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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2024/04/22 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.230: IMF世界経済見通し


今回は16日夜に公表されたIMF世界経済見通しを紹介します。毎年4回、1月、4月、7月、10月に公表されますが、4月と10月は分厚く、1月と7月は簡略なものが出されます。

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今回も上方修正
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今回の世界経済見通しの表題は「Steady but Slow: Resilience amid Divergence」、日本語訳は「安定かつ緩慢 まちまちな様相の中、強靭性も」。日本語がやや大げさに見えますが、2024年の世界全体の経済成長率は前回+3.1%から+3.2%に上方修正されました。後で説明しますが、インフレ率も低下傾向にあり、一頃心配されたハードランディング・スタグフレーションの心配も和らいでいます。この点がsteadyやresilienceという言葉に表れています。

他方で、先々の成長期待は以前と比べ低くとどまり、また、米国独り勝ちの様相で、欧州、中国はいまいち冴えず、低所得発展途上国も苦しんでいます。この辺が、slowやdivergenceという表現に表れています。

具体的に見ると、世界全体の経済成長率は、2023年+3.2%、2024年+3.2%、2025年+3.2%と、3年続けて+3.2%成長が予想されています。2024年は+0.1%上方修正、2025年は据え置きです。

このうち先進国は2023年+1.6%、2024年+1.7%、2025年+1.8%で、2024年+0.2%上方修正、2025年据え置き。米国は2023年+2.5%、2024年+2.7%、2025年+1.9%で、2024年+0.6%とかなりの上方修正、2025年も+0.2%上方修正。ユーロ圏は2023年+0.4%、2024年+0.8%、2025年+1.5%で、2024年-0.1%、2025年-0.2%の下方修正。日本は2023年+1.9%、2024年+0.9%、2025年+1.0%で、2024年据え置き、2025年+0.2%上方修正です。米国の強さと欧州の弱さが目立ちます。米国については、そうした中で財政支出抑制が行われないことへの懸念が示され、他方で欧州については、労働市場のタイト化が急に崩れる可能性が示されます。米国は利下げを遅らせ、欧州は急ぐことを推奨しているような印象を受けます。

新興国・途上国は2023年+4.3%、2024年+4.2%、2025年+4.2%で、2024年+0.1%上方修正、2025年据え置き。うち中国は2023年+5.2%、2024年+4.6%、2025年+4.1%で、2024年、2025年とも据え置きです。ただ、中国は後述のように下方リスクのひとつに挙げられています。

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インフレ鈍化、リスクはバランス
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世界のインフレ率は2023年+6.8%、2024年+5.9%、2025年+4.5%と鈍化していくことが予想されます。とくに先進国は、2024年+2.6%、2025年+2.0%と、来年には多くの中央銀行の目標値に着地していくことが見込まれます。

リスクについては、「概ね上下にバランスがとれている」とされます。主なリスク要因として、下振れ方向では「地政学的緊張を要因として再び価格が急騰する可能性」「労働市場がひっ迫している地域でのコアインフレ率の高止まりと相まって、金利見通しの上昇と資産価格の下落が起きる可能性」「通貨(為替相場)変動が起きる可能性」「中国で不動産部門に関する包括的な対策が打たれず成長が鈍化する可能性」「多くの国で政府債務が高水準であること」「地経学的分断化が悪化する恐れ」などが、上振れ方向では「財政政策が緩和的になる可能性」「インフレ率が予想以上に速く低下する可能性」「AIと構造改革で生産性の伸びが加速する可能性」が挙げられています。

今回はこの辺で。

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