2018/04/20 05:00 | 南アジア | コメント(6)
パキスタン紀行(2)
※今回は、すみませんが、お食事中の方は閲覧にご注意下さい・・(苦笑)。
前回は、パキスタンを貧乏旅行したとき、夜行バスでバルチスタンという砂漠地帯を越えて、イランに入ったことを述べました。
このとき、私はクエッタという都市からバスに乗りました。
クエッタはバルチスタン州の州都で、砂漠の中にぽつんとありますが、それなりの規模の都市です。交通の要衝であり、カイバル峠とならぶアフガニスタンへの入り口として有名なボラン峠がすぐ近くにあるところです。
ちなみにカイバル峠をつかってアフガンに入るときはペシャワールという都市からバスに乗るのが一般的です。タリバンの支配下で激しい内戦状態にあった頃ですが、当時ここからアフガン入りするバックパッカーはたくさんいました。そのまま消息不明になった人もいたでしょう。
私は誘われてもアフガンには行きませんでしたが、ペシャワールとその近辺(後述する国境地帯)には滞在しました。古代クシャーナ朝インドの首都(当時の名前はプルシャプラ)、ガンダーラ文化、シルクロードの中継点にして国際都市、ドゥラーニー朝の冬の都として歴史的に有名な都市です。
実は「ガンダーラ」とはパキスタンのこの地域を指します。ゴダイゴが歌っていたように「インド」にはなかったのです。
今のペシャワールは、観光的に見るべきものは少ないのですが、人々やバザールの雰囲気で、アフガン国境の雰囲気は伝わってきます。この国境地帯は連邦直轄部族地域(FATA、トライバルエリア)と言って、パキスタン法の適用がない自治地域です。
ここにいる部族は絶え間ない戦闘の中で生きてきた人々であり、独自の文化を持ち、大量の武器で武装しています。アルカイダなど国際的なテロリストも潜伏している地域です。
ペシャワールも国境を越えて武器が大量に出入するところでもあり、道ばたの店で様々な種類の銃がわりとフツーに売られています。試し撃ちをさせてくれる外国人向けの商売もあります。バズーカやスティンガーを見た(試した?)人もいたそうです。
さて、クエッタですが、ここにはクエッタ大学という大きな大学があります。私はここに来るときに乗った鉄道の中でこの大学に在籍するパキスタン人の学生たちと仲良くなり、彼らの学生寮に泊まらせてもらうことになりました。
寮の相部屋に泊まり、学食で食事をともにし、なかなか楽しい経験でした。 ただ、後から思うと、衛生面ではちょっと・・いや、かなり難がありました。これがのちのち悲劇の原因になります。
余談ですが、以前にも述べましたが、パキスタンの人々は一般的に態度が和やかで、礼儀正しく、話しやすいです。親切に声をかけてきて、一日中道を案内してくれたり、家に招待してご馳走してくれたり、泊まらせてくれたり、そういう人が結構います。ぼったくるとか、だまそうという人はほとんどおらず、少なくとも私は会いませんでした。
お隣のインドでは、旅行者をカモにしようとしてありとあらゆる手を尽くしてくるあさましい連中が雲霞の如くよってきます。日本から見るとインドとパキスタンは米国とカナダのように一緒くたにされがちですが、インドからパキスタンに入るとその違いに驚かされます。
一つには旅行者が少なくてすれていないこともあるのでしょう。インドも観光ズレしていない南部などの人々はだいぶ違います。また国民性や宗教もあるのだろうと思います。
私の経験では、イスラムの人々は概して親切で、旅行者をだまそうという人が少ないように思います。治安も比較的良いところが多いです。例えばアフリカの大都市は総じて治安が悪いですが、イスラム教徒の多いチャドやスーダンなどの都市は比較的良いと言われます。
イスラムというと警戒する人も多いと思いますが、外国人に優しく、好奇心も旺盛で、けっこう付き合いやすい人が多いです。一般的に客人を大事にする慣習があることも指摘されます。ちなみに私が特に親切で親日的と感じたのはイラン人で、親切を通り越しておせっかい、疲れるほどでした。
また脱線しました。話を戻します。
クエッタ大学を出て、夜行バスに乗り、えんえん砂漠を走ってイランとの国境に向かいます。砂漠と言っても鳥取や敦煌で見られるようなロマンチックな砂漠ではありません。ただ単に草が転々とはえている、乾いただけの荒野、いわば「土漠」です。実は世界の砂漠の多くはこんな感じだったりします。
夜中1時くらいになって、腹に異常警報が出ました。しまった、あのクエッタ大学のメシがまずかったのか・・いったん気にし始めると、どんどん状態は悪化していきます。
たぶん一人で車に乗っていたり、いつでもトイレに行けるといった精神状態であれば何でもないのに、狭い車内で屈強なパキスタン人に挟まれ、深夜に車を止めてもらうことのストレスによって、いやが上にも緊張が高まるのでしょう。予想を超えたペースでエスカレート。この負のスパイラルは止まりません。
