店長会議で地方の声を聴くこともできます。

そうすると、10月、来年1月、その間の12月の三択となります。私自身は、10月は米中交渉含め不確定要因が残っており、利上げを決断できないのではと読んでいます。順当なのは来年1月、ただし12月もあり得る感じでしょうか。あえて確率を示せば、9月0%、10月25%、12月35%、1月40%です。

当たるも八卦当たらぬも八卦・・・

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