2025/11/03 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.296: 日銀利上げ見送り
今回は、先月29・30日に開催された日銀金融政策決定会合と、29日に公表された内閣府月例経済報告を紹介します。日銀は、高市総裁誕生以降の市場の予想通り、政策金利を据え置きました。
日銀と内閣府を混ぜ、日銀の景気判断、内閣府の景気判断、日銀政策委員会メンバーの経済・物価見通し、今後の日銀金融政策の予想の順に書きます。
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日銀は景気判断維持
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今回のように展望レポートがある回(1月、4月、7月、10月)とない回(3月、6月、9月、12月)とでは分析の詳しさに違いがありますが、個別需要項目で小さな修正はあるものの、景気判断は現状・先行きとも概ね維持されました。リスク要因も同様です。
(現状)
・基調:一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
・個人消費:物価上昇の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している
・設備投資:緩やかな増加傾向にある
・住宅投資:減少している
・公共投資:横ばい圏内の動きを続けている
・輸出:一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動の動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている
(先行き)
・各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは伸び悩むと考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる
(リスク要因)
・とくに、各国の通商政策等の影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はなお高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある
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内閣府も景気判断維持
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内閣府の景気判断も維持されました。
(現状)
・基調:景気は、米国の通商政策等による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復している
・個人消費:持ち直しの動きがみられる
・設備投資:緩やかに持ち直している
・住宅建設:このところ弱含んでいる
・公共投資:堅調に推移している
・輸出:おおむね横ばいとなっている
(先行き)
・基調:雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクには留意が必要である。加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、金融資本市場の変動等の影響に引き続き注意する必要がある
・個人消費:雇用・所得環境が改善する下で、持ち直していくことが期待される。ただし、消費者マインドの動向に留意する必要がある
・設備投資:これまでの堅調な企業収益や省力化投資への対応等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:当面、弱含みで推移していくと見込まれる
・公共投資:関連予算の執行により、堅調に推移していくことが見込まれる
・輸出:米国の関税引上げによる直接的な影響、通商問題による世界経済を通じた間接的な影響等に留意する必要がある
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物価見通しもほぼ不変
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日銀展望レポートの中では、植田総裁を含む9人の政策委員会メンバーによる実質GDP・消費者物価指数の見通しが示されます。中央値(9人のうち上からみても下からみても5番目の数字)は以下の通りです。見通しがかなり変化することも多いのですが、今回は前回7月と余り変わっていません。
(実質GDP)
2025年度+0.7%(前回+0.6%)、2026年度+0.7%(前回+0.7%)、2027年度+1.0%(前回+1.0%)
(消費者物価指数=除く生鮮食品)
2025年度+2.7%(前回+2.7%)、2026年度+1.8% (前回+1.8%)、2027年度+2.0%(前回+2.0%)
(消費者物価指数=除く生鮮食品・エネルギー)
2025年度+2.8%(前回+2.8%)、2026年度+2.0%(前回+1.9%)、2027年度+2.0%(前回+2.0%)
リスクバランスについては、「経済の見通しについては、2026年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、概ね上下にバランスしている」とされます。
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次の利上げはいつか?
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さて、私自身、次回利上げ時期の見通しを間違った方向に修正してきてしまい、以下の記事で反省の意を表しました。
・「Vol.293: 小噺・不明を恥じます」(10/13)
元々は、来年の春闘を見極めたうえで利上げするので、時期は来年1月の確率が高いとしていたのですが、9月の金融政策決定会合で9人のうち2人の政策委員会メンバーが利上げを提案したことと、自民党総裁選で小泉さんが勝つと予想したことから、10月40%、12月60%とかなり前倒しました。
しかし、今回の利上げ見送りで、40%は消え去った訳です。
今回の会合後の会見で、植田総裁は「本当に最終の春闘の妥結の賃金上昇率がどれくらいになるか、ということについて、きちんとした姿を知るまで待ちたいということではなくて、取りあえず私が申し上げているのは、初動のモメンタムがどういう感じになるかというところをもう少し情報を集めたいということでございます」と発言しました。市場はこれを来年まで見極め時期がずれ込むと受け止め、為替相場は円安に振れました。
次回利上げ時期に関する私の今の気持ちは12月、1月五分五分ですが、あえて差をつければ12月55%、1月45%です。今年の利上げは1月でした。来年1月に初動のモメンタムが見極められることは間違いありません。その前の12月でどうかという問題になりますが、次の短観などの材料は出てきます。その段階での収益動向や雇用の動向など、判断し得る材料は揃うと思います。
また、高市総理なので利上げできないとの見方には組しません。安倍総理の頃と明らかに事情は異なり、円安による物価高は国民経済に致命的です。安倍総理が生きておられたら、利上げを支持すると思います。
今回はこの辺で。
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