多分夜中2時くらいだったと思いますが、限界がきました。隣でいびきをかいている太ったパキスタン人のおっさんを押しのけて、ドライバーのところに駆け寄り、「う●こしたい。止めて!」と直球で頼みました。運ちゃんは、かなりうざい顔をしながらも、「しょうがないなあ」という風情でスピードを緩めました。
ここで、私は一刻も早くとりかかりたかったのと、ちゃんと止めて欲しいという意思表示をしたかったため、バスがまだ走っているうちに飛び降りてしまいました。結構スピードは出ていたのでしょう。地面に着地した瞬間、なんと体が一回転しました。慣性の法則のため、走っている状態を急に止めることはできなかったのですね。
幸い柔らかい土の上だったので、腕をすりむく程度で済みましたが、予想外の出来事でした。う●こをしようとして車から飛び降りて、骨でも折ったら、しかも回転している最中に脱糞でもしたら、一生消えないスティグマが残るだろうと、当時学生だった私は思いました。
しかし、とにもかくにも、バスを止めて、外に出ることに成功しました。ところがそこは木の一本もない土漠のど真ん中、身を隠せるような場所すらありません。ただそこかしこに草むらがあります。
しょうがなく、小さい草むらのそばで、力をふりしぼってからだを丸め、なんとかお尻だけを隠しました。バスに乗って待っているパキスタン人全員に凝視されます。必死だったのでよくおぼえていませんが、かなり笑われていた気がします。
しかし、夜中に勝手な都合でバスを止めさせているわけですから、3分もすれば笑いはブーイングに変わります。「ジャパニーズ、ハリーアップ!おいてくぞ」などと言われ、運転手はクラクションまで鳴らし始める始末。
追い詰められた私は「ワン・ミニット!」と返すのが精一杯。必死だったのでよくおぼえていませんが、この「ワン・ミニット」、予想外にウケをとった記憶があります。だからといって気持ちが楽になったことはまったくありませんが。
まあ、何とか無事終わり、バスに乗って再出発しました。ところがそこは腹下しの悪夢、1時間後、私はまたもや猛烈な便意におそわれました。やむなく再びバスを止めることになってしまったのです。
このときはさすがにバスから飛び降りて一回転、ということはありませんでした。しかし草むらに隠れて云々以降は、ビデオの再生のようにまったく同じです。
このときにはパキスタン人も、私自身も、もはや怒りや笑いを通り越していて、幸か不幸か最初の時のテンションの高さはありませんでした。ただ淡々と事務的に物事は進みました。
まあ、そんなこんなでバルチスタンを抜け、翌朝国境に到着し、無事イラン側のザヘダンという町に入りました。ここからイランの旅が始まりました。ここはここで色々なエピソードがあるのですが、それはまた別の機会に。
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6 comments on “パキスタン紀行(2)”
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手掛かり記憶は・・
一生纏わりついて離れない・・
胸下の女性からワン・ミニッツと叫ばれる方がマシかな・??
今年・腸風邪にお見舞いされ・・発熱・嘔吐・下痢の三苦悩・・
ぐっちーも最近・腸風邪で苦行を強いられたとか・・
ネパール・・変わらぬ処もあった・・良いですね・・行きたくなった。
ゴダイゴ・・ナント懐かしい言葉・・・
( ^ω^)・(笑
こんな面白いところ、見たことなかったですね!
モーゼルミニタリー、ルガー、手りゅう弾、バズーカ砲(中国製)から冷蔵庫、TV,麻薬、なんでもお店で普通に売ってます。
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ペシャワールの近郊には、有名な仏教遺跡(タフティバイ)がありますというよりは、アレキサンダーが通った?カイバー峠があります。
人種の交差点ですね。
ウサマビン・ラディンが殺された場所は、ここからイスラマバードに向かって車で一時間位の所です。
何度読んでも、笑いが止まらない・・
傑作です(笑)
また、メルマガは美しく。
世界情勢から自然科学、文学に芸術、どうしたらどの分野でも興味深い文章を紡ぎだせるのでしょうか・・・?
いつも雲の上の人だと思っていたのですが、
同じ人種だと初めて思いました。
JDさんの余り誇張しない文体はこういう経験が支えているのかしらん?
親しみを感じてしまいました。
FATAを訪問したことがあるのですね。それはすごい経験でしたね。
バルチスタンは当時は(そこまでは)問題ありませんでしたが、今は非常に危険な地域になってしまいました。
雲の上ですか・・・それは、私の方こそ恐縮です。
親しみを感じていただけるとのこと、うれしいので、メルマガではまたこうした特別レポートを配信したいと思います(笑)。