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2016/06/17 02:25  | 欧州 |  コメント(8)

英国のEU離脱問題(BREXIT)


英国のEU離脱(BREXIT)の是非を問う国民投票が、来週6月23日にいよいよ行われます。

まさか離脱はないだろうと思われていましたが、小政党UKIPの党首ナイジェル・ファラージのみならず、前ロンドン市長のボリス・ジョンソンマイケル・ゴブ司法相といった大物までが離脱を主張するようになり、真実味を帯びてきました。

そして、世論調査の中には、離脱派が残留派を上回るという結果も出てきました。

常識で考えればあり得ないはず・・だが、ゼロではない・・何やらトランプを彷彿させる状況になっています。

気になるのは離脱した場合の影響ですが、これは、離脱した後に英国がどのようなアプローチをとるかによって異なるので、一概には言えません。

英国は、①離脱後にもEEA(欧州経済地域)に加入してEU規制を受け入れるという現状とそれほど変わらない結果になるアプローチ(ノルウェー型)から、②EU各国と二国間協定を結ぶアプローチ(スイス型)、③EUと包括的経済協定を結ぶアプローチ(カナダ型)、④物品貿易だけ自由化するアプローチ(トルコ型)まで、様々なオプションを検討する余地があります。

簡単に言えば、どこまでEU規制を受入れて、EU市場へのアクセスを維持するか、という問題です。

しかし、どのアプローチをとるにしても、EU離脱により英国が失うものは極めて大きく、英国の有識者の中で離脱を支持する人は少数派です。

まず、自由貿易をある程度維持できるにしても、欧州金融単一免許(パスポート)を失うことになります。したがって金融センターの地位という英国の大きな強みを失う可能性があります。

また、離脱派の最大の根拠は移民の阻止ですが、労働者の自由な移動を制限することは、英国経済にとっても大きな打撃になります。

さらに、当然のことながら、EUの政策形成への発言権も失うのも大きなデメリットです。

しかも、正式に離脱が決まり、新しい制度に移行するには数年かかります。その間不安定な状況が続くことになりますし、移行のためにかかる行政コストも甚大です。

そして、こうした不安が投資家の心理を後退させ、ポンド安、株安につながります。

世界的なリスクオフ、日本にとっては円高、株安にも波及します。英国に進出している日系企業にも予測困難な不利益が及びます。英国との経済関係がそれほど強くないとはいえ、日本にとっても決して対岸の火事とは言えないわけです。

さらに、アイルランド、バスク、カタルーニャの独立運動に波及する可能性もあります。直後の26日に予定されるスペイン再選挙、来年予定されるオランダ、フランス(大統領)、ドイツの選挙にも影響が及ぶでしょう。

こういうとばっちりも、トランプ現象と似てなくもありません。

これに対し、離脱によって得るものは、移民の阻止のほか、EUへの拠出金と規制から免れることのみ。

経済合理性の見地からすれば、離脱より残留に分があるのは自明です。

それでも離脱派に勢いがあるのは、何と言っても移民への抵抗、そしてEUへの不信です。この根っこにあるのは保守的なナショナリズムですが、この傾向は特に高年齢層に強いと言われます。

若年層は比較的EUへの反感が少なく、このため残留派が多い傾向にあります。

しかし、投票率は、若年僧より高齢層が高い傾向にあります。

したがって、若年層が投票に行かなければ、もしかしたらひょっとするかもしれない・・という懸念に至ります。この点については、グランベリーロックフェスティバルという野外で行う大型ロックフェスが投票日と重なっていることも気になります。

私の直感では、なんだかんだ言って離脱はないだろう、最後は英国人の理性に期待して良いのではないか・・ということで、あまり取り上げる気はなかったのですが、英字メディアを見てると、お祭りのような状態になっており、看過できなくなってしまいました。

現実的可能性があるという意味で、トランプ当選よりも実は深刻な問題かもしれません。英国人の良識を信じたいところです。

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8 comments on “英国のEU離脱問題(BREXIT)
  1. ペルドン より:
    ユーロかポンドか

    EUに加盟しながら・・
    銭はポンド・・ユーロは使わない・・

    矛盾は・・耐久性に綻んだ・・

    清算の時期・・
    矛盾なき世界・・求めるのは・・感性としては・・真面では・?・・・(笑

  2. パードゥン より:
    イギリスの歴史と気質を考えると

     イギリスの古い1%が、トランプ顧客層の貧困不満白人層を煽って
    実権を奪還しようとしている感じに見えます。 
    若者だけでなく、中間層も選挙へ出かけるのおっくうだろから不安(笑)
    駆け込みで投票資格の申請が急増したのは、暢気だった中間層が不安になって
    きたからでは?  たしか申し込み期限を延長したはず

