2020/03/30 00:00 | 今週の動き | コメント(7)
今週の動き(3/29~4/4)
新型コロナウイルスの猛威はとどまることを知らず、世界中で「ロックダウン」の波が起こっています。インドのように経済活動を制限すれば死者が出るといわれる国でさえ、3週間のロックダウンに踏み切りました。英国ではボリス・ジョンソン首相が感染しました。
日本も小池都知事が外出の自粛を要請し、出入国制限を強化しました。「近いうちにロックダウンが始まる」・・などという風説が流れ、スーパーでは買い占めの動きもみられました。週末に安倍首相の記者会見が行われ、改正新型インフルエンザ対策特別措置法(特措法)上の緊急事態宣言が出されるのか・・とも推測されましたが、まずは見送られました。
もっとも、一口に「ロックダウン」と言っても、その具体的な態様は様々です。一律にロックダウンは「正しい」「間違っている」ということには意味がありません。「ロックダウンだから買い占めが必要だ」と短絡的に考えるのもおかしな話です。詳しくは本文で説明します。
重要なのは、これから何が起きるのか(予想)、中立的・客観的な情報(事実と分析)を把握し、その上で、では何をすべきか(行動)、合理的な思考で考察することです。これはコロナ危機以前から本メルマガが行ってきたことです。引き続き、こうした情報と考察を皆さんにお伝えします。頑張りましょう。
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先週の動き
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3/22(日)
・トランプ大統領が北朝鮮、イランを含む国々に新型コロナウイルス対策について協力する意向を示した親書を送ったと発言
・米上院が新型コロナウイルス対策の景気刺激策第3弾の採決を行うための手続上の動議を否決
・ランド・ポール上院議員が新型コロナウイルスの感染を発表
・イランのハメネイ最高指導者が新型コロナウイルス対策への米国の支援申し出を拒否する考えを表明
・アフガン政府とタリバンが捕虜交換に関する協議(テレビ会議)
・日本が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて米国への危険情報をレベル2(不要不急の渡航の自粛)に引き上げ
3/23(月)
・米上院が新型コロナウイルス対策の景気刺激策第3弾の採決を行うための手続上の動議を否決
・米下院の民主党指導部が新型コロナウイルス対策として2.5兆ドルの景気刺激策を下院に提出
・臨時のFOMC(量的緩和の無制限化等を決定)
・ポンペオ国務長官がアフガンを電撃訪問(ガニ大統領とアブドッラー前行政長官と会談)、帰路のドーハでタリバン幹部と会談
・米国務省が20年に予定していたアフガン向け資金支援を10億ドル削減すると発表
・中国外交部が新型コロナウイルスは米軍に由来するとする説は「狂った言論」とした崔天凱駐米大使の発言を発表
・英国のジョンソン首相が新型コロナウイルス対策として自宅待機を要請
・ドイツのメルケル政権が新型コロナウイルス対策として大型経済対策を発表(7年ぶりに国債発行)
・G20財務相・中銀総裁会議(電話会議)
・EU外相理事会(テレビ会議)
・EU財務相の電話会議(財政ルール(財政赤字のGDP比の3%以下の抑制等)の一時停止で合意)
・日本が新型コロナウイルス対策の入国規制に米国を追加
・安倍首相が東京五輪の延期可能性に言及
3/24(火)
・トランプ大統領がイースター(4月12日)までに経済活動を再開させたいと発言
・米韓首脳電話会談
・G7外相会合(テレビ会議)
・ポンペオ国務長官が中国は新型コロナウイルスに関する情報を隠蔽しているとして批判
・エスパー国防長官とミリー統合参謀本部議長が新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する恐れがあるとの見解を表明
・中国湖北省が新型コロナウイルス対策としての同省の封鎖を3月25日、武漢市の封鎖を4月8日に解除すると発表
・EUがアルバニアと北マケドニアのEU加盟に向けた交渉に入ることで合意
・安倍首相とIOCのバッハ会長が電話会談(東京五輪の1年延期で合意)
3/25(水)
・米上院が新型コロナウイルス対策の景気刺激策第3弾を可決
・トランプ大統領が多くの人はWHOが中国に肩入れしていると感じ不満をもっていると発言
・ワシントンDC当局が新型コロナウイルス対策として生活に必須の業種を除く全企業の1か月間の閉鎖を命令
・アフガン政府とタリバンが捕虜交換に関する協議(3月31日から捕虜の解放で合意)(テレビ会議)
