2021/02/18 05:00 | 南アジア | コメント(3)
インド現代史(1):インドの世界
■ 米印首脳、4カ国枠組みによるインド太平洋の安全保障強化で合意(2月9日付ロイター)
インドは「21世紀の超大国」「最後の超大国」と言われます。その人口は13億8,200万人、世界1位の中国(14億人)に次ぐ圧倒的な規模ですが、2027年には中国を抜いて世界1位になる見通しです。しかも平均年齢が29歳と若く、人口ボーナス期(生産年齢人口が従属人口の2倍以上となる期間)は2060年まで続く見通しです。
その経済は、巨大なポテンシャルをもちながら、長年にわたる閉鎖的・硬直的な体制に阻まれて十分に発揮できず、中国とほぼ同じ時期(91年)に経済開放路線に舵を切ったにもかかわらず、中国の高成長とは対照的に、伸び悩みました。中国とインドの一人当たりGDPは、91年時点ではほぼ同じでしたが、現在は、中国が1万ドルを超える一方、インドは2,000ドル程度と5倍もの差がついています。
一方、2000年代には、「BRICs」とも言われたように、高成長の時代が到来しました。その後、スタグフレーションに陥った時期もありますが、14年に発足したモディ政権は、成長重視路線を打ち出し、規制緩和とインフラ整備を進め、外資の呼び込みに成功しました。世界の企業・投資家はインドに熱い視線を向け、日本企業の進出も進みました(05年以降、進出日系企業数は5倍に増加)。
先月のUNCTADのレポートによれば、20年の世界全体の海外直接投資はコロナ禍によって前年比▲42%と大幅に落ち込む中、インドは+13%と大幅に増加しました。デジタル分野への投資が大部分を占めますが、中長期的なインドの成長への期待を示す結果といえます。
外交レベルでも、インドは「大国」としての存在感を高めています。「インド太平洋」は米国、日本、さらに最近では欧州にとっても重要なコンセプトになり、これら西側諸国との関係強化が進んでいます。日本にとっても、世界最大の民主国家であるインドへの信頼と期待は高く、近年は「インド太平洋」とともに「日米豪印」が日本外交の重要な柱になっています。
このように、世界的にも日本にとっても極めて重要な存在となったインドですが、実際のところ、極めて複雑で分かりにくい国です。知っているようで知らない面が多々あると思います。
近年こそこれだけ関係が深まっていますが、日本にとってインドは、長い間、「遠い国」でした。地理的には同じ「アジア」で(といっても東アジアではないので、本論でも述べるとおり、かなり違うのですが)、文化的には仏教発祥の地であり、戦前からの関わりもあるので、親近感をおぼえる人も多いと思います。しかし、政治経済面でのつながりが深いとはいえませんでした。
私は2000年前後に外務省のアジア局にいたのですが、このときのインドは、経済的にも戦略的にもまったく重視されておらず、98年には核実験もあり、どちらかといえば「面倒な国」というイメージでした。アジア局の中でも、中国課と北東アジア課(朝鮮半島担当)は「一軍」、東南アジア担当課は「二軍」、南アジア担当課は「三軍」といわれたものです。
しかし、その後のインドの重要性の高まりは冒頭述べたとおりです。特にこの数年間、私は毎年のようにインドを訪問していますが、行くたびにその目覚ましい変化に驚きます(なお私が初めてインドに行ったのは97年でした)。出張では、デリー、ムンバイ、チェンナイといった大都市のみならず、地方の各地をまわり、現地の生の情報を集めてきました。そうした経験も踏まえつつ、インドの現代史と今後を見通すポイントをお伝えしたいと思います。
※ここから先はメルマガで解説します。目次は以下のとおりです。
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インド現代史(1):インドの世界
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●「インド」のはじまり
●ヒンドゥー教とは
●カーストの真実
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あとがき
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■ ゴルフ世界3位トーマス、同性愛嫌悪の暴言を謝罪「言語道断」(1月10日付AFP)
少し前の話ですが、ジャスティン・トーマスがパットを外した直後に「faggot」とつぶやき、それがマイクの音に拾われ、謝罪する羽目になりました。こちらで動画と音声を確認できます(0:20)。
「faggot」は「ホモ」「軟弱なやつ」といった意味合いの差別用語です。同性愛者への攻撃が念頭になくとも、「f**k」と語感が似ているためか、「f**k you faggot」とセットフレーズのように使われることがあります。おそらくトーマスもそういう気持ちで口に出たのだろうと思います。
こちらはトランプ弾劾裁判で検察官(民主党議員)が議場で見せたビデオですが、議事堂の襲撃者が「f**king prick, faggot」という場面があります(2:20)。こういう風に使われる言葉ということです。
私のイメージでは割と頻繁に耳にしましたが、問題のある言葉であることは確かです。トーマスのような立場の人が使うことには社会的影響もあり、厳しい目が向けられたのでしょう。皆さんも注意しましょう。
なお「ファゴット」という楽器がありますが、差別用語の「faggot」と綴りも音も同じなので(語源もともに「薪」という意味のラテン語)、英語圏では一般的に「バスーン」と呼ぶそうです。ただ、ファゴットとバスーンの中にも色々な種類があるらしく、その違いを「ファゴットかバスーンか」という言い方で説明することもあるようです。『のだめカンタービレ』から得た知識ですが・・(笑)。
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3 comments on “インド現代史(1):インドの世界”
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いつも楽しく拝読していますが、こういったシリーズがまた戻ってきてくれてうれしいです。
腰を据えてじっくりと読んだり、時間が経っても全く色あせることがない貴重な記事です。これまで勘違いしていたこと、理解を間違えていること、あいまいな知識・・・こうしたものが整理されていくのはうれしいです。
最近インドマーケットも盛り返してきているので気になっていたところに、このテーマ。楽しみにしています!
インドの現代史シリーズ、本当に楽しみです。生のタージマハルが見たくて、学生時代に1度だけ旅行したことがあります。意図せず映画館に行って、ミュージカルのような映画や綺麗な女優さんにビックリしました。当時は楽しく観光しただけですが、今や世界が注目するプレーヤー。どんな歴史観をベースとして、西側や中露と渡り合っているのか、続きを楽しみにしています。
いつもありがとうございます。
インド映画、いいですよね。
私も97年に初めて旅行したとき、街中の映画館に行って、ワクワクして見ました。言葉がわからずとも本当に面白くて、すっかり魅了されました。
それから色々見ています。女優さんも好きです(笑)。シリーズの中で映画の紹介もしたいと思っています。