     なんで木曜日に投票をするのですか?
    日本時間では金曜遅くに結果がでて、月曜は世界で最初の金融混乱を
    味あう事になります。   他人迷惑もいいところ

     ”陽出る国”だからしかたがない名誉かもしれませんが、本当に迷惑

     グッチーは公式謝罪で金曜の晩、飲みすぎたかな?  静かですね
    日本は、ニクソンショックの時は一人暢気に為替市場をあけて
    大損しましたからね  
    月曜は臨時休業して、アメリカに初日の名誉を譲ったほうがいいですよ(笑)

     
     

  3. nanashi より:
    世界は順調に壊れてきていますなあ…。

    どうもお久しぶりです。こちらは例年よりも雨の少ない九州で暑い中ヒイコラ言いながら勤労しておりますが、いかがお過ごしでしょうか?まあ今回の英国の国民投票に関してなんですが、これはアメリカのトランプ爺さん大暴れの件とも重なるんですが、今までのグローバリズムに対する反感が根っこにあって色々と蠢いている影響が出ているのが根本的な原因じゃないかなと思われます。グローバリズムの恩恵を受けなかった層が今起きていることに対する反感で動いているので一筋縄ではいかないでしょうね。個人的には離脱は難しいと思っていますが、あくまでも判断するのは英国国民ですので黙って見ているしかないでしょうね。

  4. 空の財布 より:
    社会矛盾の噴出?

    イギリス、アメリカ、日本の地震のようなもので、突然変異ではなく、溜まりに溜まったマグマの噴出なんでしょうかね?
    選挙、国民投票という直前だけ見てても、まさしくお祭り(楽しくないが)にしか映りませんね。
    英語で情報を入手できることの大切さを感じます。

  5. edge より:
    論点は経済ではない?

    マイケル・サンデルがNewStatesmanのインタービューで指摘した内容が腑に落ちました。URLがはれないので、引用しますと、
    ”A big part of the debate has been about economics – jobs and trade and prosperity – but my hunch is that voters will decide less on economics than on culture and ­questions of identity and belonging.
    (この問題で行われた議論は、大概、経済関連、つまり雇用とか貿易、繁栄に関する内容ですが、私の考えでは、有権者は経済より文化やアイデンティティー、所属感に関する問題で票を入れるでしょう。)”
    これを日本に例えるなら、中国、韓国とEUのような関係を構築したら、国内のいろんな案件にイチャモンつけられ、自分たちでは決められないようになった、ですよね。
    このように想像すると、離脱派バッシングも下手に出来ないような。。。

  6. 下北のねこ より:
    コンサートと政治

    懐かしい!グラストンベリー・フェスティバルまだ続いてたんですね。
    私が覚えているのはブームタウン・ラッツとかエルビス・コステロ、スタイル・カウンシルなんかが出てた時代です。そんな昔に感じないんですけど、ものすごく昔ですね。
    だけど、今年の顔ぶれ見るとELOやシンディー・ローパー、EW&Fも入ってる!?、大英帝国なんか時間が止まってるんじゃなかろうか。
    しかし、こんな形で国民投票に影響をあたえるなんて思っても見ませんでしたね。
    そう言えば、もっと懐かしいユーロヴィジョン・ソング・コンテストでも今年、ウクライナの歌手が歌ったプロテスト・ソングが優勝したので話題になってました。
    クラシックも含めヨーロッパでは政治の場面に音楽が登場することままあるのが面白いですね。

  7. 空の財布 より:
    乖離。

    キャメロン首相は歴史に名を残すことに。
    難民問題の深刻化は誤算だったか。
    しかし国民投票のテーマではないような。
    床屋さんは投票出来るが、キャメロン首相は床屋にはなれない。
    プロがアマに判断任せてどーするんだ???
    アメリカのトランプ氏躍進といい、当該国以外のエリート層には想像出来なかった問題なのですね…。

  8. 空の財布 より:
    (追記)

    日本は恵まれている。
    海外で何が起こっても他人事。
    その象徴が湾岸戦争参加問題をカネで解決したこと。
    英国のEU離脱も関わりのある経済問題でしか直接的には見れない。
    移民の問題もなく、目前にあるのは高齢化・貧困化のみで、暴動とは程遠い。
    高齢化に伴い、暴力的に精神に変調を来す(加速化させる)ご老人もいるが、暴動起こす気力を失うご老人のほうが多いでしょう。
    貧困化は体力を失わせ、これまた暴動から遠ざかるか…(苦笑)。
    今こそどうするのか、政治は国民を巻き込み、真剣に考えさせなくてはならない。
    改憲しか興味の無い首相には…出来るのか…???

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