・ロシアのプーチン大統領が新型コロナウイルス対策として4月22日に予定していた憲法改正法案の是非を問う全国投票の延期を発表
・日本外務省が世界全体を対象に「危険情報」を「レベル2(渡航自粛)」に引き上げ
・東京都の小池知事が今週末は不要不急の外出を自粛するよう都民に要請
3/26(木)
・G20サミット(テレビ会議)
・米財務省がイランの革命防衛隊等への支援を理由にイランとイラクに拠点を置く企業5社と個人15人を制裁対象に追加
・米司法省がベネズエラのマドゥロ大統領を麻薬取引の容疑で起訴したと発表
・米労働省が3月15日~21日の失業保険申請件数は約330万件と発表
・中国外交部が外国人の入国を一時的に停止すると発表
・EU首脳会議(新型コロナウイルスの経済対策で一致できず)(テレビ会議、〜27日)
・イスラエル国会が政党連合「青と白」のガンツ代表を議長に選出
3/27(金)
・米国で景気刺激策第3弾(CARES法、2.2兆ドル)が成立(下院が可決、トランプ大統領が署名)
・米中首脳電話会談(新型コロナウイルスへの共同対応で一致)
・トランプ大統領が国防生産法に基づきGMに人工呼吸器の製造を命令
・米国で台湾同盟国際保護強化イニシアチブ法が成立
・米国とフィリピンが新型コロナウイルスの感染拡大を受け5月に計画していた合同軍事演習「バリカタン」の中止を発表
・英国のジョンソン首相が新型コロナウイルスの感染を発表
・フランスのフィリップ首相が新型コロナウイルス対策の外出制限を4月15日まで延長すると発表
3/28(土)
・米疾病対策センター(CDC)が新型コロナウイルスの感染拡大が続くNY、ニュージャージー、コネティカットの住人に対し今後14日間にわたり他州への不要不急の移動を控えるよう勧告(当初、トランプ大統領が同地域の強制的な隔離を検討していると表明したが撤回)
●新型コロナウイルスの感染拡大(米国の対応)
新型コロナウイルスの感染は米国で一気に拡大し、感染者数は3月27日に10万人を突破。中国(8万2000人)を大きく上回るに至りました。その後も拡大を続け、29日時点では12万人、死者は2,000人に上っています(致死率は1.6%)。
トランプ大統領は、連日記者会見を行い、「戦時大統領」としてのリーダーシップをアピール。そのコロナ対応はおおむね支持されており(ギャラップの調査で60%が評価)、その支持率も複数の調査で過去最高を記録しました(ギャラップで49%が支持)。
先週、トランプはコロナウイルス対策の国民向けの行動指針(ガイドライン)を発表し、15日間、10人超の集まり、レストランやバーでの飲食、旅行の自粛を要請しました。各州も規制を強化し、多くの企業が事業を停止。これにより、330万件の失業手当の申請という過去に例のない規模の失業が発生しました。
こうした状況をみて、トランプはイースター(4月12日)までに経済活動を再開させたいと発言。また、国防生産法に基づきGMに人工呼吸器の製造を命令しました。
さらに、感染者の半数近くが集中しているNY、ニュージャージー、コネティカット(一部)で14日間の隔離措置を検討していると突然に表明しました。しかし、NY州のクオモ知事の猛反発を受けて、数時間後に撤回。その後、疾病対策センター(CDC)がこれらの地域の住人に対し今後14日間にわたり他州への不要不急の移動を控えるようにとの「勧告」を出しました。
議会では、以下の記事で述べたとおり、上院の共和党指導部(マコーネル院内総務)が提案した景気刺激策第3弾の審議が行われました。共和党と民主党の間で激しい議論がありましたが、最終的にはスピード成立に至りました。記事で予想したとおりの展開でした。
・「新型コロナウイルスの感染拡大(米国の対応)」(3/23)
今回成立した景気刺激策(Coronavirus Aid, Relief & Economic Security Act(CARES Act))は総額2.2兆ドル、GDPの1割に相当する規模です。その内容は以下のとおりです。
・個人向け現金給付 5000億ドル
・大人 1200ドル
年収75000ドル以上は給付額を縮小、99000ドル超は対象外
・子ども 500ドル
・失業手当 週600ドル
・中小企業支援 3500億ドル
・影響を受ける産業支援 5000億ドル
・航空産業等は750億ドル(財務省が管轄、議会がチェック)
・それ以外は4250億ドル(FRBのファンドが融資)
・医療体制整備 1400億ドル
今後の展望についてコメントします(※メルマガに限定)。
●新型コロナウイルスの感染拡大(国際的な連携)
G7外相会合とG20サミットが立て続けにテレビ会議で開催されました。いずれもテレビ会議での開催は初めてです。
G7外相会合では共同声明の発出は見送られましたが、G20サミットでは新型コロナウイルス対策として5兆ドルを投入するとの共同声明が出されました。
また、米国と中国は、以下の記事でお伝えしたように、コロナウイルスの発生源と対応をめぐってお互いを批判しています。その非難の応酬は先週も激化していましたが、トランプ大統領と習近平国家主席が電話会談を行い、会談後、トランプは中国の対応を称賛しました。
・「新型コロナウイルスの感染拡大(米国の対応)」(3/23)
これら国際的な連携に向けた動きについてコメントします(※メルマガに限定)。
●新型コロナウイルスの感染拡大(中国の対応)
新型コロナウイルスの感染者数は、米国や欧州で急増する一方、中国では(少なくとも中国当局の発表を見る限りでは)増加が収まりつつあります。武漢市でも限定的に経済活動が再開され、湖北省と武漢市の封鎖も解除が発表されました(武漢市は4月から)。
そして、中国は、政府やファーウェイのような大企業が国際的な支援を推進するようになっています。習近平国家主席は、イタリアのコンテ首相と会談した際、「一帯一路」とともに「健康のシルクロード」を建設したいとの考えを表明しました。
こうした中国の動きについてコメントします(※メルマガに限定)。
●新型コロナウイルスの感染拡大(日本の対応)
冒頭に述べたとおり、先週末の自粛要請から、東京でも「ロックダウン」が起こるのではないかと言われています。週末の安倍首相の記者会見では、改正新型インフルエンザ対策特別措置法(特措法)上の緊急事態宣言は見送られました。
日本国内の事情は本来このメルマガの守備範囲外ですが、関心の高いテーマのため取り上げます(※メルマガに限定)。
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今週の動き
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3/29(日)
・北朝鮮が日本海に向けて飛翔体を発射
3/31(火)
・トランプ大統領が新型コロナウイルス対策の国民向けの行動指針で示した活動制限の最終日
・英国のヘンリー王子とメーガン妃が王室から離脱
4/4(土)
・英労働党が党首選の結果を発表
●米国の新型コロナウイルス対策のガイドライン
3月16日に発表したコロナウイルス対策の国民向けの行動指針(ガイドライン)の期限が31日に到来します。
この見通しについては、上記「先週の動き」の「新型コロナウイルスの感染拡大(米国の対応)」のメルマガ限定部分で解説しました。
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あとがき
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スロバキア新内閣の宣誓式では閣僚が全員マスク姿で臨んでいました。チャプトヴァ大統領のマスクが衣装の色に合っていて素敵ですね。
それにしても、欧米ではマスクは「病気の人が感染を拡大させないためにするもの」であり、健康な人が予防のために着用する習慣がありませんでした。また、覆面禁止法がある国も多く、その厳格さには差がありますが、オーストリアなどではマスク着用も違法とされています(今でも医師の許可が必要のようです)。
このため、欧米人からすると、日本人や韓国人のマスク着用は「奇妙なアジアの文化」に見えます。私も外国人の友人からは「変」とよく突っ込まれていたのですが、コロナ危機を契機に、そうした文化的ギャップは消えたようです。
マスクは感染予防には役に立たないと言われていますが、自覚症状がなくとも感染していることもあります。感染拡大を防ぐためにやはりマスクは着用した方が良いとのことです。使い捨てでも消毒すれば再利用も可能とのこと。こちらのツイートが大変読みやすく、参考になりますので、ご確認下さい。
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7 comments on “今週の動き(3/29~4/4)”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
冒頭、強く同意でした。ネットやツイッターで様々な情報が流れていきますが、「合理的な思考」がないとただの時間の無駄遣いに。SNSでも読書でも、この思考って大事だなと、再確認しております。
コロナは忌まわしいものですが、思考の訓練として使わせてもらいます(笑)!
また、「コロナ後」の世界秩序、「特措法」についてもとても興味深く、これは絶対に読むべきと思いました。
マガジンに政令という言葉で説明されていましたが、この政令で政府の行動が規制されますが、これはどのようにメカニズムで改定されるのですか。法律なら国会での議決が必要だと思うが、政令の改定はどのような法律の根拠で、誰が行うのですか?
戦前の記事を読むと,勅令というものがあり、これが戦後政令になったと思います。
いろいろわが国の社会に関する記事や本を読むと、法治国家とは言えない要素があるなあと思っています。
法の支配と法治国家とは別なものと思っていますが間違いでしょうか。
政令と法律の違いは何によるのでしょうか?それぞれの根拠は何でしょうか?
「政令」とは「法律」を執行するために制定される法規です。
法律は法の定立機関である立法府(国会)が制定しますが、政令は法の執行機関である行政府(内閣)が制定します。
今回のメルマガで取り上げた政令は厚労省が所管(作成)していますが、これは感染症法の所管官庁が厚労省だからです。
政令の内容は法律が授権した範囲に限定されます。このため、「法の支配」は理論的に貫徹されています。
「法治国家(法治主義)」と「法の支配」は、「法」という形式がある点では共通します。つまり形式的には同じ意味です。
ただ近代法の理論においては、「法の支配」とは、自由主義と民主主義を本質的内容として含むものとされます。この2つの原理を含まない「法」で支配される国家は、「法治国家」であっても「法の支配」があるとは言えません。つまり実質的には異なる意味になることがあります。
たとえば、中国など権威主義体制における「法」にはこの2つの原理を欠くものがあります。この場合、「法治国家」であっても、「法の支配」があるとは言えません。
「法の支配」を担保するのは法の適用機関である司法府(裁判所)です。したがって司法が独立していない国に「法の支配」はありません。
◎ 憲法
第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
(続きがありますが、省略)
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、・・・
◎ 国家行政組織法
第十二条 各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。
つまり、
法律・・・国会が決める
政令・・・内閣が決める(法律を施行するために制定)
省令・・・大臣が決める(法律または政令の委任に基づき制定)
したがって、法律>政令>省令
以下、法律と政令、省令の関係の例です。
〇労働安全衛生法【法律】
第十条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、・・・
〇労働安全衛生法施行令【政令】
第二条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場は、・・・
〇労働安全衛生規則 【省令】
第二条 法第十条第一項の規定による総括安全衛生管理者の選任は、・・・
ありがとうございます。
私の説明、雑な部分があったので、文言を一部修正しました。
法律関係はまったくしりません。一度法律関係の本を読み始めたら、頭が痛くなり、やめました。知人にきいたら、法律用語があるからそれを最初に理解しないととのことでした。
元の疑問は生活保護における最高裁の判決が出されて、即座に外国人の生活保護がなくなるかと思いましたが、どうもそのようではありません。
市役所に判決が出る前に、その疑問を言うとその返事は<自衛隊も同じではないか>ということでした。その人は知り合いでしたから、まあまあとなったわけですが、 外国人の生活保護は厚生省の通達によっておこなっわれているということです。それと管轄が国だから市役所としては、何もできないということでした。それでもというなら行政訴訟となるとのことで、、<何それ>となりました。彼らは法律で武装しています。よく訓練されています。
法律については全くの素人ですからいろいろ疑問に思うことが多々あります。
知人が損害賠償をするとて、一緒に裁判所に行くと相手の住所が必要ということで、しらべると、当人は現在住んでいるところには住民登録はなく、どこかわからず、そこでまあ面倒くさい裁判はやめました、元はひどい奴だから、知人は社会正義のためにといって、やるつもりでした。ただ裁判所の担当者はオフレコで、しない方がいいといってくれました。よくある事案のようです。300万くらいの取り立てでした。
ごく普通の庶民としては法律にかかわるようになったら、だめだというくらいです。
失礼しました。
土砂降りの雨降る令和日本は、アベノミクスの成果が失われて、ゼロサム(零和)になったということでしょうか?